キツネはさわっちゃダメ!っていう話を耳にしたことがある方は多いと思います。キツネに触ると最悪死ぬこともあるなんて話もありますね。このキツネは危険説はキツネに関係する危険な寄生虫の存在によるものです。
医師が医学部時代に学ぶ学問分野で「寄生虫学」というものがあります。
実はこの寄生虫学ってかなりマイナーな学問なんです。昔々寄生虫が人間だけではなく、当時としては貴重品であった(今でも畜産農家の方にとっては非常に貴重な財産)家畜の病気の原因になっていたので重要な医学分野の一つです。
本記事の内容
エキノコックスといえばキタキツネだよね、医学部出身の方々
医学生や医師は刷り込み的に鯖=アニサキス、日本住血吸虫症=ミヤイリガイ、エキノコックス=キタキツネが瞬間的に頭に浮かぶはずです。じゃあ、エキノコックスに人間が感染したら、どうなるかレベルの記憶は遥か彼方へ。
先日、北海道の円山動物園でサルがエキノコックスに感染して死亡したらしいとの報道がありました。その時、人間には感染の恐れが無い、と書かれた記事があったのですが
数十年前医学部で学んだエキノコックスのうろ覚えの記憶をたどると、人間にも感染するんじゃなかったけ?
BuzzFeed Japanさんがしっかりと解説してくれていました、こんな感じで⋯。 エキノコックス「人にはうつらない」の誤解 何に気をつけるべき?
ポイントとしては以下の部分です。
「人から人」「サルからサル」「サルから人」には感染しない。だからと言って、動物間でうつらない・人に感染の危険がないわけではない。
前掲BuzzFeed 記事
これは医学部で習ったことです。しかし、なんで人間にはうつらないって話が出たのか、その解説が書かれています。
取材では「感染したサルから他のサルや人間にはうつらない」と回答したが、一部の言葉だけが報道されたため、「動物間ではうつらない」「人への感染の危険はない」と誤解されてしまったのでは
前掲BuzzFeed 記事
取材を受けた円山動物園の山本秀明さんの発言を取材をした朽木誠一郎さんは報じています。
医学知識の無い記者さんが早とちりしたってことですね
朽木誠一郎さんは医学部出身の有名ジャーナリストですから、信頼度大の報道です。このように誤報道がどうして起きてしまったかということを検証した記事は非常に有用です。
じゃあ、医師が解説しているエキノコックスの記事ってどうなっているんだろうと素朴な疑問を抱きました
ちょいと先日から気になっていた医学情報サイトを覗いてみると⋯なんか非常に違和感があったのです、何とは無しに、どうもWEIQ臭が漂うのです。
医師が監修しているのなら論文の書き方は知っているはずだよね、これはちょっとヘンだよ
エキノコックスについてこのような記事がありました。
この記事をみて「沢水」って言葉に引っかかったのです。沢水ってすぐに何を意味するかわかりますか?goo辞書によると沢水は「沢にある水。沢を流れる水」、となると「沢」ってなんだたっけ、とさらにgoo辞書を調べてみると⋯
1 浅く水がたまり、草が生えている湿地。
2 山あいの比較的小さい渓谷。「沢登り」
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/89926/meaning/m0u/
北海道の大自然に遊んでいるキタキツネが頭に浮かんでくる沢水という言葉。そして突然出てくる野ネズミとブタ。ブタは街中をウロウロしていませんよね。エキノコックスをキーワードにして検索した時に同じような文章を読んだ記憶が⋯ありました、北海道の石狩振興局のサイトです。
エキノコックスが寄生したキツネやそのフンに直接さわったり、フンに汚染された山菜や沢水を口にすると感染の危険があります。人から人、ブタや野ネズミから人に直接感染することはありません。
石狩振興局
これってブタと野ネズミの順番が入れ替わっていて、フンが漢字になっているのと、直接感染が感染に変わっているだけでほとんど同じ文章に見えてしまうのは私だけでしょうか?
ちなみに「ブタ」ですが、石狩では重要な農業産出物となっていますから、エキノコックスの注意に記載されても当然ですね。
たまたま同じような文章になることはあります、しかし⋯
医学って定義が決まっていることが多いので、同じ病気を説明する時に似通った文章になることはままあります。薬の解説も同様の傾向があります。
でも医学書を参考としても、自分の頭で考えながら文章を書いていくと医学書と同じ文章になることはまずありません。もし、全く同じ文章を使用するならウェブサイトならば先人に敬意を表するマナーとしてblockquoteを使いますし、紙ベースであったら参考文献を末尾に明記すると共に、引用した箇所に数字を入れます。医師であって論文を書かない人(私だあ)であっても、勉強のために医学論文は紙ベースであっても、ウェブサイトであっても読むでしょうから 引用や転載や参考にした文献がある場合のルールはご存知のはずです。
今回見つけちまった記事がたまたまの偶然で似たような文章になったと、大人の対応を心がけたいと存じます。
WELQが閉鎖して漁夫の利、って言われかねない医師監修と称するサイト
今は正々堂々と閉鎖した医学情報サイト「WELQ」が問題視されたのはルール無用のコピペ、無断転載、間違った医学情報、そして素人ライターがお手すきの時間を上手に利用して書いた医学風原稿が問題になったのです。信頼度を損ねたサイトであることが判明したので、会社としては多大な損失を出しながら閉鎖という苦渋の選択を余儀なくされたのですよね。
医師が執筆した記事とか医師が監修した記事であれば信頼度が増す、と普通は考えます。なのにいまだに引用先や元となる文献も記載されないで、文章がそっくりのものを平気で掲載しているサイトが存在する可能性もないわけじゃない、ということを知っておいてください(かなり苦しい言い回し)。
注意1:私の見間違いかもしれませんが(なんせ老眼がひどいもんで)、まるで同じように見える文章が書かれているサイトの一方は2016/12/09に更新となっていて、石狩振興局のサイトは2015年9月16日(水)が最終更新日になっています。なお、記事の内容に関しては特に間違いはないと判断します。
注意2:パクリの定義については私はこのように考えています⋯文章を加筆しての転載、つまりパクリについて