ビタミンDで本当に丈夫な体づくりができるのか?

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ビタミン(vitamin)はヒトが生きていく上で必要な栄養素であることは間違いありません。その必要な栄養素が足りていない人が、不足している栄養素を補うことで体調がよくなったからといって、その栄養素が効く!とはいえません。冷静に考えれば当たり前のことですよね。

さて、ビタミンは健康的な生活を送る上で必要不可欠な栄養素であるとともに、普通の食生活だと不足しがちな栄養素であると認識している人も多いのではないでしょうか?

過度なビタミン信奉者が気になります

普段の食生活だけでは補えないビタミン、足りないビタミンを補うためにサプリメントを摂取することを日常生活に取り入れている人も少なくないです。

ビタミン信奉者の中にはメガビタミンなんてことを言い出す人も出てきてしまっています。

医師が知らないニセ医学【その3】メガビタミン療法ってなんだ?

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ビタミンにはビタミンA、ビタミンB、ビタミンC,ビタミンD,ビタミンE、ビタミンKがあります。今回は丈夫な体を作ると言われ、免疫機能を高める働きがあると信じられているビタミンDについて、それらの機能が本当なのかを現時点で分かる範囲の最新の論文等を引用しながら考えてみたいと思います。

ビタミンDが足りないと感染症が重症化しやすい?

感染症と言ったら一番イメージできるのが、通常の風邪。重症化しやすいけどワクチン接種で予防できるのがインフルエンザ、そして2020年から今現在に至るまで世界中を大混乱に陥らせているヘンテコなウイルス感染症が一般的ですよね。

以前からビタミンDが人間の免疫システムになんらかの影響を及ぼし、ひょっとするとビタミンDを食生活以外で摂取することによって風邪やインフルエンザに罹りにくくなるとの説が偉い偉い先生などによってインフォメーションされています。

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全薬工業「ビタミンDで丈夫な体づくり かぜ・インフルエンザの発症予防にも」https://www.zenyaku.co.jp/k-1ban/detail/bitamin_d.html

と、なると2020年からパンデミックになっているヘンテコなウイルス感染症に対しても、ビタミンDをサプリメントで補えば感染しなくなるし、感染したとしても重症化しないんじゃないかとの説も出回ってきています。

でもねえ、ビタミンDがヘンテコなウイルス感染症を予防して、重症化を防ぐ効果に関しては十分なエビデンスがあるとは言い切れないんだよねえ。例えば、パンデミックに乗じてこんなウェブサイトを見つけました。

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世の中のニーズに答える、あるいは困っている人々を助けたい一心でこのような「緊急速報」を掲示しているのかもしれません。でも私としてはBMJに掲載された「No evidence that vitamin D is able to prevent or affect the severity of へんてこな感染症 in individuals with European ancestry: a Mendelian randomisation study of open data」(PMC7798425)が気になってしまいます。

BMJはBritish Medical Journalの略で英国医師会雑誌と記載されることも多い、めちゃくちゃ権威のある医学専門誌です。もちろん権威があるとされている専門誌にも、なぜかトンデモ系が混じりこむこともないわけではないので鵜呑みはリスキー。

さらにこの論文が掲載された「BMJ Nutr Prev Health. 」は本家本元のBMJから派生したものであることに注意しながら、ビタミンDがへんてこな感染症の重症化を予防する話には十分なエビデンスは無いよ❗を読み込んでみますね。

そう言えば2020年2月に、私はこんな記事を書いていたっけなあ。

【検証】ビタミンDは新型コロナから身を守ってくれる、はかなり怪しい

【検証】ビタミンDは新型コロナから身を守ってくれる、はかなり怪しい

やっぱりビタミンDの効果は怪しいことが今回取り上げる論文でわかりました。

ビタミンDを摂取しても感染症予防にならないし、重症化を防ぐこともできない

まあ、この衝撃的な論文は前掲の「緊急速報」を出したお医者さんにとっても、ビタミンDを速やかに補うべきだ❗と騒いでいた医師などにとってはイタタタです。

ビタミンD信奉者に対して冷酷な論文の要旨は以下のようになっています。

  • ビタミンDとへんてこな感染症の関連性はあくまで相関関係である
  • 高齢者はへんてこな感染症で死亡するリスクが高いとしても、もともと日光を浴びる生活を送っていない
  • ビタミンDの欠乏がへんてこな感染症の重症化リスクに影響は及ぼしていない

と、身も蓋もない結論に至った論文です。

この論文の研究はビタミンDに影響を及ぼす遺伝子を使ったものであり、その方法を解説してみますね。

ビタミンDに関する遺伝子で2つのグループに分けて研究しても、感染症との関連は無かったよ

「へんてこな感染症 Host Genetics Initiative」という今回世界中に蔓延している感染症を遺伝子レベルで検証するためのデータバンクがあります。また、「UK Biobank」という英国最大の遺伝子のデータを蓄積したデータベースがあります。

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研究者たちはこの両者のデータからビタミンDレベルが高い遺伝子と低い遺伝子をもつ2つのグループに分けて、それらのグループに対してヘンテコなウイルス感染リスクとへんてこな感染症の重症度を比較しました。

ビタミンDレベルが高いグループと低いグループで感染リスクや重症化リスクに違いがあれば、ビタミンDが少なくともヘンテコなウイルスやへんてこな感染症に関連している、つまり因果関係がある考えることができます。

残念ながら結果的には両者に差はありませんでした⋯つまり、2020年から2021年に渡って世界的大問題となっているヘンテコなウイルスによる感染症に対してビタミンDは予防もしないし、重症化も防ぐ効果は無いよ、ってことになるんです。

人種差を考えたら今後の結論は変わる可能性もあるけど

今回のビタミンD効果ないよ説のデータベースはヨーロッパ中心のものであり、人種的偏り、つまり遺伝子の偏りが存在している可能性が大です。となると、ひょっとして日本人の場合は感染症予防・感染症の重症化リスクとビタミンDは大きく関わっている可能性はゼロではありません。

私達人間は直射日光を浴びればビタミンDを体内で作り出すことができます。またビタミンDは脂溶性ビタミンですから脂肪組織や肝臓に蓄積されます。食事からも摂取できますし、健康的な生活を送れていればビタミンD欠乏になることはありません。新型コロナ感染症禍の自粛生活で、外に出る機会が少なくなりビタミンDを積極的に食事から摂取する必要はあったにせよ、それは新型コロナ感染症対策としてではなく、健康維持のために必要なことでしかありません。

ビタミンDが日本人に限って丈夫な体づくりに役立ち、さらに感染症予防になって、感染しても重症化を抑えることが常識となるためには、それを十分に示すエビデンスが必要になります。

ところがどっこい、そんなエビデンスを明らかにした論文は私が現時点で調べた限りでは無いよ、NOTHING❗

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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