キラキラネームの人、なんで深夜に救急を受診するの??

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人様の名前をとやかく言うつもりは一切ございません。

しかし、さぞや親御さんは四苦八苦して命名されたんだなあ、と感じることがあります。名前をどんな感じで表しても読み方に関しての決まりがありません。

一時期「キラキラネーム」なる名前が話題になったことがありました。

名前と救急受診の深~い関係?

そのキラキラネームの子供は時間外に救急受診する傾向があるなんて医師間、特に救急当直を担当する若い医師の間で都市伝説的にささやかれていました。実はこのキラキラネームの子供が救急で時間外の深夜に受診する傾向を明らかにした論文が存在するのです❗

キラキラネームとER受診時間の関係、という医学論文

医学論文といっても様々なものがあり、この「キラキラネームとER受診時間の関係」とううものは「小児科臨床」(68 (11) , 2113-2117, 2015-11)に掲載された症例報告の一つとお考え下さい。エビデンスのレベルからいうと高いものではありませんが、症例報告って面白いものもかなり混じりこんでいて、医学の知識が無くてもわかる論文があります。

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スイマセン、この論文デジタルベースにはなっておらずPDFで登録されています。

2015年に日赤の研修医が中心となって書いたものですから⋯予想以上にハードな医療現場にヘキエキして「なんで普通の診療時間に受診しなかったんだよ」って感じの怒りをコメながら、寝不足の頭で打ち込んだ症例報告と思われます(ちがったらゴメンナサイ)。2013年12月1日から7日にかけて日本赤十字社和歌山医療センター救急救命センターを受診した15歳以下の101人を対象にした研究です。

まあ、当然「どんな基準でキラキラネームと普通の名前って区別したんだ、定義を述べよ」ってオッサンがでてくると思われます。松浦祐史医師はこんな方法を使っているのです

27人のERスタッフに対してアンケート調査を実施し半数以上が読めず、半数以上がキラキラネームと思った名前

(前掲論文より引用)これがキラキラネームの定義です。

その結果

キラキラネームの子供は深夜帯に受診することが有意に高かった

ことがわかったのです。
詳しい数字としては深夜帯に受診した子供は16人であり、そのうちの6人がキラキラネーム(37.5パーセント)、著者が通常の救急救命センターの診察時(朝9時から夜9時❗)と判断した時に来院した子供は全部で88人、そのうちキラキラネームの子供は11人(12.5パーセント)と論文には書かれておりました。

キラキラネームの子供はなぜ深夜に救急外来を受診するか?

今回の研究を行なった医師はキラキラネームをつける親の社会に対する関わり方を示す指標として、程度の軽い病気で深夜、それも救急外来受診を選択しています。本当は通常の診察時間に受診が可能なはずなのに、面倒臭い、面倒なことは後回しにする、救急だと待ち時間が少ない(これは全くの都市伝説)、仕事が忙しくて夜じゃないと子供を病院に連れて行く時間がない、などの自分勝手な理由での深夜の救急外来する人がいると言われていました。さらにキラキラネームをつける親はどちらかというと教養レベルが低く、マナーを守らない、自己満足、非常識とも考えらえたことがありました。

キラキラネームをつける親、そんな人ってわざわざ通常の診療時間に診察を受ける努力・工夫をしないで、深夜なら空いているし、って感じでキラキラネーム児の深夜の救急外来受診の比率を調べようと思ったようです。

でもこれってありそうな話ではあるのですが⋯ちょっと飛躍しすぎた感もあります。私自身も日常の診療で「この名前なんて読むんだ?」「なんでこんな当て字の名前をつけたんだろう?」と思うことがあります。キラキラネームの判断方法はなるほどと思わせるユニークな手法ですし、論文中にはあるのですが一般的な名前の子供と病態に差はなかったので、キラキラネームの子供ほど軽い疾患で気軽に深夜に救急外来を受診している訳ではありませんでした。この論文を多くの人が素晴らしい、と思われるものにするためには15歳までの子供全て、まあこの場合であれば和歌山県だけでもいいのですが、キラキラネーム率を調査しないと、本当にキラキラネームの子供が深夜に受診する率が高いとは言い切れませんものね。

森鴎外の子供はキラキラネームなんだろうか?

明治の文豪であり軍医でもあり、漢籍から西欧文学まで豊富な知識を持った人格も優れていた森鴎外。実は彼の子供たちの名前は於菟・茉莉・杏奴・不律・類(読み方はご自分でお調べくださいませ)。さらに長男於菟の子供は真章・富・礼於・樊須・常治です。

私が医学を学んだ頃は医学書の著者名の中に森於菟さんの名前が載っていて「森鴎外って西欧コンプレックスが強く、案外軽いノリで子供に外国の名前を当て字でつけたんだね」って会話を友人とした記憶があります。森鴎外の例は統計学的には特異なものかもしれませんが、どんな親だって悩みに悩んで工夫して命名していることは忘れてはいけませんね。まあ一方で「名は体を表す」なんてことも言われますので、色々な考え方がある、多様性、ダイバーシティの時代なのさ、と思いながら救急外来の若い先生は診療に励んでくださいませ。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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