膀胱炎って癖になちゃうのよね的な話をされる患者さんが多いです。
でもしっかりと尿を培養検査して菌を突き止めて、感受性検査と言ってどんな薬がその菌に効果があるかを調べれば、多くの場合は一回の治療あるいは二回目の投薬で完治します。
本記事の内容
慢性膀胱炎の定義⋯実はみなさんが考えているようなものでは無いのです
多くの方が
膀胱炎を繰り返すから「慢性膀胱炎」と考えているようですが実はそれは早とちりです❗
「慢性膀胱炎」で検索した場合、上位に表示される医療情報サイトでも、わたしたち泌尿器科医が使用する「慢性膀胱炎」とは違った説明をしています (別に特定の医療情報サイトを言っているわけじゃないよ)。
まずは膀胱炎の分類を説明して、世の中で一般的に使用されている「慢性膀胱炎」が泌尿器科医が使う慢性膀胱炎とはどのように違っているのかを説明します。
膀胱炎とは、まずは膀胱炎の分類をわかりやすく説明します
膀胱炎はばい菌(正確には微生物)が原因となっているものと、ばい菌が原因ではないものに大きく分けることができます。その中でばい菌が原因であるものは次のとおりです。
- 一般的な膀胱炎である細菌性膀胱炎
- いまはほとんど見かけませんが、梅毒性・結核性膀胱炎
- ウイルス性・真菌性そして寄生虫が原因の膀胱炎
この3つに分けられます。
そしてばい菌が原因ではないものとして
間質性膀胱炎
があります。
特殊な膀胱炎もありまして⋯
- 放射線性膀胱炎
- アレルギー性膀胱炎
- 薬剤性膀胱炎
でも他の分類方法もあります
- 基礎的な病気がない単純性膀胱炎と基礎疾患がある複雑性膀胱炎
これが結構誤解というか混乱を招いている可能性もあるのです。
これらの用語を組み合わせて「急性単純性細菌性膀胱炎」と一般の膀胱炎をプロっぽく呼ぶ泌尿器科医は現在ではかなり減っているように思えます。
一般的な細菌性膀胱炎について、さらに詳しく解説します。
細菌性膀胱炎は急性と慢性に分けられます
この細菌性膀胱炎が問題なんです。この膀胱炎は2つに分類されます。それが急性膀胱炎と大問題の慢性膀胱炎です。この慢性膀胱炎を説明するところにやっとたどり着いた(フーッ)。
急性膀胱炎は多くの方が経験する普通の膀胱炎ですが正式な病名は「急性単純性細菌性膀胱炎」です。症状は膀胱炎の三大徴候として、排尿痛・頻尿・尿のにごり、と書かれている医学情報サイトが多いのですが、この3つのどれもあてはまらないで、いきなり血尿って場合も多く見受けます。
やっとたどり着いた慢性膀胱炎、この病気は急性膀胱炎を繰り返すことを泌尿器科医的には示しません。
基礎的な疾患がある場合に膀胱炎の状態が長く続くときに「慢性膀胱炎」と呼ぶことが多いです
またこれがやっかいで、症状が急激に現れることも少なくないので、一回の診察では普通の急性膀胱炎と診断して、基礎疾患に気が付かないことがあります⋯だからいくら抗菌剤を投与しても、一向に症状が治まらないのです。
なかなか治らない膀胱炎、これが慢性膀胱炎なのですが、基礎疾患として前立腺肥大症、膀胱腫瘍、神経因性膀胱、膀胱結石などが挙げられます。時々「膀胱異物」が原因になっている症例を経験しますが、ご自分から「膀胱に◯◯をいれちゃったんですけど」とおっしゃる方は稀ですから、色々な検査によって「なんか、膀胱のなかにあってはならないものがあるように見えるんだけど⋯」などのマイルドな表現を取ることが多いです。あと、寝たきりなどで尿道あるいは膀胱にカテーテルを入れている場合は数週間で必ずと言っていいほど細菌感染をします。
複雑性膀胱炎による慢性膀胱炎の治療はまずは基礎疾患の治療です。異物などがある場合は取り除き、前立腺肥大などの場合は前立腺の治療を行ないながら抗菌剤を投与します。
ちなみに当院ではこのように説明しています⋯慢性膀胱炎とは
膀胱炎で泌尿器科を受診する時の注意
なんだか膀胱炎のような気がする、そうだ手持ちの抗菌剤を飲んじゃおう⋯これが「膀胱炎ってくせになっちゃうのよね~」の最大の要因です。その薬でたまたま効果があったらいいのですが、服薬中にばい菌を特定して、感受性を調べる検査はできません。つまり原因菌も有効な薬も見つけることができないのです。でも、案外膀胱炎って医療機関が休診のときに限って感染しちゃう人もいます。そんなときは高熱がない限りは出来るだけ大量の飲水で膀胱内を洗い流すようなイメージで医療機関の診察日はで我慢していただけると助かります。
昔、医師が生意気だったころ「風邪に罹ってしまったんですけど」と患者さんが言うと「誰が診断したんですか、風邪って」と意地悪な返事をしていたヤツがいるとの話を聞いたことがあります。
膀胱炎かなっと思って泌尿器を受診した場合、急性細菌性膀胱炎をたまたま繰り返している可能性もありますので「あのう、慢性膀胱炎なんですけど」とおっしゃると「誰が診断したんですか」とは言いませんけど、上記のような説明を繰り返しちゃう私でした。