Oリングテストで「がん」を見つけてCEAT療法で治療⁉なんだこれ??

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手元にある医師が書いた一般書籍があります。私がトンデモ医療・ニセ医学を批判していることを知ったある方から頂いた本です。その方は現在命に関わる病気と闘病中であり、ご自分で様々な治療法を探していたときに出会った一冊とのこと。このがん治療に関する一般書籍に対する私の意見を、とのことで贈って頂いたものです。

その時に使用したTwitterで「CEAT療法」との言葉(もちろん本を贈ってくれた方は既知)に関しての質問、さらには「Oリングテスト」ってなに?との質問がありました。これらは、一見科学的手法による医学的治療及び診断法と受け止められがちですが、標準医療を行う医療関係者であれば、トンデモ系ニセ医療と判断するはずです。今回は、一般の方がこのヘンテコな診断法と治療法を真に受けてしまわないよう解説します。

Oリングテスト⋯まあ、どう見ても科学的な診断法とは思えません

Oリングテストという一部に熱狂的な信者さんがいる病気の診断方法があります。ネット上の情報では大村恵昭さんという日本人医師(在米国らしい)が開発した診断方法となっていますが、大村さんが日本の医師免許をお持ちなのか、米国の医師免許をお持ちなのかは不明です。

Oリングテスト⋯まあ、どう見ても科学的な診断法とは思えません

このOリングテストはトンデモウォッチャー方面ではかなり有名な物件であり、これを用いて日常の診療に使っている医師が多数存在するのが謎とされています。この診断方法は患者さんが人差し指と親指をくっ付けることで「O」の形を作り、検査する医師や代替療法師がくっついた親指と人差し指を引っ張ることによって、病気の有る無しを診断する方法です(???)。

いくつかの亜流があるようですが、私が知っている限りの診断の仕方は例えばアレルギー患者さんの場合、Oリングを作っていない方の手でアレルギーがあると思われる物質を握ってもらい、診断する側が患者さんのOリングを引っ張って、簡単にOリングが開くと「はい、あなたはこれのアレルギーですね」との結果を下すものです。患者さんに頂いた本の著作者が実際にクリニックで行なっている風景はこんな感じ。

画像

http://advance-clinic.com/menu/より この画像の診断風景?を見ると3人の方が写っています。メガネをかけた方が診断する医師、実際にOリングを作っている人と背中が見えている人もいます。

画像だけで判断をしてはいけませんが、Oリングを作っている人が患者さんで背中が見えている人がモデルであり、モデルの方の様々な部位を棒で指し示して病変部位を見つけているのでしょうか?あるいはOリングを作っている人は標準医療で呼ぶところの診断機器であり、背中が見えている方が実際の患者さんで棒は探索針、超音波診断であればプローベの役目でも果たしているんでしょうかね?

真っ当な考え方をすればこりゃ憑依した巫女さんに見えなくもありません

オーリングテスト(O-Ring Test) の説明として前述サイトでは

人体に起こっている多様な身体の異常は、体表面にその情報を放出しています。これを識別するため、あらかじめ用意した多様な病気のサンプルを近づけ共鳴するかを診ます。体内に同じ物が存在すれば、共鳴してくるため、これを脳の伝達によって指という繊細な筋肉の力で識別するのです。この方法は、病院で発見される癌の数千兆分の一の癌の芽も発見できると言われていますし、さらに体内のウィルスや有害貴金属の有無なども体外から容易に発見出来るのです。

と語られていますが⋯病気のサンプル⁉数千兆分の1の癌の芽⁉体内のウイルスの有無⁉ちなみに一般的には人体の細胞数は60兆個と言われていますので、数千兆個の中の一つであるがんの芽はどの細胞にいるんでしょうかね?

Oリングテストに関しては、さらなる情報を追加して近々ブログにする予定です⋯というのもいくつかの信頼度不明の医学雑誌にしっかりと「O ring test」関連の論文が掲載されていますので、「医学論文で証明されたOリングテスト」なんていう反撃を食らう可能性があります。さらに臨床でOリングテストを導入している医師を含む医療関係者が多数見受けられますので。

おまたせしました。やっと予定通りO-リングテストの第二弾が出来上がりました。

怪しすぎるO-リングテスト、究極のトンデモ系ニセ医学臭がぷんぷん。

怪しすぎるO-リングテスト、究極のトンデモ系ニセ医学臭がぷんぷん。

ちょっと色々あって3年近くもお待たせしてしまいました m (_ _ ) m

謎のがん治療法「CEAT療法」ってなんだ?

確かにマイクロ波(簡単に言えば電子レンジ)をがん治療に使う試みがなされたことはあります。

がん細胞は熱に弱い → 熱を加えれば死滅するだろう → マイクロ波でがんを消滅

って図式です。Oリングテストで発見された「がん」をマイクロ波で消し去ることによって「がん活性を消滅させる」ことが、CEAT療法の特徴です。患者さんに頂いた本「がん治療に苦痛と絶望はいらない 余命2ヶ月を完治に導くがん活性消滅療法」(前田華郎著 講談社)には多数の症例と称する「お客様の個人的感想」が記載されています。目立つのは標準医療を行なっていた患者さん、あるいは抗がん剤や放射線治療を受けたが期待した効果が出なかったために「余命何ヶ月」と医師に告げられた方の体験談です。

普通、がんと闘っている方に対して、あるいはがんが発見された方に「余命何ヶ月です」と告げる医師は稀であり、「このステージだと5年生存率は何年」と伝えるのが一般的です。医師も様々ですから余命を告げる場合もあるのかも知れませんが、少なくとも私が知る限りの周囲の医師でそんなことを宣告したとの話は寡聞にして存じません。

CEAT療法の治療実績の症例の羅列は「体験者談」レベル

前述の著作P175に前立腺がんをCEAT療法で治療した症例が掲載されています(ちなみにこの医師の方のクリニックでは前立腺がんの治療実績は423例とのこと、がん研有明病院における前立腺がんの手術数は2016年で162例です)。手術中にリンパ節転移が認められたそうですが、この症例は明らかに前立腺は切除しています。さらにホルモン治療と抗がん剤治療・放射線治療も併用されています。Oリングテストで骨盤周辺と脊椎のがん反応が発見されたようですが、通常前立腺がんの手術前には「骨シンチ」という診断方法で骨への転移を確認してステージ分類をして、骨への転移があればステージDであれば手術をすることはまずありません。この前立腺がんの患者さんはCEAT療法によるマイクロ波を月1回のペースで継続しているとのこと。

PSAが正常値であることから、がんが消滅していると判断されています⋯これ別に最初から骨転移もしていないし、ホルモン療法が効果を発揮していると標準医療では考えるんですけどねえ⋯。

CEAT療法(CEAT CANCER ENEGY ANNIHILATION THERAPY)、診断方法も怪しげですが、治療方法の理論も不明であり、症例報告も医学論文からは程遠いものと判断します。症例と称して「個人の感想レベル」のトンデモ医療、独自のネーミングの治療法、特にがんの治療法は疑ってかかるのが吉です。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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