グルテンフリー食にすると悩んでいた目の下のクマやニキビが改善し、現代医療では治療の出来ない免疫性の病気が完治し、やる気がでてきて毎日の疲れがスッキリしちゃう。このような夢のような話を耳にしたことがありますか?
なんでもグルテンフリーはセレブも夢中でノヴァク・ジョコビッチ、アン・ハサウェイ、ミランダ・カー、ジェシカ・アルバ、そしてお約束のグウィネス・パルトロウを虜にしているそーです (皆さま、お騒がせセレブ的で有名なような気もしますけどね)。
グルテンフリーの真実を知っているかい?
グルテンフリーと表示されているメニューは世界各国の一流ホテルで見ることができますし、都内の海外の人が多いスーパーでもグルテンフリーと表示された食材が店頭にズラッと並んでいます。
グルテンフリーが健康食であり、さまざまな病気の予防になり
グルテンフリーで現代医療では治療のできない病気を治してしまうことが可能なのでしょうか?
グルテンフリーが極々普通の食材より健康に良いということは医学的に証明されているのでしょうか?
グルテンフリーが極々一部の病気の人向けの食事療法であることは真実だけど⋯
セリアック病(Celiac disease)という小麦に含まれるグルテン(gluten)というタンパク質に対する遺伝性の病気があります。グルテンを含む食材を食べると腸の粘膜に炎症が生じて下痢になり、その結果栄養状態が悪くなり体重の減少がおこります。
セリアック病はその他にも様々な症状を伴うことがあり現代医学であっても完璧な治療方法は確立しておらず、症状を引き起こさないためにグルテンを含まない食事が推奨されています。これがグルテンフリー食(Gluten-free diet)です。
私がグルテンフリー食という治療方法をセリアック病以外の人に推奨する一般書籍を初めて目にしたのは、「グルテンフリーダイエット」(2013/4/19発行 エリカ・アンギャル著)です。このエリカ・アンギャルさんは「世界一の美女になるダイエット」 (幻冬舎) というベストセラー2009年に書いたミス・ユニバース・ジャパン公式栄養コンサルタントですから、女性の注目をあつめたのは当然ですね。
2021年3月時点でも「グルテンフリー」あるいは「グルテンフリーダイエット」で検索すると続々とグルテンフリー関連記事が生み出されています。
しかし、このグルテンフリーあるいはグルテンフリーダイエットをセリアック病以外の人が実践することでなんらかの病気を改善し、体重を落とすことを意味するダイエットが可能であることに対して、大いなる疑問を抱いている医師は私だけではないと思います。
なぜならグルテンフリーによって病気が治ることを明確にした質の高い医学論文はありませんし、グルテンフリーによってダイエットに成功した人がいたとしても、その後も果たしてグルテンフリーを実行しているのかに関しては疑問が残るためです。
※注意 セリアック病の方にとってグルテン除去食は適切な治療方法であり、疑うことのできない事実です。
セリアック病は日本では稀な病気です
セリアック病は
北欧系の人にみられる遺伝性の病気です。欧州(特にアイルランドとイタリア)では150人に1人、米国の一部の地域ではおそらく250人に1人にセリアック病がみられますが、アフリカ、日本、中国では極めてまれにしかみられません。
MSDマニュアル家庭版「セリアック病」
日本では稀な疾患であっても、グルテンフリーと明記された食材はちょっと洒落たスーパーでは店頭に並んでいます。日本人のセリアック病の罹患率は残念ながら正確なものはわかっていません。
セリアック病に関連する一般の方が見ることができるネット記事では0.05%とされているようです。日本人にとって稀な疾患であるセリアック病、セリアック病に罹患している人向けの食事方法であるグルテンフリーがなぜこのように日本で取り上げられるのでしょうか?
グルテンフリーが多くの人の注目を集めている理由は体重を減少させるダイエットだと考えることが日本においては自然だと判断しています。
グルテンフリーでダイエットは可能なのか?
こんな記事を見かけました。
今話題のグルテンフリーとは?プロ直伝、ダイエットや美肌に効くテクニック&効果
後期中年のオッサン医師である私でさえ、8年前には知っていたグルテンフリーが「and GIRL (アンドガール)」という媒体では”今話題のグルテンフリー”と扱われてるのが興味深く、またグルテンフリー神話の根深さを知ることができます。
andGIRLは
アラサーになっても、仕事ができても、結婚しても、「ガール」な大人たちへ!andGIRL(アンドガール)の公式サイト。
とのちょっとイタタタ的なポリシーのメディアです。
グルテンフリーが効果的な症状はエリカ・アンギャルの著作とほとんど同じ。つまり病気を治す食事療法としてグルテンフリーが推奨されていて、その推奨しているのがお医者さんなんだよなあ。グルテンフリーライフに気軽に参加できるようにこのお医者さんのアドバイスとして
自宅で作る場合なら、揚げ物の衣やとろみづけなど、ほとんどの料理で、米を粉にした米粉で小麦粉の代用が可能です。また、グルテンを含まないうえ糖質もオフできるのが、大豆を粉にした大豆粉。から揚げや焼き菓子に重宝
なんてことが書かれています。
ダイエットつまり体重減少が目的でグルテンフリーにするなら、から揚げや焼き菓子をやめた方が良いと感じてしまうのはこのお医者さんがグルテンフリーのプロであり、私がグルテンフリーのド素人だからなんでしょうね。
グルテンフリーの食材を買い集めて、グルテンフリー食にトライしてもレジ近くのこれに魅せられちゃったら努力が水泡に帰す、なんだけどね(笑)。
グルテンフリー、繰り返しますがこれはセリアック病の人にとっては重要な治療の一つです。しかし、セリアック病ではないけど、グルテンに対して過敏であると思い込んでいる人が多数存在しています
。非セリアック病かつグルテン過敏という病態があるのかについて明確にした信頼できる医学文献は現時点では見当たりません。
しかし、その存在さえ確実な病態に対して治療と称してグルテンフリーを推奨している他のお医者さんがいます。かなり衝撃的な内容かつそのお医者さんは引用文献として多数の英語の論文を著作に明記していて一見まっとうな健康本に見えるのですが、限りなくニセ医学に近いトンデモ健康本の検証を次回ブログ記事でご紹介します。
はい、書きました、その2❗
その3も書きました。笑