先日、患者さんから素朴な疑問がありました。「ワクチンがもしも目に入ってしまったら感染しますか?」。私は最初はその疑問の意味がよくわからなかったのですが、患者さんは、「だって先生、目からもうつるってニュースで言ってたじゃない?」。思い出しました、ウイルスが目から感染する、そしてこんな感じの報道もありましたものね。
本記事の内容
ワクチンの種類は3つです。目から感染する可能性が否定できないワクチンも⁉
世界中の製薬メーカーが現時点でしのぎを削って莫大な研究開発費を投じているワクチンはがんの治療に使う治療用のワクチン。これに関しては今回は触れません。感染症に対するワクチンの種類は大きく分類すると次の3つです。
- 不活化ワクチン
- 生ワクチン
- トキソイド
1の不活化ワクチンの代表はインフルエンザのワクチンです。不活化ワクチンはウイルスや細菌の感染能力を無くしたもの(これを不活化と呼びます)が主成分です。
2の生ワクチンはBCGなどで、ウイルスや細菌の毒性を弱めたものが主成分です。
3のトキソイドは破傷風などに使われるもので、抽出した毒素が主成分でで免疫は作るけど毒性は無くしたものです。
ワクチンの成分を考えると、万が一、ワクチンが目に入った場合にワクチンから感染してしまう可能性が否定できないのは2の生ワクチンということになりそうです。
目からの感染は無さそうだけど、ウンチからの感染はありえます
ワクチンが目に入って感染の症例を探したのですが、私には探しきれませんでした。一方で、生ワクチンを接種後、生ワクチンが原因と考えられる感染例はあります。
患者が発熱する11日前にワクチンを接種した次女の排便の世話を行っていたことから、本事例はワクチン由来株が原因のコンタクトケースであることが確認された。
日本医師会のウェブサイトには(https://www.med.or.jp/kansen/porio.html)、約440万回ポリオワクチンを接種すると、1件ワクチンが原因となってウンチから第三者へ感染することが書かれています。
今回、私が患者さんに質問された、「ワクチンが目から入った場合、感染しちゃうの?」との素朴な疑問は今世界中に蔓延しているヘンテコかつ厄介なウイルス感染症に関してのものであり、聞き慣れないmRNAワクチンとの言葉が飛び交っています。mRNAワクチンの仕組みから考えて、免疫反応による眼球結膜や眼瞼結膜が赤くなってしまうことはあり得るかもしれませんが、感染しちゃうことは無い、と現時点では判断して良いと考えています。
ワクチンが目に入ったら、まずは水で流しましょう❗
接種される側の患者さんの目にワクチンが入り込むことは、まず常識的なシチュエーションでは無いと考えます。
一方でワクチンを接種する側の医師の場合、ワクチンの瓶からワクチンを注射器に吸い上げたあとに、空気を抜くためにほんの少しだけ注射器を押してエア抜きをします。その時に目にワクチンが入ってしまう可能性はゼロではありません。しかし、少なくとも今まで私の数十年の医師生活で、ワクチン接種のためにゴーグルをわざわざ装着している医師は見たことがありません。
今現在話題になっているウイルスは、目からの感染のリスクがあるんじゃないのと考えられている為に、患者さんに接する場合、医師はゴーグルかフェイスシールドを着用するのが常識です。近いうちに開始されるワクチン接種の際も、ゴーグルかフェイスシールドを着用することになるのか、医師会からの伝達(これがまた、紙ベースで地域の医師会からFAXで送られてきたりする苦笑)を待ちますね。
一般的にワクチンには添加物やホルマリンや一部のワクチン忌避の方が嫌うチメロサールが含まれているために、万が一、ワクチンが目に入ってしまったら感染予防目的ではなく、目に異物が入り込んだ時の対処法である洗い流すだけで大丈夫です。一般の方の場合は洗い流し、念の為に眼科医を受診した方がいいですね。
6人分と言っていたのに5人分しかワクチン取れないじゃん問題の問題点と解決方法
そういえば本当はワクチン一瓶から6人分確保できるはずだったのに、実際は5人分しか接種できないと問題になっているワクチンもありました。
なぜこんな問題が発生したのか、ちょっと理解に苦しみます。国のワクチン確保担当者は詳細をしらなかったのでしょうか?
ワクチンのボトルにはしっかりと5人分って書いてあるんだけどなあ。
注射器でワクチンを吸い上げて使用する場合にどうしてもデッドスペースができてしまいます。注射器と針の間にワクチンが残ってしまうのです。でもねえ、ローデッドスペースタイプの注射器があるので、これを使えば一瓶から6人分確保できるんじゃないかなあ(通常の注射器よりめちゃくちゃ高いけど、当院には在庫があったりしますw)。
※ヘンテコなウイルスに関して、眼科学会はこのような情報を提供しています。
また、重度の眼の感染症との関連も指摘されています。これらの記事では直接へんてこな感染症が原因となっているかについては現時点で明確に判断は出来ないと記載されている点に注意してください。