がん治療に代替医療を選択すると、5倍以上も死亡リスクが高まるぞ❗

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がんと診断された場合、標準医療に従って治療した場合と代替医療(民間療法)を行った場合5年以内に死亡する確率が代替医療を選択した人は最大で5倍以上高まることを明らかにした研究が発表されました❗

がんに対する標準治療と代替医療の効果の差が明らかになった❗

がんの標準医療は手術・抗がん剤・放射線治療がエビデンスもあり、ガイドラインもある当たり前の治療方法なのですが、なぜか標準治療を拒否して代替医療と呼ばれるサプリメント・食事療法・ホメオパシー・カイロプラクティック・オステオパシー・プロバイオティクス・瞑想・自然派療法等を選択しちゃう人がいます。

治療効果のメカニズムも明らかではなく、明確なエビデンスがほとんど存在しない代替治療を選択する人は大きく3つの理由があるようです。

  1. 標準治療の副作用で苦しみたくない
  2. 知っている人が代替医療でがんを治した
  3. 自然派を拗らせて現代科学を頭から否定

こんな理由があるのではないでしょうか。なかには「標準治療ではもう手が付けられない」と医師に言われた、なんて人もいるようですがそんな時は緩和医療という標準的な治療がありますから、代替医療を選択する必要性はありません。

乳がんだと5.6倍、結腸がんだと4.6倍も死亡リスクが増える❗

がんに対して「標準治療」を行っている医師にとっては当たり前(でも、実際にこんなに差があることに驚いた医師も多数)、標準治療否定派のトンデモ医師は真っ青になる研究は「Use of Alternative Medicine for Cancer and Its Impact on Survival」とのタイトルでJournal of the National Cancer Instituteのオンライン版で見ることができます。

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これは乳がんの比較データです(前述論文より)5年生存率で5.6倍の差が生じています。

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これは結腸大腸がんの比較データです(前述論文より)

5年生存率で4.6倍の差があります

この研究では乳がん・肺がん・結腸癌(大腸がん)・前立腺がんの4つの代表的ながんとこれらすべてのがんの治療成績を標準治療を選択した場合と代替医療を選択した場合の5年生存率を比較検討しています。

がん全てを平均しても5年生存率は2.5倍の大差がついています

生存率の差が小さかった前立腺がん【前立腺がんは非常に緩慢に病気が進行していきます)を除外すると、この差がさらに大きくなるのは明らかです。

この研究結果を掲載した「Journal of the National Cancer Institute」は医学専門誌の信頼度やクオリティを評価する指標であるインパクトスコアが12から13であり、かなりハイレベルの専門誌と考えて間違いありません。このような結果が出てもなぜ代替医療を選択する人がいるのか不思議でしかたないのです。がん治療に代替医療を選択する人の考え方や理由を少々私の経験を含めて考えてみます。

がん治療に代替医療を選択する人の考え方

当たり前のことですが、現代の医療は万能ではありません。しかし、エビデンスの蓄積によってがん治療の成績は右肩上がりです。そんな現代医療を頭ごなしに否定する人がいます(宗教上の理由は今回は除外します)。

標準治療の副作用で苦しみたくない

例えば抗がん剤治療(化学療法とも呼ばれる)の副作用が誇大に伝わっている風潮があります。現代医療は抗がん剤治療の副作用を抑えるための多くの研究が行われていて、20年前と比べれば抗がん剤治療の効果は高くなり、副作用は小さくなっています。もちろん抗がん剤の副作用は個人差がありますし、苦しい抗がん剤治療を行ったのに死亡する方もいらっしゃいます。乳がんの場合、手術で乳房を切除することに対して抵抗感があるのは当然ですが、今ではなるべく切除範囲を小さくして、さらに乳房の再建術も保険が適用されています。

知っている人が代替医療でがんを治した

代替医療でがんが治った人がいるから、との理由で標準医療を拒否して代替医療を選択する人もいます。代替医療でがんが治ったという人は本当にがんであると確定診断されているのでしょうか?一般書籍や民間医療中心の健康雑誌ではがんの腫瘍マーカーが髙かっただけで、精査をしないで「自分は〇〇がんでした」、それをこんな食事をすることによって「腫瘍マーカーがこんなに低下しました」的な科学的手法からかけ離れた「お客様個人の体験談です」レベルの記事を多数見かけます。

自然派を拗らせて現代科学を頭から否定

このタイプの方は厄介です。多くはワクチン反対派であり、食品添加物を異常に恐れ、化学物質を拒否して(自然のものでも化学物質なんだけどねえ)、薬の副作用を誇大に解釈し、なんでもかんでも自然のものがベストであるとの考え方をする傾向があります。またこのような考え方を広めるセミナーがあってそこで仕入れた標準医学からはかけ離れた治療法を信奉し、これまた面倒なことにそれを第三者にも勧めてしまうのです。冷静に考えれば「トンデモ」であり「ニセ」であり「インチキ」だとわかるはずなんですけど、標準医療を拒ませて疑似科学的な方法を押し付ける集団に属してしまうと、そうなっちゃうんでしょうか?

標準治療で嫌な思いをした人も多いかもしれませんが、代替医療って選択枝は無いと思うぞ

がんを罹患して標準治療を選択したけど、経過が思わしくない人もいます。抗がん剤治療の副作用で非常に嫌な思いをしたのに治療効果が出ていない人もいます。もちろん手術を受けても、後遺症に悩まされた上に、がんの治療効果もイマイチという方もいます。しかし、今回の研究結果は代替医療を選択した場合の生存率は明らかに標準医療に劣っていることが明らかになりました。

5年生存率を数字で伝えられても患者さん一人一人にとってはあくまで確率であり、0か100かということになります。でも、明らかに有利な確率が標準治療であり、劣っているのが代替医療であることが、今回の研究で判明しています。それでも代替医療を選択する人を説得する努力をしなくてはいけないのか?なんて嘆いている医師もいます。

今回の結果を影響力が大きい新聞やテレビで大々的に取り上げてもらいたいです。バラエティ風健康関連番組や奥様向け情報番組でも構いません❗

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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