正しい医療情報を得る方法、新聞でさえコレですからかなり難しいかと⋯。

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ショッキングな報道が先日新聞に掲載されました。 http://www.sankei.com/politics/news/170427/plt1704270012-n1.html(産経新聞 平成29年4月27日)

この記事を読んだトンデモさんたちは、鬼の首を取ったように喜んでお祭り騒ぎでしょうね。

新聞でさえ、健康関連記事を間違って報道しちゃいます

こんな記事が第一面を飾りました。

同じ産経でも紙とネットではちょっと違った表現になっています。

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http://www.sankei.com/politics/news/170427/plt1704270012-n1.html

産経新聞さん、これ有料アプリのものです、新聞も購読していますので画像の利用を大目に見てくださいませ。

画像

https://www.sankei.com/article/20170427-D6AE3ZZEDZIKLKQ5VOLLDKCPBI/

新聞だと

●主見出し「抗がん剤 効果少なく」、袖見出し「政府など調査 年齢別指針作成へ

ネットだと

●主見出し「抗がん剤 高齢患者への効果少なく」、袖見出し(?)「肺がん・大腸がん・乳がんの末期は治療の有無で生存率『同程度』

この二つは情報源は同じですが、ネットの方が少し情報量が増えています⋯でも、どっちも間違いなんです❗

国立がん研究センターは「統計学的な結果は出なかった」と発表しています

国立がん研究センターは今回の研究についての報告をプレスリリースにて公表しています。

画像

http://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/pdf/press_release_20170427.pdf

ここでははっきりとこのように書かれていますよね。

その結果、今回の検討では、臨床的、統計的に意味のある結果を得ることが出来ませんでした。

https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2017/0427/index.html

紙及びウェブの本文中では、抗がん剤が明確な効果を示さない、と読み取れる記事になっています。

臨床的・統計的に意味のある結果出ない → 効果少ない → 効果を示さない

に誤訳というか誤変換された事実とは異なる記事になっています。

このような医学情報の誤変換・誤訳は他の新聞も時々やらかします → インフルエンザ予防接種は効果がありません、という毎日新聞の報道への疑問が満載❗

産経新聞OBのジャーナリスト・小説家・エッセイストが多数。私は大ファンなんですから、今回の第一面を飾った記事にはショックを受けてしまいました。新聞記者さんって政府に物申して、ちょっと不良っぽく、かつオチャメなのに、知性の高い人が私のイメージ。

そんな記者さんでも健康関連記事を書くとこうなっちゃうんです。じゃあ、何を信じれば良いかという大問題が発生してきます。

医療情報を読む上で気をつけたいこと、特に医療の統計はわかりにくいから注意を

医療関連情報サイトの信頼度が揺らいでいることは多くの方がご存知だと思います。誰が書いたかわからないような医療関連記事はもちろん信頼度がほとんどないですし、医師監修であっても怪しげです。じゃあ、医師が書いた記事(これね❗)なら医療情報として正しい情報であると信じて良いのでしょうか?医師の中にもヘンテコリンな人もいます。

時々私がトンデモさん方面の医師をブログで取り上げますが、トンデモさんの特徴として一つの情報源を義理堅く信じ守り通す傾向があります。変に医学知識があったり、理系的思考ができることによっても間違いを起こしてしまいます。

産経新聞の記者さんをかばうワケではないのですが、このグラフに注目すると「抗がん剤効果なし」って感じるかもしれません。

画像

https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2017/0427/index.html

赤線が抗がん剤治療をした方、青線が抗がん剤は使わなかった方の生存日数です。普通は「全然、差がないじゃん」って思いますが

なんせ対象とした人数が肺がんのIV期75歳未満で186人、肺がんのIV期75歳以上で9人❗

なのですから、統計学的な結論を出すことは無理です。だからこそ、がん研究センターは意味のある結果は得られなかった、と公表したのです。取材会見(開催されたかは不明)かプレスリリースを読んだ、あわてんぼうの記者さんは、このグラフをみて抗がん剤の効果が少ない、と書いてしまったのかもしれません。

紙及びウェブ記事文で「抗がん剤は効果を示さない可能性」を示唆する記事になっています。これはプレスリリース中の「科学的エビデンスの有無を問える成果を出すことができませんでした」を効果なしと早合点したのかな?

ちなみに紙では肺がんについて「『効果を示さない可能性がある』と指摘した」と書かれていますが、誰が指摘したのかは不明。

医療記事の信頼度を見極めるためには一次ソースまで読み込むことが必要❗

これが医療情報を読む上で大切なポイントです。でも普通はそんな暇はないですから、自分にとって大切な医療記事は可能な限り複数の手段で多数の情報を収集することが現実的かもしれません。

私が常に注意をしていること諸々

私のブログも情報自体が古くなったものもありますし、専門家からこれはちょっとねえ的な記事もあるとは思います。しかし、少なくともおふざけ調のブログであっても複数の論文・教科書・書籍を参考にして科学的医学的に正しい情報発信を常に心がけています。

私のブログ記事に反論をお持ちの方が多数いらっしゃることは存じています。中にはトンデモさんもいますが、彼ら彼女らと議論すると、ほとんどが基礎的な科学・物理を理解しておらず、感情論に終わってしまいます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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