トンデモ医学は凄まじいです。まだまだ研究段階であっても、患者さんに使っちゃいますから。
検査方法もトンデモ、治療はトンデモ系ニセ医学を日常の診療に使っているお医者さんが消え去ることは無さそうです。そもそも、がん治療の「標準治療」という名称がトンデモさんを生み出す温床のように思えてしかたがありません。
本記事の内容
血中循環腫瘍細胞はまだまだ研究段階
先日、たまたま発見したトンデモ系ニセ医学を頻用しているお医者さんのウェブサイトで「血中循環腫瘍細胞」の検査することによって、がん治療をおこなっていることを知って椅子(自宅のPC用椅子はゲーミングチェアだぞ)から滑り落ちた私です。
というのも血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells 、略してCTC) は世界中の研究者が血なまこになって研究中のリキッドバイオプシー(Liquid biopsy、血液とかでがんを見つける方法)の一つであり、当院の医師も研究対象としているからなんです。
例えば「Molecular Biomarkers in Bladder Cancer: Novel Potential Indicators of Prognosis and Treatment Outcomes」(PMID: 26924873)では当院の永田政義医師が膀胱がんの腫瘍マーカー及び治療後の予後を改善するために適切な治療方法を選択できるように研究しているものです。
現時点であっても研究段階であり、高度な研究施設と研究に命を掛けた研究者の血と涙と少量のアルコールによって今でも臨床化への努力が続けられています。
つまり血中循環腫瘍細胞検査は、カジュアルに民間クリニックレベルで使用できるようなしろものではありません。
なぜ実用化されていない検査がクリニックで行われているの?
大学病院の研究者が実用化のために日夜努力をしている(永田医師、家に帰るのは週末だけなんて噂もあり)リキッドバイオプシーの一つである血中循環腫瘍細胞がこのクリニックで行われているのか?実際にがん治療をこのクリニックで行うことが可能なのか?このクリニックにおけるCTCを使ったがん治療の成績はどうなっているのか?などなど医師としての良い意味での興味がどんどこ湧き出てきます。
このクリニックでは「オンコスタット プラス」とのがんの診断を受けるための検査を採用しています(なんか日本語ヘンだけど、そのように書いてあります。
CTCの分離と同定、がん遺伝子の発現検査、抗がん剤40種類・ホルモン療法・天然成分50種類・モノクローナル抗体への感受性検査を行います
https://www.eminaclinic.c om/exam/ctc.html
CTCを画像検査と組み合わせることで、ピンポイントで効果の高い治療方法が選択できて、さらにがん細胞を遺伝子レベルで特徴を把握することによって、治療しているだそーな。
あのさあ、膀胱がんであってもリキッドバイオプシーによる診断方法やその後の治療方法の選択は確立していない、つまり研究段階なんだけど、この民間クリニックでは実用化されているですねえ⋯。
CTCでがんを発見、治療はサプリメントかよ⁉?
CTCでがんを発見したとします。がん細胞の治療を選択するにあたってがん細胞の遺伝子を調べることは重要なポイントであることは間違いありません。
しかし、CTCで発見したがんをサプリメントで治療するとなると、ゲーミングチェアのレバーを思わず引いてしまってリクライニング状態になって頭をしたたかにぶつけてしまった私の行動は自然の成り行きのはずです。
ここでパワーワードが登場します、「天然の抗がんサプリメント」ってなんだよ???
天然の抗がんサプリメント、調べてみました〜。
天然の抗がんサプリメントというパワーワード、思い込みはいけないことは重々承知していますが、医学論文データベースを使うのもなんなので、Googleで検索してみたところ、広告ででてきたのは
- シイタゲン-α
- NADaltus(ナダルタス)高純度NMN
- Nutricology(ニュートリロジー)パンクリアス
ありふれたサプリメントじゃん、ここのクリニックでは他の画期的な天然の抗がんサプリメントを処方しているのかもしれないけど。
シイタゲンに関しては私は怒りのブログ記事を以前書きました。
がんの標準治療はサプリメントの服用は推奨していませんし、逆に代替療法をトッピングするとがんの死亡リスクが増加するとさえ考えられてます。
せっかくCTCで見つけたがんの治療にどうして代替療法のひつつであると強く予想される天然の抗がんサプリメントをトッピングしてしまうのでしょうか?私は個人的にはがん治療の「標準治療」というネーミングに弱点があるからではないか、と以前から考えています。
標準治療の上を行く、プレミアム治療があるのではないか?
現時点では新しい治療方法は厳しい治験を経て臨床で使えるようになります。また、海外では保険適用であったり臨床化されているけど日本では健康保険の対象外であったり、日本での臨床使用が認められていない薬剤や治療方法はゼロではありません。
しかし、万が一自分ががんと診断されたり家族ががんに罹患した時は医師から提案された治療方法の上を行く治療方法があるのではないかとネットを検索したり、知人の話を聞いたり、健康関連本を買い集めたりする行動は自然だと思います。
これからは、がんの「最善治療」と呼ぼう❗
私達は厳しいチェックを受けたがん治療方法を「標準治療」と呼びます。標準ということはプレミアムやsuperlativeや知る人ぞ知る的なスペシャルな治療方法があるのではないかと考えてしまいませんか?
私が推奨するがん治療関連のトンデモを排除する知識を得ることができる一般向け書籍の代表例です。
おお!真ん中の本の著者は私じゃないですが、なんたる偶然なんだろう(棒)
非常に悪い例えですが、うな丼の松・竹・梅や天ぷらそばの並・上・特上のように標準より上があると考えがちです。私はがんの標準治療についてはエリート中のエリート治療である、と患者さんに伝えます。先日このようなツイートを見かけました。
たしかに標準医療より「最善治療」のほうがイメージが良く、さらに上の秘法があるとは受け止めないのではないでしょうか?
これからは、がん治療は標準治療ではなく「最善治療」と呼びませんか?
医療広告ガイドラインでは、「最適」「最先端」は誇大広告にあたるとしてNG表現になってますけど。