現代医療を批判するために、ヘンテコリンな記事で危うくトンデモ医学情報雑誌と認定されそうな勢いであった「週刊現代」。
今週発売(2017年7月31日販売)の週刊現代(8月12日号)はよくぞやった❗と医療関係者のSNSで賞賛を浴びています。
本記事の内容
医療批判記事で悪評の週刊現代がナイスな記事を⋯医療関係者は驚きつつ、激しく支持❗
その医療特集の記事は題して医師たちが告発 がん「免疫療法」はインチキだで、世間にはびこる医学的に明確なエビデンスのない、自由診療で行われている「がん免疫療法」に対して多額の治療費を患者さんが支払っている現状を訴えています。私が週刊現代様(いきなり様呼び)を批判してきたブログは、ネタ切れ感がただよう「週刊現代」の医療批判記事⋯ついにこんな低レベルになってしまった(笑)、週刊現代「がんでも受けてはいけない手術」は間違いだらけ⁉などなど多数あります。「お前、週刊現代に日和ったか❗」と言われたくないので、どれだけの勢いで週刊現代の医療批判を批判してきたかを念の為にお伝えしておきます。
まともな「がんの免疫治療」は3つだけです
標準治療を行なっている医師が「がんに対する免疫療法」と呼んでいて、国の承認があり保険適応の免疫治療法は以下のもの三つだけです。
- 薬価の高さで話題となったニボルマブ(オプジーボ)、これは正式には免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれ、患者さんが受け止める「免疫力を高めてがんを攻撃して治療」とは全く作用機序が違っています。イピリムマブ(ヤーボイ)もオプジーボと同じ免疫チェックポイント阻害剤です。オプジーボの適応は悪性黒色腫および非小細胞肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫。ヤーボイの適応は現時点では悪性黒色腫だけです。
- インターフェロン、インターロイキンなどは数十年前から使用されてきた免疫を高める薬で、適応は腎がん、悪性黒色腫と幅が狭くなっています。これらはサイトカイン療法と呼ばれています。
- 膀胱がんに対するBCG療法、ピシバニールも免疫賦活剤で、免疫を強める働きによって効果が発揮されますが、ピシバニールはがん治療のガイドラインには推奨レベルとしては掲載されていません。
オプジーボが脚光を浴びたため「がんの免疫療法って本当にあるじゃん」と考えた方も多くいるはずです。しかし、自由診療クリニックで行われている「がん免疫療法」は上記の3つの人間の免疫システムになにがしかの影響を与えて、がん細胞をやっつける標準治療ではありません。それを裏付けるのは保険が効かない自由診療であるということでご理解いただけると思います。
免疫・遺伝子・温熱療法の組み合わせ⁉なんじゃこりゃ❗
前掲の週刊現代の記事中にがんの三大治療法(手術・化学療法・放射線治療)より「免疫・遺伝子・温熱療法の組み合わせが効く」と独自の主張によって本を出している医師のクリニックのことが書かれています。ここの医師は訪れた患者さんのがんの種類を聞かないで、自説の治療をすすめたとのこと。おまけにがんが小さくなる水まで売りつけられる羽目に。
このインチキクリニック(週刊現代曰く)は医師でも読むような週刊誌に毎週のように記事形式の広告を出しているところだと予想されます。
限りなくニセ医学と思われる「がんの免疫療法」は患者さん自身の血液を取り出して、免疫細胞を活性化させ、再度その活性化された血液を患者さんの体内に戻すという方法です。ちなみに費用は一回25万円で10回ほど行うようです(だからインチキ免疫療法に数百万、とか言われる所以ですね)。この方法は多分
自分の血液の免疫細胞を増やしてがんを治療❗自己由来幹細胞でがんが完治❗
なんて感じの広告あるいは書籍で見受けられる、全くエビデンスのないがん治療法(やっている医師のみ提唱)と思われます。
これと類似のがん免疫治療を行なっていたクリニックが18施設あり、実はこの細胞に加工を行なっていた施設が無許可であり、健康被害・副作用の可能性があることが昨日報じられています。
ニセ医学のがん免疫療法は、本来の免疫に働きかけるがん治療とは全く異なるものです❗
前掲の週刊現代の中で国立がん研究センターの若尾文彦氏(私の同級生、がん対策情報センター長)は「自由診療で提供している免疫療法は『細胞治療』です」と述べています。細胞治療によるがん治療は無許可製造が報じられた加工施設で行われているものと同様で
樹状細胞ワクチン、がんペプチドワクチンなどと呼ばれ、人のがん治療に対するエビデンスは確立されていません❗ので注意が必要です⋯ネット広告や一般書籍で目に入ってくることが多いでしょうけど。
某自由診療がん治療クリニックは大物医師が勢揃い
標準医療とはかけ離れた独自のがん免疫治療を行なっているクリニックの中で、超大物が週刊現代では実名で報じられています。ここのクリニックはなぜか日本におけるがん治療の拠点でもある超有名病院勤務歴のある医師が多数所属しています。確かに行なっている樹状細胞ワクチンは研究レベルではがん治療に効果が期待できますが、その樹状ワクチンが確実にがん細胞に届く技術が確立されていませんので、臨床レベルのエビデンスがあることを明確にできた論文はありません。
週刊現代は寄附講座によって「有名大学の医者を『買収』する」と派手な小見出し付きで詳細が書かれています。がんの研究には膨大な費用がかかりますので、外部から研究費を援助してもらえることは、大変喜ばしいことではあります。しかし、その寄付の出元が「がんの患者さんを紹介して」と申し出ると、断れない状況もありえます。これじゃ、巨大市場である「がん治療」を操る医療産業が医療機関・医師と癒着している、医師同士の陰謀だあ❗と患者さんサイドから言われたとしても仕方がないです。
今まで週刊現代さんを多くのブログで批判してきましたが、今回の素晴らしい取り組み、これこそシリーズ化していただきたいと思います。今回の記事を書かれた方は片田直久氏は週刊誌中心のフリーのジャーナリストさん(@KATADANaohisa )ですが、これぞジャーナリストの仕事って感じですね。さらに「卵巣がん体験者友の会スマイリー」を主催している片木美穂さん(@MihoK0913 )の発言も掲載されています。
追記:翌週にこんなの書きました