医療批判をこじらせてトンデモ系になりかねなかった「週刊現代」、先週号と今週号のインチキがん免疫療法批判記事は多く医療関係者から「良記事」との評価を受けています。
と思ったらウェブ版の「現代ビジネス」が暴走を始めてしまいました❗
本記事の内容
週刊現代がまともになったと思ったら⋯
ここで「最先端医療」を語っている高城剛さんが医師じゃない、医療関係者じゃないとの理由でこの記事の信頼度が低い、なんてことを言うつもりは全くありません。ただ間違った医学知識それも高濃度ビタミンC点滴療法をあたかもがん治療に効果のある画期的な治療の一つとして絶賛していることが正しくないことをお伝えしたいのです。
この高濃度ビタミンC点滴療法は改心した?週刊現代では効果は否定的に書かれています。
やれば出来るじゃん、週刊現代❗「受けてはいけない、がん免疫療法第二弾」❗
まあ、同じ出版社であっても様々な意見を取り上げることはいけない行為ではありません。しかし、今まで多くの研究によって効果が否定されいる高濃度ビタミンC点滴療法をこれだけ大きく取り上げるとは⋯これは大問題❗
はい、高濃度ビタミンC点滴療法は効果がありました⋯動物実験でね
高濃度ビタミンC点滴療法信者さんがよく言うセリフとして「医学研究専門誌でがんの縮小効果が認められています❗」ってのがあります。たぶん、2008年に発表されたこの論文のことを言っていると思われますが⋯「Pharmacologic doses of ascorbate act as a prooxidant and decrease growth of aggressive tumor xenografts in mice」(Proc Natl Acad Sci US A 2008 Aug 12; 105(32))、これはマウスに対する効果です。
さらにこの対象となった「がん細胞」は自然にマウスに発生したものではなく、マウスに移植されたものであり、この実験の効果が即人体に効果ある、とは言えませんし、臨床で使うことを可能とする段階を経ていません。動物実験で効果があったからといって人の治療に使用することは倫理上許されるものではないのです。これはどなたでも納得できると考えます。
高濃度ビタミンC点滴は副作用がない治療法?
前掲記事中高濃度ビタミンC点滴は、米国の国立衛生研究所の研究結果では、効果があるうえに正常細胞にダメージを与えないことが示されている治療法だ」とあり効果はあるが副作用は無い、と読み取れる文章があります。これもヘンです。
高濃度ビタミンC点滴療法での副作用が報告されています
例えば「Ascorbic acid supplements and kidney stone incidence among men: a prospective study」(JAMA Intern Med. 2013 Mar 11;173 (5) :386-8)では腎結石のリスクとの関連が示唆されています。まあ、がん治療なんで腎結石ごときとの意見もあるでしょうけど、それは高濃度ビタミンC点滴にがん治療に効果がある時だけに言えることなんではないでしょうか?
がんが消えた、がんが完治した⋯これって標準医療も受けてるじゃん
日本医大武蔵小杉病院の勝俣先生が言っているインチキがん治療の謳い文句のひとつ「がんが消えた」があります。ヘンテコなクリニックや高濃度ビタミンC治療の信者さんが「がんが消えたって医学論文ありますよ」と提示しそうなのがこれ「High-dose vitamin C therapy: Renewed hope or false promise?」(CMAJ. 2006 Mar 28; 174 (7) : 956–957)。この論文が書かれた当時、がん患者さんの多くが補完的な方法として漢方・ビタミンなどを摂取していることがわかりました。その調査の中で腎がんが寛解したと考えられる症例の人が高濃度ビタミンC点滴療法を受けていたのです。でも、この患者さん補完的にビタミンC点滴を受けただけであり、標準医療はしっかり受け入れています。また、腎がんは時々、ほんとうに時々であり期待しては行けませんが、自然治癒例が報告されています。つまり、この症例でさえ高濃度ビタミンC点滴療法に効果があったのかは判定できないのです。
膀胱腫瘍の症例も書かれていますが、この症例も標準医療の手術をしっかりと受けています
どちらにしても症例報告レベルに対する検証を行った研究であり、論文のタイトル自体に「希望?間違い?」書かれていますもんね。
ビタミンCは将来的には可能性はある⋯なにに使えるか不明でも
いくらがんの治療に高濃度ビタミンC点滴療法が効果があった、と主張しても科学的な検証に耐えうるものは見受けられません。臨床研究の基本中の基本である対照群を用意したもの、二重盲検法を使用したもの、これらの医学論文ってどこかにあるのでしょうか?がん治療に高濃度ビタミンC点滴療法がないことを示した医学論文はまだまだ多数あります。ノーベル化学賞受賞者が何故かお門違いの医療系に興味を持たれたのかは不思議ですが、ライナス・ポーリング博士が提唱した高濃度ビタミンC点滴療法は現在まで影響力を持っているのはさすが、ノーベル賞受賞者ってところでしょうか?
ビタミンCを点滴によって体内に入れ込むことは、人体に対する良い影響・悪い影響ともにまだまだ実験段階です。このような臨床的なエビデンスのない治療を積極的に進める自由診療クリニック、やはり胡散臭いことには間違いありません。高城剛氏は海外事情に詳しく、最先端を行っているイメージがありますが、今回の記事はたぶん多くの医療関係者から批判されると思いますよ。
2020年1月23日追記
こんなブログも書きました。