ED改善薬として世界中のオッサンを歓喜させたPDE5阻害薬、医療関係者はシルデナフィルなんて呼びますが、この夢の薬を服用すると皮膚がんになりやすい、なんてことを言いだした研究者がいます。
本記事の内容
ED治療のPDE5阻害薬が皮膚がんの原因という説
「Sildenafil use and increased risk of incident melanoma in US men: a prospective cohort study」(JAMA Internal Medicine 2015; 313: 2449-2455)によればPDE5阻害薬を服用していると「メラノーマ」(皮膚がんの一種)になるリスクが2倍❗ってことが書かれています。
日本人の場合、メラノーマに罹患する人は年間10万人あたり1~2人くらい。リスクが二倍になったとしても、大きな数字ではないのでオッサン御用達週刊誌などでは騒がれなかったようですね(論文がでたのは2014年)。
処方する側の医師もPDE5阻害薬の副作用として「メラノーマになる可能性が増えます」と説明してはいないのではないかなあ。
ED治療薬を服用するとメラノーマになるリスクが1.2倍になる⁉
ED治療薬でメラノーマのリスクが二倍❗なんて論文を発表してしまったLi WQ先生、世界中のED治療薬ユーザーを恐怖のどん底に陥れました(メラノーマは白人に多く発症します)が、そんなにリスクは高まんないよ❗って医学論文が早速翌年2015年に発表されたんです。
「Use of Phosphodiesterase Type 5 Inhibitors for Erectile Dysfunction and Risk of Malignant Melanoma」(JAMA 2015; 313: 2449-2455)はスウェーデン2万人を対象にPDE5阻害薬とメラノーマの関連性を調べましたがPDE5阻害薬を飲むとメラノーマになるリスクが1.2倍になる❗と最初の世界中のオッサンを驚かした罹患率からはぐっとトーンダウンした結果を導いています。
さらにこの論文を書いた中心人物のLoeb 先生は「PDE阻害薬ってメラノーマの発症リスクとあんまり関連無いんじゃない」なんてこともおっしゃっているようです(多分、愛用者なんでしょうかね)。
PDE阻害薬でメラノーマになりやすい説のここが変だよ❗
上の表、なんかヘンなのお気づきでしょうか?
罹患のリスクが高まっている人、なぜかPDE5阻害薬を一回しか処方されていないのです。一回の処方で1000錠とか出すはずないのですから、処方回数が多い人ほど多くのPDE5阻害薬を服用していたと考えて差し支えないはずです。ってことはPDE5阻害薬とメラノーマの発症はあまり関連がない可能性がでてきます。
どうやらPDE5阻害薬はメラノーマの発症リスクと無関係らしい
こんな感じでPDE5阻害薬を巡って熱い論争が行われていましたが、どうやら決定打的な論文が出てきました。
「Phosphodiesterase type 5 inhibitors and risk of melanoma: A meta-analysis」(J Am Acad Dermatol. 2017 Sep;77 (3) :480-488)はメタアナリシスという複数の研究結果を分析する手法がとられていて、医学の研究ではかなり正確かつクオリティの高い方法です。
この研究は既存の5つの論文を解析しています。その結果、PDE5阻害薬を服用すると未使用の場合より若干メラノーマの発症が増えていたけど、あきらかな有意差はなかった。つまりPDE5阻害薬はメラノーマの原因じゃないよ❗との結論になっています。
なんだか、わかったようなわからないような結果なのですが、メラノーマを関連していると考えられている因子として経済的環境、学歴、社会的環境、生活習慣などなど多数あります。
今のところED治療薬を処方する際に日本では「メラノーマのリスクが上がりますよ」って説明は不要なんじゃないかな?