フリマアプリのメルカリがとにかく話題になっていますが、この記事を見て驚きました。
妊娠菌を信じていた人っているの?
「女性が妊娠しやすくなる『妊娠菌』がついている」と称した白米がインターネットで売買されていることが分かった。「妊娠米」と名付けられて1合当たり最高1500円で出回るが、毎日新聞の取材で、出品者に妊娠経験がなかったり、購入者にサプリメントのカタログが送られたりする事例が確認された。「妊娠菌感染」に医学的根拠はなく、専門家は「不妊に悩む女性を冒とくする詐欺行為だ」と憤っている。
えっ、妊娠しやすくなる菌に医学的根拠があると思っている人がいたの❗
ニセ医学の典型である妊娠しやすくなる菌をいくら藁をも掴みたい気持ちの不妊に悩む方といえども⋯日本の理系教育はどうなっちゃっているんだろうと悲しい気持ちになってしまった次第です。
理系教育の崩壊、っていうより常識の崩壊か?
お相撲さんに赤ちゃんを抱っこしてもらうと、健康で元気な子に育つ⋯これを心から医学的根拠ある話だと考えている人っていますか?普通は妊娠しにくかったら不妊治療専門の医療機関を受診するのではないでしょうか?今、生殖医療という分野は少子化等の影響によって大々的に認識されているはずです。
万が一、妊娠しにくい状況であったとしても人工的に受精させる方法(正確にはいくつかの分類があります)があり、昔であったらまず妊娠できなかったような条件下でも妊娠可能です。治療方法によってはかなり高額になってしまうために、ひょっとしたら「妊娠しやすくなる菌」に頼ってしまった方もいるのかもしれません。
でも、幾ら何でも「妊娠しやすくなる菌」が本当ならその菌による不妊治療がすでに医療機関によって行われているはずです。お札にあやかる程度ならまだしも、本気で妊活菌の存在を信じた方はなぜそのようなロジックができなかったのでしょうか?
自分の子供夫婦が子宝に恵まれないことを心配したおじいちゃん・おばあちゃんが、赤ちゃんお相撲さんに抱っこ的な縁起物(妊活菌は縁起物じゃなくて詐欺だよ)をとしてメルカリから買っていたら、まあ微笑ましいことで⋯ってわけないじゃん❗変な菌が入っていたら母子ともに健康を害しちゃうぞ。
ニセ医学がはびこると詐欺師が跋扈しだすんだよ❗
私がしばしばニセ医学批判を繰り返している大きな理由の一つはニセ医学グッズは詐欺ビジネスの温床であるからです。またニセ医学を信じ込んでしまったために標準医学で治るものさえ治らない状況に追い込まれることがあるからなのです。
詐欺師はニセ医学が大好き、ってことを覚えておきましょう❗
実は「妊娠しやすい菌」というものの存在はちょっと前から私のEvernoteに記録されています。週刊新潮のスクラップ記事によれば
「個人間で雑貨や日用品を売買するフリマアプリでは、このところ妊娠菌関連のグッズが飛ぶように売れています」 確かに、大手のフリマアプリで「妊娠菌」を検索すると4000件を超える商品がヒットする。
https://www.dailyshincho.jp/article/2017/02210801/?all=1
芸能人の方はこのように指摘しています。
熊田曜子に代弁してもらおう。排卵チェッカーで「営み」の日を決め、「行為」後には逆立ちまでして妊活に励んだ彼女によれば、「妊娠は授かりものなので、何が効くかは分かりませんが、母体のメンタルはとても大きいと思います。
私も妊活したので、何かに頼りたくなる気持ちは理解できます。そんな気持ちを受け止めてくれるものが、妊娠菌がついたグッズなのではないでしょうか」
https://www.dailyshincho.jp/
ニセ医学グッズの広告塔になりかねない芸能界の方でさえ非常に冷静に受け止めている「妊娠しやすくなる妊娠菌」、普通はあてにしないんじゃないのかなあ?
非常にサービス精神溢れる詐欺師兼ニセ医学信奉者が、逆に健康被害を招きかねないヘンテコな雑菌でも混ぜている可能性の方が心配になってきてしまいました。
健康情報雑誌の中の広告で金運グッズとともに「赤富士」の絵が販売されていたことを思い出し「妊娠菌を信じるより、赤富士を拝んでいた方がまし」と某所で発言したところ「メルカリで赤富士の絵って既に販売されていますよ」との返答をいただいて黙り込んでしまった私です。
そのうち「妊娠しやすい妊娠酵素」なんてものでも現れるのでしょうか?
ニセ医学の一分野で「酵素栄養学」なるものがあります。これの信者さんって医療関係者にも多数見受けられる悲し状況が今の日本の医療レベルです。
今回の妊娠しやすい菌はさすがにあっち方面に行っちゃった系の医師以外は恥ずかしくて患者さんに推奨することはないと思います(最低最低限の医師のモラルさえあれば)。そのうち「この酵素を服用すれば妊娠しやすくなりますよ」と謳った商品が医師の写真とともにネット上に現れるのもそれほど遠くはないかもしれません。
詐欺関連グッズは次から次と姿形を変えて、工夫に工夫を加えた手法で忍び寄ってきます。
ニセ医学関連商品は詐欺と非常に相性がいいということを頭の片隅でいいので記憶しておいてくださいませ。
注意:文書中で「詐欺」という法律用語を使用しています。今回のメルカリの件は詐欺に当たらないと法律の専門家はおっしゃるかもしれません。しかし、一般人はこのような件を詐欺と解釈します。