受動喫煙の医療費3233億円❗さらに5つの無駄な医療がなくなれば医療財政は安泰かな。

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私が医師になったとき20兆円を越えると騒がれた医療費。開業した20年前は30兆円を超えて自動車産業より大きいのでは、なんて言われていました。

日本の医療費40兆円突破❗無駄な医療費を無くせば破綻しないで済むか?

それがここ数年で40兆円を突破。

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高齢化社会になり、先進的な医療が行われているのだから、しかたないとのご意見もあります。他国の医療費に比べればGDP比を考えると大したことない、とのご意見もあります。

しかし、国それぞれの医療制度は違いますし、税収等も違ってきてますので、安易に他国と比較するのはあまり説得力はないと考えます。

この日本においては近い将来保険医療を中心とした医療は財政的に破綻するのは目に見えています(実はすでに破綻しているとの説もあり)。もし、これがご自分の家計だったらどうするでしょうか?まずは無駄な費用を見つけてそれを削る、この方法が一般的ですよね。無駄な医療費と考えられているものについて、検討を加えると共に、今まで明確では無かった受動喫煙に関する医療費の問題を考えてみます。だって

受動喫煙による健康被害に対する医療費は年間3233億円❗

って数字が出てきてしまったのですから。

受動喫煙の医療費3233億円の意味するところ

2017年5月6日の朝日デジタルで受動喫煙にかかる医療費が報道されていました。

配偶者からと職場での受動喫煙を考慮し、40歳以上の患者数や喫煙の有無による病気のなりやすさの違いなどをもとに計算した。受動喫煙によって肺がんにかかるのは約1万1千人で335・5億円、脳卒中は約12万9千人で1941・8億円、虚血性心疾患が約10万1千人で955・7億円に上った。

http://digital.asahi.com/articles/ASK4W6H5JK4WULBJ00L.html?rm=351

喫煙さえなければ必要なかった、ある意味では無駄であるとも言える受動喫煙に関して必要となる医療費が3233億円ということです。では、自分が喫煙することによって必要となってくる医療費は以下のとおり。

喫煙者の医療費も推計した。たばこを吸うことで余計にかかる医療費が、肺や胃のがん、脳卒中、虚血性心疾患などで1年間に1兆1669億2千万円に上るとした。

自分が喫煙(能動的喫煙?)をすることによって必要となっている医療費は年間1兆1669億円❗うるさ型の人は分析方法にケチをつける可能性もありますが、調査した五十嵐中東京大学医薬政策学特任准教授によれば「因果関係が確実なものに絞って推計した」と述べていますので、相関関係ではなく、喫煙及び受動喫煙が原因である病気の治療に必要な医療費がこれだけかかる、と解釈して間違いなさそうです。両者合わせると医療費の5パーセント近くを締める喫煙です。喫煙は避けることができるものですから、日本国民が禁煙をすれば将来的にはこの医療費を削減することが可能となります。

そのほかに無駄な医療費と言われているベスト5は?

無駄な薬、無駄な検査等が話題に登って久しいです。まあ、がんになっても全く無治療でほっとけ的なヘンテコな意見をマスメディアに広げている方もいますが、これは例外。標準的な医療の中でもこんな無駄な検査等が指摘されています。これはNEWSポストセブンという一般週刊誌のサイトですが「日本の現状に即した無駄な医療5つがリスト化、今後増加」とのタイトルで2017年4月15日付けで掲載されています(http://www.news-postseven.com/archives/20170415_509258.html)

【1】無症状の健康な人にPET(陽電子放射断層撮影)検診は勧めない
【2】無症状の健康な人に腫瘍マーカー検査は勧めない
【3】無症状の健康な人に脳MRI検査は勧めない
【4】自然に治る腹痛(非特異的腹痛)に腹部CT検査は勧めない
【5】医学的適応のない尿路カテーテル留置は勧めない

1:無症状の健康な人にPETを行なっている医療機関があるとは驚きです。まあ、PETだとがんが早期発見されると考えている方も多いようですが、泌尿器領域のがんをPETで見つけることは適していません。人間ドックでのオプションとして行うならば、これは国の財政負担はありませんので、それほど無駄な医療費とは言えないような気がします。

2:無症状の健康な人に腫瘍マーカーを勧めないのは当たり前だと思います。前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAはあまりにも鋭敏であるために、その方の生命を左右しない前立腺がんまで見つけちゃいます。他の臓器の腫瘍マーカーは前立腺がんほど特異性はありませんし、鋭敏でもありません。この無駄な腫瘍マーカーを実際に行なっている医師は一度よーく考える必要があります。

3:脳ドックのことを意味しているのでしょうか?脳のCTと比べて被曝のリスクがないので多用されているようですが、普通に開業医を訪れて症状もなく「先生、脳のMRIをやりたいんですけど」なんていう患者さんが果たして実在するのか、少々疑問です。

4:自然に治る腹痛に腹部CT?これちょっと変ですね。治るか治らないか判断できないから、必要に応じて原因となった臓器を見つけるために、CTって普通は使用されるんじゃないでしょうか?第一治ることがわかっているならそもそも検査は必要ないんじゃない?

5:医学的適応のない尿路カテーテル留置は勧めない⋯これちょっとどのような状態を指すのか分かりませんでしが、多分、寝たきりの方の排尿管理に対して、オムツではなく膀胱にカテーテルを留置する方法のことを言っているのだと思います。尿閉じゃない限り、カテーテル留置は尿路系感染のリスクを考えると今はあまり行われていないんじゃないの?

まあ、週刊誌的にはこの5つが無駄な医療らしいのですが、ツッコミどころ満載なような気がするのは私だけでしょうか?私としては無駄な薬の処方、ルーチンワーク化している検査の方が無駄な医療費のように思えます。海外ではこんな結果になっています。

無駄な検査・薬のトップ5を発表します❗

無駄な検査・薬のトップ5を発表します❗

日本でも行われがちな無駄な医療費ですので、ご参考にしてください。

色々な考え方もあるでしょうけど、因果関係がはっきりしている問題から解決を❗

財務省の資料によればタバコの税収は2兆円くらいあります。喫煙者はその税収で今回明らかになった喫煙が原因である医療費をカバーできるとおっしゃるかもしれません。

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財務省サイト http://www.mof.go.jp/

でもタバコにまつわる税金の全てが医療費に使われているわけではないし、自分が病気になることは別問題としても、明らかに第三者を病気にしちゃっていることを考えてくれないと困ってしまいます。

週刊誌が無駄な医療(無駄な医療費とは言っていない)より、因果関係がハッキリしている受動喫煙の医療費問題をマス・メディアはもっと大々的に報道してほしいです❗

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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