誤嚥性肺炎、どんな状態の病気なの?予防できるの?治るの?

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ここ数年間の日本人死因はがん・心疾患・肺炎が上位を占めています(誤嚥性肺炎で検索して上位に表示される健康情報サイトの中に未だに3位を脳血管疾患としているところがあった、いつ監修したんだろうw)。

がんの治療で入院していても、実際は肺炎で亡くなる方もいらっしゃいます。

日本人の死因の第三位である肺炎

ここ数年来、市中肺炎が流行したってワケではなく、高齢者の多くが老化や病気によって

嚥下障害になり、そのために「誤嚥性肺炎」が増加し、肺炎を死因の第三位に押し上げた主要因ではないか

と考えられます。

先日の週刊新潮にも「がんより怖い『誤嚥性肺炎』を防ぐ完全ガイド」なんてタイトルの特集が組まれたくらいですから、特に高齢者にとっては興味のある病気でしょうから、自分なりに頭の中を整理するつもりで「誤嚥性肺炎」について原因や治療法や予防法を書き留めていきます。

まずは肺炎のガイドラインから誤嚥性肺炎の治療を見てみます

多くの病気について学会主導でガイドラインが作られています。なんでもかんでもガイドラインに従った治療を行っていくと、どんな医師が治療してもその効果に差が無くなる(患者さんにとっては良いこと、医師にとっては微妙)なんて考え方もあります。実際はガイドラインは、医師の裁量権による選択肢がなくなるようなものではなく、何段階かに分けて治療方法を推奨しています。

日本化学療法学会の肺炎ガイドラインで誤嚥性肺炎の項目を見ると治療は非常に簡単そうにかかれています。・嫌気性菌を含めた口腔内常在菌が原因となるため,

・β―ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬の選択で十分である(BII).
・院内発症の場合,Pseudomonas aeruginosa を含めたグラム陰性桿菌までカバーしておいた方が良い.
・重症人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:VAP)の場合,広域抗菌薬の選択や併用を躊躇すべきでない(AI).
・ESBL 産生グラム陰性桿菌が増加しており,抗菌薬の選択に注意する.
・口腔ケアや頭部挙上などの胃食道逆流の予防など不顕性誤嚥予防が重要である(BII).
・栄養状態の改善や不必要に睡眠薬・鎮静薬を使いすぎないことも予防になる(BII).

JAID/JSC 感染症治療ガイドラインより

治療に使用する抗菌剤はβ―ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬を使いつつ、院内感染や人工呼吸器を使用している場合は抗菌剤を併用することも検討しましょう、という極めて簡単な表現になっています。しかし、あっさり書かれている誤嚥性肺炎のガイドラインですが、ここのところは重要です。

誤嚥性肺炎を予防するための口腔ケアと姿勢

そういえば、週刊新潮の記事も後半は食事中の姿勢や就寝時の枕の高さ、唾液のリスクが書かれていました。肺炎の原因菌を特定できれば、有効な抗菌剤を選択すれば治せる誤嚥性肺炎であっても、高齢者の場合は嚥下障害を起こしている可能性が高いので、繰り返し誤嚥性肺炎を起こすし、治療中にも再度誤嚥性肺炎になるリスクが高いのですね。

誤嚥性肺炎の予防手段としての肺炎球菌ワクチン

ここ数年肺炎球菌ワクチンの接種を呼びかけるCMが多くなりました。肺炎が日本人の死因の第三位になったことを考えれば、行政主導でこのような啓発運動が行われて当然です。誤嚥性肺炎の場合も約26%が肺炎球菌が原因となっているのです。

画像

http://otona-haienkyukin.jp/ より

まあ、このサイト自体が肺炎球菌ワクチンを販売しているファイザー製薬が管理しているものですけど、数字に大きな間違いは無いと考えます⋯これで某ヘンテコ反ワクチン一派の医師に再度御用医師認定されるかもしれませんけど(笑)。

このグラフで肺炎球菌に罹った人のうち何%が事前に肺炎球菌ワクチンを接種していたか、何%が深刻な事態に陥ったかは不明ですが、誤嚥性肺炎の4分の1が肺炎球菌が原因菌なので、ワクチンを接種することを私は推奨します。

誤嚥性肺炎を起こさないためにはどうすれば良いか?

以前、優秀な看護師さんがこんなことを言っていました。「入院患者さんの褥瘡と誤嚥性肺炎は看護師の恥」、責任感の強い看護師さんはこのように誤嚥性肺炎を捉えていたのです、素直に頭が下がります。その発言を参考にすると、やはり寝たきりや脳血管障害で入院している患者さんの睡眠時の姿勢や口腔ケアや食べ物の選択も誤嚥性肺炎を防ぐ上で重要なんですね。

週刊新潮の特集の後半は「カラオケで喉を鍛えよう」とか「喉や口の筋トレ」等が書かれています。これらの効果判定は私の範疇を越えていると判断して考察はいたしません(どの部分の記事を読めば、がんより怖い嚥下性肺炎なのか理解できるのかは不明)。誤嚥性肺炎を防ぐ食事の形状等が書かれていないようですが、別のページの五木寛之さんのエッセイ「生き抜くヒント」にちょっとした記載がありました。

五木さんの知人の専門医によれば「ドロドロになった食べ物の方が誤嚥を引き起こしやすい」とのこと。ご両親等の介護をされている方も多いでしょうから、ネットで情報を得る前に担当医や看護師さんにどのような形状の食べ物が誤嚥性肺炎を起こしにくいのか、食事をする時の姿勢はどうすればいいのか等を相談することをお勧めいたします。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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