胃潰瘍とは
胃潰瘍は、胃酸や胃消化液によって胃壁(また十二指腸)が障害を受け潰瘍をつくる病態です。
症状
空腹時の胃部痛、口臭、酸っぱいげっぷ、胸やけ、悪心、嘔吐(おうと)などがあります。
また、高度な潰瘍では吐血や下血が見られます。下血は黒色便であることが多いです。膵臓(すいぞう)にまで炎症が及ぶと、背中が痛むこともあります。
原因
胃酸は主に強酸性である塩酸であり、肉類を溶かします。胃壁は溶かされないように、粘膜上皮細胞が分泌するアルカリ性粘液で守られています。この胃酸と粘膜のバランスが悪くなると胃炎→胃潰瘍となります。
粘膜のバランスが崩れる原因はたくさんあり、よく知られているようにストレスや、特に消炎鎮痛剤などの薬物、食生活の乱れや喫煙などがあります。男性は女性に比べて3倍くらい胃潰瘍にかかりやすいようです。
また、最近さらなる原因の1つが明らかになりました。
バリー・マーシャルとロビン・ウォレンのノーベル賞受賞にも至った研究で、ピロリ菌という胃に感染した細菌が胃潰瘍の原因の多くを担っているということが1990年頃から徐々に分かってきました。
実際、胃潰瘍の7割以上にピロリ菌感染が先行しており、また、ピロリ菌感染者は胃潰瘍に3〜4倍かかりやすいです。
診断と検査
確定診断には、胃カメラで実際に潰瘍を確認するのが確実です。健康診断等のX線検査で見つかる方も多いようです。
当クリニックの考え方・治療方法
胃症状の有無、生活歴、薬剤の服用歴などをよくお聞きすることで、外来診療での診断は可能です。
当クリニックでは内視鏡検査は行っていないため、連携医に紹介依頼し実施しています。
ピロリ菌は胃がんにも多いです。胃潰瘍の症状が治療によって落ち着いていても、定期的な胃内視鏡検査は受けたほうがいいと考えることから、連携施設による胃内視鏡検査も積極的にお勧めしています。
治療ですが、出血による内視鏡処置が必要なものでなければ、基本的には薬剤内服治療です。
まず、胃酸を抑える薬ですが、これにはH2ブロッカー、プロトンポンプ阻害剤(PPI)という薬があり、効果はPPIの方がより高く、最近はこの薬が主役になったおかげで胃潰瘍の外科的手術は明らかに減りました。
また他にも、胃粘膜を胃酸から保護するものとして粘膜保護薬があります。
当クリニックでも、これらの多くの種類(H2ブロッカー、PPI、粘膜保護薬)を常備しており、症状に合わせて適宜使用しています。
ただし、出血が止まらない場合や潰瘍が深くて穿孔(せんこう)に至った場合は緊急の手術が必要です。その際には、緊急で手術施設のある連携病院への紹介を行っています。
また、当クリニックではピロリ菌の除菌にも力を入れており、血中の抗体検査と呼気試験の2通りを行っています。ピロリ菌の除菌は、現在では保険適用となっています。
ピロリ菌の感染の有無は、血液検査で簡単に判定することが可能です。また、除菌によってピロリ菌がいなくなったことを証明するためには、呼気検査と言われる特殊な検査が必要です。
ピロリ菌は胃潰瘍の原因であるとともに、胃がんの原因との考え方が一般的です。再発を繰り返す潰瘍に対しては、ピロリ菌の検査と除菌をお勧めしています。
具体的には、PPIと抗生剤2種の3剤内服併用療法であるランサップの処方を行っています。
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