トンデモというか疑似科学系ニセ医学が世にはびこっています。
標準治療が「標準」とついているために、ひょっとして「スペシャル」な「プレミアム」的な治療があるのかと考えてしまう患者さんもおおいのでしょうね。
トンデモクリニックの一つと考えて、あるクリニックのウェブサイトを読み進めていたらドン引いて、トンデモウッチャーを自認する私もアンタッチャブルと判断して、とっとと退散しました。
本記事の内容
トンデモ医学のオンパレードクリニック、読み進めていたらドン引き
腸内環境治療・脊椎調整治療・がん治療・副腎疲労治療と言ったトンデモの芳ばしい香りを撒き散らすクリニックがあります。などが一つのクリニックの一つのお医者さんによってなされているクリニックがあります。医師の中にはマルチな才能をお持ちで、何を専門としているか、たしかになんでも知っている超人的な人がいないわけではありません。
しかし、クリニックを営むとなるとやはり自分がもっとも得意として自信をもった科目を標榜したくなるのが普通のような気がするのは、たぶん私が凡人なんだからでしょうね。
トンデモ医学でおなじみの「腸内環境」「脊椎調整」「冷え性」「副腎疲労」のほか、あまり聞き慣れない「低血糖治療」「心身開放治療」のほか、「がん治療」までおこなっているのですから、ここのお医者さんのマルチな才能には驚かされます。
ありゃりゃ、スクロールすると下の方には「妊活外来」「ダイエット外来」まであるぞ⋯。
脊椎調整治療とはなんじゃ?
トンデモというかニセ医学界隈はとにかく「歪み」が大好き。万病の元は身体の一部の歪みが原因という考え方です。よく見かけますよね、「骨盤の歪みを治せば」とか「頭蓋骨の歪みを治せば」的な健康関連本。
このマルチな才能をお持ちのお医者さんの脊椎調整治療に私は魅了されてしまいました。
脊椎・骨盤のゆがみ自体を矯正し、神経圧迫(サブラクセーション)を解除するだけでなく、筋力強化と筋肉バランス調整運動を指導し、患者さまご自身で継続可能な予防を実現しています。
やっぱりね、脊椎や骨盤の歪みを矯正するのが脊椎調整治療のようです。ここでちょっと気になるワードがでてきます。「サブラクセーション(subluxation)」です。
サブラクセーションはカイロプラクティックで多用される言葉ですからね。カイロプラクティックは日本では医療行為の対象外と考えられています。カイロプラクティックを行うために医師免許は必要とされない民間療法の一つとの位置づけになっています。
サブラクセーションは日本語だと「亜脱臼」、脱臼ではないけど脱臼気味になっている状態を表す言葉ですが、脊髄が脱臼していたら歩行はおろか生命のリスクにさらされます。脊髄が脱臼していたら、治療の基本は手術です。サブラクセーションを亜脱臼として使用しているとしたら、クリニックへの通院で治療可能かと思っちゃうのかなあ、肩関節の亜脱臼ならわかるけど、脊髄の亜脱臼だといしたら脱臼へと病状が進行してしまうと医療関係者ではなくても考えると思うんだけどなあ。
私の専門は泌尿器科なんですが、脊損だと排尿障害を合併しますので、脊損の治療はできなくても脊損に伴う症状・病気のお手伝いはするので、それなりに脊髄に関しては学んでいます。
こんな医学論文がありました。「Review of the literature supporting a scientific basis for the chiropractic subluxation complex」(PMID: 4056626)、この論文のアブストラクトでは「カイロプラクティック理論を科学的根拠によって行うことは有害である」と書かれています。
Outdated models which attempt to describe a scientific basis for chiropractic theory are inadequate and indeed harmful to the progress and acceptance of chiropractic.
つまりカイロプラクティックにおけるサブラクセーションを通常の科学的な知見に基づいた医学で評価解析することは不可能なんですね。
第三者の検証を頑なに拒否する姿勢のカイロプラクティック用語のサブラクセーション、この治療を希望する患者さんの多くは現代医療・西洋医学で嫌な思いをされた方々によって構成されていることが予想されます。次に進みますね。
※あっ、そうそう。なぜこのクリニックのウェブサイトを読み進めたら私のようなツワモノがドン引きトンズラしたかは、最後の章を読めば理解いただけると思います(信者さんを除く)。
自立支援医療機関と書かれていますね。心身の障害を専門的に診察・治療して自己負担の軽減が可能な公費負担医療制度の対象医療機関のことです。
副腎疲労治療ってなんじゃ?
まっとうな医師は口にすることもないし、多くの医師は聞いたことが無いけど、健康関連情報サイトや一般書籍では出回っている医学風用語に「副腎疲労」があります。私の専門は泌尿器科であり、副腎もある程度の守備範囲なので、このようなブログ記事を書きました。
今後も「副腎疲労」なる言葉が医学教科書に掲載される日はやってこないと思われます。「副腎疲労」は限りなくトンデモ系ニセ医学と考えて間違いないと、現時点では断言しちゃいますね。次に進みます。
妊活外来、かぎりなくトンデモ方面に向かっているような⋯
不妊治療に関しては西洋医学ではかなり研究が進み、治療方法も確立されています。しかし、大問題は費用です。私が専門とする泌尿器科も不妊や妊活に関しては、半分は守備範囲です(私は得意じゃないけど、そのために非常勤Drを大学から出してもらっています)。
妊活に関してはクリニックレベルでも対応は可能なのですが、ここのクリニックの妊活治療に対する主な検査が次のようになっているので⋯
- 各種血液・ホルモン検査⋯これはノーマル
- 副腎疲労検査⋯ええええええっ〜❗
- IgG食物アレルギー、腸内環境、代謝機能、重金属蓄積検査⋯ありゃりゃりゃりゃ〜❗
- 自律神経・末梢血流検査⋯自律神経の検査かあ、末梢血流検査ってドップラーとか使うのかなあ???
- 脊椎・骨盤に関する検査⋯無言。
- 基礎体温測定⋯これは基本中の基本ですね。でも普通は自宅で患者さんが記録するものなんじゃないのかね。
治療方法がこれまた非常に興味深い内容となっています。例えば前掲の脊椎調整治療はここのお医者さんの得意技なんでしょうから、当然記載されいるのは違和感はありません(なんかこのクリニックのウェブサイトに毒されてきた感もあるけど)。でもさあ、重金属デトックス治療はどのような機序で妊活に役立つのかちょっと知りたいなあ。メディカル調整食療法ってのも気になるなあ⋯。
メディカル調整食療法ってなーに???
妊活外来のページ中の関連する治療方法のご案内に「メディカル調整食療法」というのが書かれています。
食事療法ではなく、「食療法」って書き方に私のトンデモセンサーが敏感に反応しました。メディカル調整食療法をクリックすると⋯あれ、あれっ、「めまい治療」に飛んでしまいます。そしてめまいの主な治療として、またもや脊椎調整治療というラビリンスに迷い込んでしまうのでした。
このめまい治療に関してはご自分の体験談を書かれています。ここで注意が必要です。実は体験談に関しては医療法における病院等の広告規制において、規制の対象になっているのですが、ここのお医者さんはかなりの強気です。
患者様の声もNGだし、メディア掲載情報もNGだよ❗
厚生労働省の医療法における病院等の広告規制、これは伝えたい情報を伝えられないという大欠陥があると個人的には考えているのですが、まあお上が決めたことなんで従うしかないという弱気な姿勢を私は取っています。
基本的には誇大な広告表現が患者さんの不利益につながるとの思想によって作られた規制であり、悪貨は良貨を駆逐する、との考えも十分納得しています。
恥ずかしながら私のクリニックのウェブサイトも家内制手工業的に作っているために、以前に何回か指導を受けたことがあります。
最初に注意を受けたのが「患者さんの声」、速攻で当院ウェブサイト上から削除しました。
次に注意されたのが、メディア掲載歴です。なんでメディア掲載歴をウェブサイトに掲載することがNGなのか理解できなかったのですが、
自らの医療機関や勤務する医師等が新聞や雑誌等で紹介された旨は、広告可能な事項ではないので、広告は認められない。
医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)より
となっているので、ダメなんだそーです。たぶん有料で自院のヨイショ記事を書かせちゃう人がいたり、小さな文字で【PR】を打ち消し表示をしている記事広告を有料で雑誌や新聞に掲載しておきながら「なんちゃら新聞に当院が掲載されました❗」とか「当院の独自のなんちゃら治療方法が掲載されました❗」とやらかしちゃう医療機関があるからなんでしょうね。
脊椎調整治療を得意としているっぽい先生のウェブサイトにはしっかりと「患者様の声」ページがありますし、「メディア掲載情報」のページもあります。この件に関しては私がごちゃごちゃいう立場にはないのでコメントが避けますけど⋯。
言論の自由、信教の自由は守ろう❗
私のモットーの最後の砦は、「言論の自由」です。取ってつけたように「信教の自由」と記載した理由はこれ↓↓↓。
触らぬ神に祟りなし、このあたりでやめておきますね、このクリニックの「がん治療」をぜひぜひ検証したかったのですけど⋯。
と思いつつ、続編書きました〜❗