自分が肥満なのは抗生物質を飲んだため⁉抗生剤肥満原因説は本当か?

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抗生物質(医師は抗菌剤と呼ぶこと多いですが)を飲むと肥満になりやすい、との驚きの話があります。

風邪でも抗生剤を処方する傾向がある日本の医師、なんてことを言われがち。たしかにその傾向はありますが、それによって肺炎なのどの合併症が減った、との考え方もあります。

そんなことより

抗生物質を飲むと肥満になる

という話の方が多くの方が気になる、特定の人にとっては今そこにある危機的な話でしょう。

肥満の原因が抗生物質を飲んだことにあるのか、それは本当の話であるのか少し調べてみました。

抗生物質投与で体重増加は本当らしい

先日の夜更けにSNSでこの話が数人の医師の間で話題に数分間なりました。

抗生物質を少量投与することで体重が増加するからです。抗生物質を少量慢性投与すると何故か体重が増えるのです。多くの食肉に少量の抗生剤が与えられています。それも問題になっています。注:さまざまな実験がなされ、どうやら、抗生物質が腸内細菌叢を変化させ、そのために体重増加が起きているらしいのです。人間も同様だという報告もあります。

ドクターズコラム(望月吉彦) https://www.health.ne.jp/

一見、いいかげんな健康情報サイトのヨタ記事のように思えますが、医師がしっかりと執筆しているコラムです。テトラサイクリン系抗生物質は家畜に使用されていて、残留抗生物質が問題となっています。もちろん、感染のリスクを減らす用途が主目的ですが「体重増加」という副作用もあてにされています。

まあ、これは家畜の話ですから人間は別と思ってしまいますが、たまたまEvernoteに「Abnormal Weight Gain and Gut Microbiota Modifications Are Side Effects of Long-Term Doxycycline and Hydroxychloroquine Treatment」(Antimicrob Agents Chemother. 2014 Jun; 58 (6) : 3342–3347)という「体重増加は抗生剤による腸内細菌叢の変化によるもの」って内容の論文を記録してあったので「これかな?」とSNSに投稿したら、他の医師の方が「Microbiota, Antibiotics, and Obesity」(N Engl J Med 2014; 371:2526-2528)と「Antibiotics in early life and obesity」(Nature Reviews Endocrinology 11, 182–190 2015)なんて論文を教えてくれました。

医師って意外とネット事情に疎いのですが、使っている人はこんなに有効に利用してるんです、睡眠不足なんのそのって。

画像

http://www.nature.com/nrendo/journal/v11/n3/images/nrendo.2014.210-f2.jpg

どうやら肥満と抗生物質には強い関連性があるのは間違いなさそうです。

幼児期に飲んだ抗生物質が大人になっても肥満の原因⁉

子供のときに肥満がちだと大人になっても肥満との考え方があります。

そうすると

幼児期に抗生物質を飲んだ → 子供時代肥満であった → 大人になっても肥満

という考え方もできますね。

まさか的に調べていたらこんな医学論文を見つけちゃいました。

「Administration of Antibiotics to Children Before Age 2 Years Increases Risk for Childhood Obesity」(Gastroenterology. 2016 Jul;151 (1) :120-129.e5)。

これは衝撃的です、だって

2歳までに抗生物質を3回以上服用していると4歳のときに肥満になる

との内容なんですから。

肥満の子供は感染症に掛かりやすいので、抗菌剤を投与されていた、という考え方もできますけどね。

抗生物質を乱用するのは避けるべきではあるけど⋯

抗生物質が人類にもたらした利益は計り知れないものがあります。しかし、安易に私を含め医師が抗生物質を処方する傾向があり、耐性菌が出現してイタチごっこを繰り返しているのも、抗生物質(抗菌剤)の歴史でもあります。

しかし、言い訳をさせて下さい。細菌が原因の膀胱炎の患者さんが来院したとします。スクリーニング検査では明らかに白血球が多数認められ、症状も膀胱炎の特徴を兼ね備えている場合、多くの医師は抗菌剤を処方します。

本来ならば原因菌を特定して、投与する抗生物質がその菌に対して有効であることを確認する感受性検査をする必要があります。現状は菌を特定するのも感受性検査をするにも数日間必要です。その間になにも抗菌剤を投与しないと、重篤な腎盂腎炎になってしまう可能性もありますし、検査の結果が出るまで患者さんは膀胱炎の症状に苦しむことになります。

抗生物質によりどんどん耐性菌が生み出されるという悪循環を打破するために必要なこと

放置しておくことができないので特効薬的な抗生物質を医師はチョイスして処方しますが、多くの医師がその抗生物質使用することによって、どんどん耐性菌が生み出されるという悪循環に陥っているのです。

解決策としては、その場で原因菌を特定できて、感受性まで分かる簡易キットの開発しかありません。世界中の医療系ベンチャー企業の皆様、ぜひご一考くださいませ❗

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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