「5-ALA」が感染症のウイルス増殖を100%抑制!それってエビデンス有るの〜⁉

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5-ALAがここ数週間でかなりの勢いで話題になっています。

「5-ALA」は正式名称は 5-アミノレブリン酸(5-amino levulinic acid)というアミノ酸の一種類であり、ヒトが生きていく上で食べ物から摂取することが必要とされている必須アミノ酸ではありませんし、人体内で合成できる非必須アミノ酸でもありません。

「5-ALA」という物質が感染症に効果がある?

5-ALAは光感受性物質としての性質を利用して、医療分野ではがん診断方法の一つとして私が専門とする泌尿器科領域では膀胱がんの治療・診断に役立てる動きが数年前から注目されていました。

しかし、私はこれを見てひっくり返りそうに成ったのです。

長崎大学医学部とネオファーマ社による5-ALAの共同研究

インスタで拾ったものですが、「長崎大学医学部とネオファーマ社の共同研究により、5-ALAが新型コロナ感染症ウィルスの増殖を100%抑制する事が世界的医学誌に発表されました」⋯ウイルスを「ウィルス」と書いてあるので、またですかあ、素人サプリ屋さんが変な事を言っているなあ、レベルで脳内処理をしようと試みたのですけれど⋯。

続く文章は「そのネオファーマ社の5-ALAサプリメントを当院で特別にお取り扱いできる事に」となっています。

つまり5-ALAが新型コロナの増殖を100%抑制すると、お医者さんがインフォメーションしているのです❗

ウイルスを100%抑制、これが真実ならサプリメントとして販売することはある意味で非人道的であり、薬として世界中に供給することによって日本は他国を引き離して新型コロナ感染症感染症対策で貢献できることになるはずなのに、医学界は沈黙。

新型コロナの増殖を5-ALAが100%抑制する、という驚愕すべきお話を読み解いてみました。

あのさあ、医師ならしっかり裏付けを確認しようよね❗

長崎大学が2021年2月9日に大学のウェブサイトで「5-アミノレブリン酸(5-ALA)による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)原因ウイルスの感染抑制が判明 〜今後の治療薬候補として期待〜」と題した告知を行っています。

  • 5-ALAがへんてこな感染症の原因であるウイルスの感染を抑制する
  • 今後の治療薬として期待ができる
  • 5-ALAの強い感染抑制効果が確認された
https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/science/science225.html

以上のことは長崎大学の研究者のプレスリリースで確かに述べています。しかし、このプレスリリースのどっこにもヒトに対して5-ALAが感染を抑制したとは書かれていませんし、ましてや

5-ALAが100%感染を抑制することは一切書かれていません❗

前掲のインスタのお医者さんはまず間違いなく長崎大学の研究者の論文を読んでいない可能性が濃厚に疑われます。

5-ALAが新型コロナに対する効果を検証した長崎大学の論文はこれ❗

あのさあ、医師が自分のクリニックでサプリメントであったとしても、少なくとも一次ソースである研究者の努力の結果である論文には目を通すべきであると私は考えます。

研究者の努力の結晶である研究論文を読まないで効果を無責任に喧伝することは失礼な行為だとも考えられます。長崎大学のプレスリリースにはしっかりと掲載された医学専門誌が記載されているじゃん❗

「5-amino levulinic acid inhibits ヘンテコなウイルス infection in vitro」(https://doi.org/10.1016/j.bbrc.2021.01.091)という論文がBiochemical and Biophysical Research Communicationsに掲載されています。

この研究はタイトルにしっかりと「in vitro」と書かれています。in vitroとは試験管内で研究であることを示し、人体に対して行われた研究であれば、「in vivo」と表現されるはずです。

あたかもヒトに対して5-ALAが新型コロナ対策として効果があるのかは、当然現時点では明確ではありません。だって長崎大学のプレスリリースでさえ、「今後の治療薬候補として期待」と見出しに書いているくらいですからね。

そういえばこのいい加減というかテキトーな広告(?)をインスタに投稿したお医者さん、どっかで見た記憶があります。間違いなくここ一ヶ月以内に見た記憶が⋯これについては後ほど思い出したら述べてみますね。

5-ALAがウイルスの増殖を抑えていることは事実だけど⋯

余計なお世話になっちゃうけど、長崎大学の研究者の名誉を守るために、論文の要旨をご紹介します。

  • 5-ALAは培養した細胞に対してヘンテコなウイルスの感染を抑制した
  • 5-ALAの抗ウイルス作用は毒性が無く、効果は用量に依存していた
  • 5-ALAはへんてこな感染症の治療薬候補としてさらなる調査をする価値がある

つまり、

5-ALAは実験ではウイルス抑制効果が確認されたけど、臨床応用で効果は全く確認されていません❗

ってことです。

もちろん、今後の研究次第ではヒトに対する新型コロナ感染を抑えるか、あるいは治療できる薬としての可能性はあります。でも、研究者達は抗ウイルス効果のある薬として研究が継続される価値がある、と報告するにとどめています。

100%抑制しました❗の裏付けは無いし、デマ扱いされない為に開発した会社はやっきで否定

あたかもヒトに対する効果が100%あると誤解されかねない表現をインスタで投稿しているのは、間違いなくお医者さんです。お医者さんの中にも一定の確率でトンデモさんが混入することを私は言い続けてブログ記事でもしつこいほど書いてきました。

5-ALAのサプリメントを開発した会社はこのようなリリースを出しています。

Q 4. 新型コロナ感染症を予防するためには、どのくらいの 5-ALA を摂取した方が良いでしょうか︖ A 4. 現在、長崎大学にて治療に関する臨床研究は進められておりますが、予防に関する研究は行われておりませんので回答出来かねます。

5-アミノレブリン酸(5-ALA)と新型コロナ感染症(へんてこな感染症)原因ウイルスに関するお問い合わせについて

開発した会社が誠心誠意対応している姿を見ることが出来ますよね。長崎大学そしてネオファーマジャパン株式会社が今後も5-ALAの研究を継続して、ヒトに対する効果の検証に発展させ、治療薬として登場することを私は密かに応援したくなりました。

ところでプレスリリースにも、一次ソースの論文でも見つけることが出来ない「新型コロナ感染症ウィルス(原文ママ)を100%抑制」とのフレーズはこの限り無くトンデモ疑惑のお医者さんのオリジナルの表現なんでしょうか?こんな記事を見つけちまいました。

新型コロナの増殖を100%抑制したと発表したことで、にわかに注目を浴びているのだ。

デイリー新潮 https://www.dailyshincho.jp/article/2021/02221131/

「100%抑制」と記事の冒頭には記載されています。でも記事を全文読んでみると研究者の口からは一切「100%抑制」とは発せられていないことがわかります。100%抑制、これってトンデモ疑いのお医者さんのオリジナル表現ではなく、デイリー新潮を参考にしたものなのかもしれません。それでも良いけど、デイリー新潮の記事全文くらい読めよ、と感じたのは私だけでしょうか?

5-ALAに対するトンデモインフォメーションをしたお医者さん、そういえばつい先日にある美白作用のあるコスメだか薬だかのウェブセミナーの講師だったことを思い出しました。ど素人である家人がそのセミナーをiPadで視聴していて、「パパ〜っ、このお医者さん、何言っているのかわかーんない〜!」と言い出しました。めんどくさいけど、ちょこっと一瞬そのウェブセミナーを拝聴させていただいたのですが、「この人、ってお医者さん?理論とか判って言っているの?医師免許持っていても色々な人がいるからね⋯」と答えて講演途中ながらパタリとiPadを閉じました。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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