放射能の影響でイチゴに変形があ❗じゃあ万田酵素を使った巨大野菜は放射能?

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放射線(多くの人は放射能って言葉を使いますので、放射能で話を進めます)の生体に対する影響は色々あります。病気の治療・検査にも使いますが、悪影響もあります。特にカタチが変わった次世代の生命(奇形という言葉は使いたくないです)に対する恐怖感はどなたでもお持ちだと思います。

福島原発事故に関連のいい加減な発言、自分の知識不足をご自覚くださいね

現時点でも福島の農作物に対する、科学的な根拠のない偏見を持った方も若干はいるようです。食の安全、って私の研究テーマの一つであり、医学的デマの拡散も研究テーマの一つです。Evernoteを整理していたところ、こんなヘンテコな話を見つけました。

画像

https://www.j-cast.com/2014/03/05198447.html より

タイトルは「規格外イチゴは『放射能の影響』 騒ぎ立てる脱原発派に生産者反発」ですから、J-CASTが誤報を流したわけではないのでご注意くださいね。この画像の右の方のツイートが問題なのです。

このイチゴの奇形はよほど困るらしい。雲霞のように押し寄せてきている。実際にものがあるのに、「風評」と呼ぶ。おかしいね。

j-CSAT記事の画像より引用。

おかしいのはあなたです。整ったカタチのイチゴしか市場には出回らないですから

小学校の理科の実習や家庭で農作物を育成したことある人なら、スーパーで買うような整った綺麗なカタチの野菜や果物ばかりが出来上がるわけではないことをご存知だと思います。この記事が書かれたのは原発事故から3年近く経過している時点です。どのような意図があって、明らかな間違いをこの方はツイートしたのか不思議です。

科学は信じるか、信じないか、ではなく根拠となるデータがあるかです

医療を行なっていると「先生を信じます」って嬉しいけど、その判断で良いのと素朴な疑問を抱くことがあります。私の人間性を信じてくれることは非常に嬉しいことです。

医療不信の人が多いことは知っています。標準医療の数字的なデータ等は信じるとか、信じないとかの判断基準ではなく、体感的に人工的な生成物である薬を体内に取り入れるのがイヤ、放射線治療なんて放射能を使った治療は怖い、医者は金儲け主義だから嫌い、製薬会社からお金をもらっているので薬をたくさん処方する、などの理由で医療不信になっている人もたくさんいることは承知しています。

信用・信頼できる医師が示すデータや治療成績だから「信じる」なら納得できます

医学は科学の一分野であり、その歴史は先人たちの苦労を積み重ねた歴史でもありますが、なんせ対象が複雑奇怪な「ひと」ですから、Aさんに対して効果があった治療が必ずしもBさんにも同じように効果があるとは限らない点が物理学者等が「医学は科学ではない」的な発言の真意です。病気の治療効果や治療成績を説明するときの数字は疫学的なものがほとんどであり、疫学は個人個人を対象にした研究ではなく、大きな単位、例えば国・県・一定の年齢などにおける、病気やその治療効果・予防効果についてのデータです。

例えば喫煙が肺がんの原因である、を喫煙する人は肺がんのリスクを高める、と表現するとこんな意見が出てきます。例えば「自分は50年間タバコを吸っているけど、肺がんにはなっていません。そのデータは間違いではないでしょうか」ってものです。これは疫学・統計学を詳しく知らない方の発言です。このような方に喫煙のリスクを説明するには、相手の方少なくとも中学生レベル、できれば高校レベルの数学と化学の知識を持っていないと難儀します。

自然派重視の方、万田酵素を使用した巨大野菜は奇形なのでしょうか?

万田酵素って会社がありますよね、その会社のCMで巨大な野菜を見たことないでしょうか?こんな感じのです。

画像

http://www.manda.co.jp/jdaikon49.1kg.jpg http://www.manda.co.jp/kishi.jpg http://www.manda.co.jp/jsuika.jpg http://www.manda.co.jp/%EF%BD%8Akyabetu.jpg の画像を当方で一つの画像にまとめました。

万田酵素って会社名であり、私が目の敵にしている「酵素栄養学」でも「分子栄養学」でもなく、酵素を含む肥料を生産・販売している会社と認識しています。これらの巨大野菜は奇形でしょうか?変形はしていませんが、多分これは姿が良いものをチョイスしたものであり、ヘンテコリンなカタチの野菜もあったのではないでしょうか(これは予想です)。

小学生の時にヘチマを栽培する実験がありました。ヘンテコリンなヘチマが大量にできて中には「ヘチマのUターン」なんて味のある表現でスケッチにコメントしていた同級生もいました。

ここから少し難しい話をします

見た目で形が良い、美しい、整っている、それが正常であることの証明にはなりません。もちろん優れたものであるとも限りません。

見た目姿で物事を判断すると

美しい = 良いことで正しいこと、醜い =悪いことで間違ったこと

という偏見に満ちた判断基準に洗脳されかねません。

美醜は善悪でもないし、正誤でもありません。今回取り上げた「変形したイチゴ」、もちろん科学的なデータに裏付けられたものでもなく、なーんにも根拠のない思い込みを拡散することは、何らかの意思があっての行動なんでしょうか?たんに、経験不足・知識不足ならいいのですけど。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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