グルテンフリーはグルテン0ではないし、カロリーが低いとも限らない!〜グルテンフリー神話を読み解く (3/3) 〜

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どこかの大臣の発言じゃないけど、「グルテンフリーってグルテン0じゃないんですよね、意外にこれ、知られていないケースがあるんですけど」。

「プラスチックの原料って石油なんですよ!意外にこれ知られてないんですけど」

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https://news.yahoo.co.jp/byline/shinoharashuji/20210319-00228330/

意外と知られていないけど、グルテンフリーってグルテンゼロじゃないんですよね。

先日からグルテンフリー神話に関してブログを書いてこれで3話目です。グルテンフリーの食材を求めてフラフラとスーパーマーケット巡りをしていて、グルテンフリーのインスタントラーメンを発見しました、それがこれ❗

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ところがどっこい、グルテンフリーのフリーはゼロを表すフリーではないのです。

そもそもグルテンが0でなくても、グルテンフリーを名乗れます

グルテンフリーの食材はいままで何回もお伝えしてきましたが、セリアック病を罹患している患者さん向けの食材であり、セリアック病ではない人にとっては必要ありません。しかし、なんとなく意識高い系の雰囲気を醸し出すグルテンフリーが海外セレブに好まれたことによって日本でも根強い信仰を得ていると考えられます。

「free(フリー)」の意味は「自由」、

「gluten free (グルテンフリー) 」はグルテンからの束縛を気にしないで良い

との意味合いのはずなのですが、なぜか

グルテンフリー = グルテン0、と思っている人が多いようです。

例えば、カロリーフリーを強調した食材が出回っています。日本ではカロリーが食材100グラムあたり5キロカロリー未満であれば、カロリーゼロと表示することが許されていて、カロリーフリーと表記しても怒られません。

同じ様に米国で使用されているグルテンフリーに対する表示規則は次のようになっています。

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独立行政法人「農畜産業振興機構」のウェブサイト 「米国におけるグルテンフリー表示規則およびグルテンフリー食品の流通状況について」より

つまり、グルテンフリーはグルテン0でなくても「グルテンフリー」と表記することが可能であり、グルテンフリー表示はあくまで食物アレルギーを有する方に対するものなのです。

グルテンフリーしょうゆラーメン、醤油はグルテンを含むのでは?

セリアック病だけど、ラーメンが食べたいという方の希望をかなえた食材である、「グルテンフリーしょうゆラーメン」ですが、

意外と知られてないんですけど… (溜め) 、醤油って小麦が原料なんですよ(笑)

私の手元にある「グルテンフリーらーめんシリーズ」、味噌ラーメンも豚骨ラーメンまで取り揃えたラインナップ。グルテンフリー専用工場で作られているという念の入れ方ですから、醤油などももちろんグルテンフリーだと思われます。

醤油を作る過程で小麦を使用しない製法も考案されていて、これらの企業努力には頭が下がる思いです。

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グーグルで「グルテンフリーの醤油」で検索すると、ズラッと小麦を使わない醤油が検索結果として出てきます。

グルテンフリーはあくまでセリアック病のための食材です

グルテンフリーのラーメン、通常のインスタントラーメンと比較するとカロリーは低めです、だってグルテンフリーダイエットというものがあるんですから。

グルテンフリーラーメンの麺のカロリーは271キロカロリー、スープのカロリーは28キロカロリー。一方、マルちゃん正麺醤油味の1食あたりのカロリーは麺287キロカロリー、スープ46キロカロリーの合計333キロカロリーとなっています。と、書いている途中でかなり不安になってきました。

グルテンフリーのインスタントラーメン299キロカロリー、マルちゃん正麺333キロカロリー。ってことは、グルテンフリーってたった1割位しかカロリーオフになっていないじゃん❗

繰り返します、グルテンフリーの食材はあくまでセリアック病の方のためのものであり、体重を減らすダイエット、あるいは医学的に認められていないようなトンデモ御用達の病気のために開発されたものではないのです。

ちなみにグルテンフリーみそラーメンの1食あたりのカロリーは354キロカロリー、グルテンフリーとんこつラーメンは348キロカロリーで、両者ともにマルちゃん正麺のカロリーを上回っています。

セリアック病ではないけど、グルテンアレルギーがある場合

食物アレルギーは致命的である場合もあるために、レストランとかでは注文の際に、「食物は大丈夫ですか?」と尋ねられることが日常化しています。私はちょっと変な人っぽいオーラをむんむんに醸し出しているお客さんが、5分以上に渡って自分がどのような食物アレルギーを持っているかを店員さんに告げている場面にでくわしたことがあります。

「Gastroenterology」という非常に権威ある消化器専門誌があります。この医学専門誌に興味深い論文が掲載されています。

「No effects of gluten in patients with self-reported non-celiac gluten sensitivity after dietary reduction of fermentable, poorly absorbed, short-chain carbohydrates」(PMID: 23648697)、タイトルを直訳すれば

自己申告のグルテン過敏症にグルテンは影響しない

になりますよね。つまり、自分で、「私はセリアック病ではないけど、グルテン過敏症なの」と考えていても、そのような人達はグルテンを含む食材を摂取しても何も影響がでなかったということです。

この論文はダブルブラインドによって37人の被験者を対象にしたものであり、グルテンを含む食材を摂取してもグルテンの特異的な症状は認められなかったのです。唯一考えられる原因としてはFODMAPと呼ばれる、F(Fermentable「発酵」)・O (Oligosaccharides「オリゴ糖」)・D (Disaccharides「二糖類」)・M (Monosaccharides「単糖類」)・P (Polyols「ポリオール」)に対する過敏症だった可能性が示唆されています。ちなみに健康に良いとされている納豆・ごぼう・アボカド・キムチ・ゴーヤは高FODMAPの食材です。

おまけ

食物アレルギーの診断はとにかく専門家の診断を仰いでください。私のブログの愛読者ならご存知の「灯台下暗しシリーズ」第11弾的。急にそばを食すると急激な腹痛に悩まされるようになった家人がいます。そばアレルギーとの自己診断のために、私は大好物のそばを食する機会が激減しました。ある時焼肉屋さんで、冷麺を頼んだ家人は店員さんに、「私ってそばアレルギーでしょ、だから冷麺でそばの食感を楽しむの」と伝えると店員さんは「あの〜、冷麺って原料はそば粉なんですけど」と小声でささやき奥にひっこんでしまったとさ(笑)。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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