効果を表示できる食品、保健機能食品には特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品の3つがあります。それ以外の健康に良さそうなイメージで売られているものは「いわゆる健康食品」に分類されて効果・効能を表示することは禁じられています。
BSやCS,あるいは新聞の折込広告で良く見られるモノのなかで「にんにく卵黄」というものがあり、にんにくを食べたことがない人はいないだろうし、卵黄を食べたことがない人もアレルギー体質じゃないかぎり、少ないと思います。しかし、その両者をギュッと濃縮してカプセルに詰め込んだ「にんにく卵黄」で肝機能障害や肺機能障害が発生しています❗
いわゆる健康食品って大きなメーカーから家族経営の小さな工場までありますので、明確な発生頻度は不明ですが、医学誌に症例報告として掲載された肝機能障害と肺機能障害について検討してみます。
「にんにく卵黄」で薬剤性肺障害に薬剤性肝障害⋯あらあら
まず肝機能障害が発生したものは「健康食品『にんにく卵黄』によると思われる薬物性肝障害の1例」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/kanzo/53/11/53_748/_pdf)、これはどなたでも見ることができます。
肺機能障害が生じたのは「『にんにく卵黄』による薬剤性肺障害と考えられた1 例」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsre/38/2/38_118/_pdf)、これも誰でも読むことができます。
両者ともに日本語なのでお時間があればお読み下さい。ここで一つ注意を⋯「にんにく卵黄」で検索すると多数の商品が結果として表示されます。今回の2例ともにある特定の会社のものであることは、論文中では明らかになっていません。しかし、論文の番号の意味も知らないで、どっかから論文の一部をコピペしたアフィリエイト?のサイトが目立ちますねえ。
なぜ「にんにく卵黄」が肝障害、肺障害の原因と判明したか?
肝機能障害を起こした方は60歳代の女性です。主訴は黄疸・全身倦怠感・食欲不振等です。既往歴としては卵巣のう腫・子宮脱・鼡径ヘルニアの手術をしています。高脂血症があるためにロスバスタチン(クレストール)を服用中。健康食品としてはローヤルゼリーや「香醋」を以前から摂取していました。そして発症前月から問題となる「にんにく卵黄」を摂取しだしました。
様々な肝機能障害を引き起こす原因を調べて行き着いたのがクレストールか、にんにく卵黄でした。最終的には「薬剤リンパ球刺激試験」という検査方法で「にんにく卵黄」のみが陽性と判定されたために「にんにく卵黄によると思われる薬物性肝障害の1例」として症例報告されたのです。この方は50日間入院した後、現在は外来で経過観察となっています。
肺障害の方は69歳の男性。主訴は乾性咳嗽・労作時の息切れです。既往歴は1年前より高脂血症でロスバスタチン(あらっ、またクレストール)が処方されています。4 年前に大腸がんの手術を受けています。喫煙歴は若い時の2年間のみ。お酒は毎日2合飲んでいたようです。大腸がんを患ったことがキッカケなのか、友人より「にんにく卵黄」を勧められて、発症の4年前から摂取しています。
肺炎を疑いつつ精査を進めていました。一般細菌・抗酸菌・悪性細胞は検出しませんでした。最終的にはこの方もリンパ球刺激試験を行ない「にんにく卵黄」のみが陽性と判定されました。
つまり肝障害も肺障害も原因は「にんにく卵黄」であると特定されたことになります。にんにく卵黄の成分はこのようなものでした。
にんにく卵黄が肝障害や肺障害の原因と特定した薬剤リンパ球刺激試験とは
薬剤リンパ球刺激試験(Drug-induced Lymphocyte Stimulation Test 略してDLST)は薬剤に対するアレルギーがあるのかを調べる検査です。薬疹の原因である薬を調べる時に使われますが、今回の2例は健康食品、それもにんにく卵黄という、多くの方がたべたことがあるにんにくとアレルギーがない限り食べたことが有るはずの卵黄が肝障害・肺障害の原因とされています。
基本的にはこの検査はアレルギー、それも遅延型と呼ばれているものを調べていることになっているのですが⋯肺機能障害を起こした方は4年前からにんにく卵黄を摂取してますから不思議といえば不思議ではあります⋯多分、主成分以外のものが原因だったと思われます。
健康食品だから副作用がない、との安全神話に惑わされないようにしましょうね。今、医師会では健康食品による健康被害状況を把握する活動が行われています。体調が悪く医療機関を受診する時は健康食品・サプリメントを服用している場合は担当医にお伝え下さい。