受動喫煙の次はアルコール、飲酒問題がクローズアップされるはずだよ。

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喫煙が健康上よくないのは常識。受動喫煙でさえ医療費として年間3000億円以上かかっている研究が先日発表されて、どれだけ喫煙が自分だけでなく周囲に迷惑を及ぼしているかが多くの人に知れ渡りました。

東京大学医薬政策学の五十嵐中特任准教授らによる衝撃的な研究は「受動喫煙で病気、かかる医療費は3千億円超 厚労省推計」として朝日新聞等に大々的に掲載されました。

一方で適度な飲酒は百薬の長、なんて言われ方をされていますが、それって本当でしょうか?

喫煙には厳しいけど、飲酒には甘めの日本

実は適度の飲酒であっても、それなりのマイナス効果はあり、飲酒問題って国を挙げて取り組む問題であることってあまり知られていないような気がします。

居酒屋でタバコは吸えないけど、お酒はガンガン飲める状況だと、かなりの経済的な損失もあるのです。受動喫煙問題に対して、多くの人が納得したように数字を拾いながら飲酒問題を考えていこうと思います。

適度な飲酒でもマイナス効果があるんだよ❗

適度な飲酒として日本酒で換算して一日何合、休肝日は2日ね、ってイメージがあります。でも、適度な飲酒だと思っていてもそれなりに体にはマイナス面があることが研究によって明らかになっています。

先日、医学専門誌BMJにこんなタイトルの論文が掲載されました。「Moderate alcohol consumption as risk factor for adverse brain outcomes and cognitive decline: longitudinal cohort study」( BMJ 2017;357:j2353)、中等度の飲酒でも認知低下が起きてしまう❗、という内容の研究です。

  • 8グラムのアルコールを1ユニットとして計算
  • 週に14から21ユニットのアルコールを長年継続して飲酒すると海馬の萎縮が2ー3倍になる
  • 海馬が萎縮することにより、言語の流暢さが低下していた

このような内容です。8グラムの純アルコールと言っても、ピンときませんが英国の医学系論文ではこの単位が使用されることが多いです。

日本で一般的なビール350mlの場合、アルコール濃度が5パーセントとすると1.75ユニットですから、二日の休肝日をおいて飲む日は二本飲むだけで17.5ユニット、三本飲めば26.5ユニットとなってしまい、将来的に海馬の萎縮リスクが高まることになるんですね。

海馬の機能は記憶に深く関連していますから「アレ」とか「ソレ」言葉が増えたら、ひょっとして海馬の萎縮が進んでいる可能性も否定はできません。

適度な飲酒といえども油断がならないことをこの研究は示唆しています。

飲酒の経済的な損失は思った以上に大きいぞ❗

飲酒運転によって事故を起こすなどは論外としても、飲酒による経済的な損失の大きさに世界は危機感を持っています。

例えば、米国では深酒や二日酔いによる経済的な損失は年2490億ドルであるとCDCは警告しています。二年前のCNNはこんな形で取り上げています。

画像

https://www.cnn.co.jp/business/35072071.html

この記事によると二日酔いによって生産性が770億ドル減少して、飲酒による経済損失は290億ドル、そのほか交通事故や犯罪などを含むと2490億ドルになり、一杯につき2ドルの損失になるとのことです。

では、日本ではどのようなデータがあるのでしょうか?「健康日本21」という政策プロジェクトがありますが、そのデータによると

アルコールを原因とする病気に対する医療費は年間1兆957億円❗

であり、アルコール依存などによる収入の減少などを含めると

日本だけで毎年6兆6000億円の経済的損失が出ている❗

という驚きの結果になっています。このデータは1987年のものであり、今現在日本における飲酒による経済損失はこの当時のものがベースになっていて、その後個人的な研究も出てはいますが結果的には大差はありません(例えば平成24年に出た「アルコール関連問題の社会的損失の推計(http://www.kurihama-med.jp/branch/pdf/alyobo_pr_235.pdf)」など)。

飲酒問題の今後はどうなるんだ?

喫煙問題・受動喫煙問題が出始めた頃「タバコ税を払っているんだから」とか「嗜好品だから」を中心とした反論が出た記憶があります。吸う権利もあるでしょうけど、吸わない権利もあるために今では受動喫煙(さらには三次喫煙)問題がクローズアップされています。

アルコールの場合は学校や職場における飲み会での一気飲みや飲酒を無理強いする場面はほとんど見られなくなりました(見られなくなる前に多くの被害者・犠牲者が出ましたけど)。

喫煙に関して色々なことがわかってきて、大きな流れとしては受動喫煙防止条例が常識となるはずです。21世紀における日本の国民の健康のために画策された「健康日本21」では「栄養・食生活」「身体活動・運動 」「休養・こころの健康 」「たばこ」についで「アルコール」も問題提起がなされています。

受動喫煙問題と共にアルコールに対しても問題ではあるんだよ、との認識を多くの人が持たなければいけません。オッサンたちは今日の飲み会でぜひこの問題を論議してくださいませ(笑)。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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