DeNAが運営していた医療情報サイト「WELQ」の問題は記憶に新しいところです。現時点でも医療情報ページを増産しているサイトで「ヘルスケア大学」というのがあります。いくつかの病名や症状で検索すると上位表示されるので、目にしたことがある方も多いのではないでしょうか?
後述しますが、このヘルスケア大学及び兄弟サイトのスキンケア大学の方針に甚だ疑問点を抱いている私ですが
ヘルスケア大学の「口内炎の原因と治し方・治療法」という記事が気になって仕方がなりません!
本記事の内容
医療情報サイトであるヘルスケアの記事に違和感を⋯
どんなところが気になるのか、順をおって説明するとともにヘルスケア大学のヘンテコな点も述べさせていただきます。
そもそも口内炎の定義が間違っているんじゃないの?
ヘルスケア大学の「口内炎の原因と治し方・治療法」(http://www.skincare-univ.com/article/003754/)では口内炎をこのように定義しています。
口腔内に白い膜状なものが発生し周りが赤く炎症を起こして痛みを伴うものを口内炎と言い、食事の時や歯磨きをする時など、患部に刺激を与えるとさらに強い痛みになります。
これって口内炎の中の一症状だけなんじゃないの?
例えば病気などで極端に免疫力の落ちだ場合に罹ってしまう「カンジダ性口内炎」はほとんど痛みはありません。白い膜状って書かれていますが、カンジダ性口内炎の特徴も白い苔のようなものが、口腔内に広がります。もちろん周りは赤くなりますが、ヘルスケア大学の口内炎の記事はカンジダ性口内炎だけに特化したものではないことが、記事から読み取れます。
ヘルスケア大学は口内炎 = 白い膜+周囲が赤い+痛い、と定義しているんでしょうか?
ざっくり口内炎といってもこんなに種類があります。
・アフタ性口内炎
・カンジダ性口内炎
・ウイルス性口内炎
・アレルギー性口内炎
・カタル性口内炎
・ニコチン性口内炎
・潰瘍性口内炎
などなど、口内炎の種類は専門家によって分類されるとまだまだあるはずです。一般診療で見かけて対応できるものと、大きな病気の一症状であり専門病院の受診が必要なもの、あるいは自宅で数日間様子を見ても大丈夫な口内炎もあり、ヘルスケア大学の記事にある狭義の口内炎の定義に始まり、多数の口内炎の原因を述べ、それへの対処法を書いちゃうことは読む方へとって役に立つ有意義なもになっているとは思えません。
ヘルスケア大学によると口内炎の治療はったった2種類⁉
ヘルスケア大学では口内炎を種類と症状によって3つに分類しています。
http://www.skincare-univ.com/article/003754/より
口内炎の治療方法としては「生活習慣の改善」「細菌の増殖を防ぐ」というたった2つのことしか記載されていませんぞ(笑)
壊疽性口内炎といったら、歯肉炎(これも口内炎に分類されます)の中でも予後が悪いことで知られています。
生活環境絶悪な開発途上国や重症感染症などが原因で、極端に全身状態が悪い場合に見られる疾患であり、通常健常者が罹る病気でありません。内戦や干ばつで衛生状態も栄養も最悪の状況に置かれている壊疽性口内炎の患者さんに「生活習慣を見直しましょうね、特にストレスを溜め込まないように」なんて言っちゃうのでしょうかねえ、スキンケア大学さんは。
また口内炎の対処法として細菌の増殖を防ぎましょう、と書かれていますが、ウイルス性口内炎もありますし、カタル性口内炎の原因は入れ歯の調子が悪く口腔粘膜に当たってしまう、歯磨き時に口腔粘膜を傷つけた、刺激性の薬品を口にしてしまったなどですから、しっかり歯磨きして細菌の増殖を防ぎましょう、とおっしゃるヘルスケア大学さんは何を考えているんでしょうか、謎は深まるばかりです。
気になる医師監修で責任逃れしているようにさえ見えるヘルスケア大学
ヘルスケア大学の兄弟サイトであるスキンケア大学はヘンテコなビジネスモデルを行なっていたことを以前ブログにしました。
スキンケア大学、ホメオパシー化粧品を認定して大丈夫でしょうか??
さらにヘルスケア大学本体でも水素水を推奨するかのような記事があり、これもブログに書きました。
皮膚呼吸で体内に水素が浸透する「水素風呂」、なんだか怪しげだぞ❗
さすがにスキンケア大学さんもまずいと思ったのか、現時点で化粧品部門でのスキンケアマークを認定されている商品は0になっています。しかし、水素風呂の方が依然と掲載されています⋯監修者が変わったような、さらに「水素水」に対するコンテンツ編集ポリシーってのが加筆されていますけど。
今回の口内炎の記事でも原因として「ラウリル硫酸ナトリウム」入りの歯磨き粉が挙げられていますが、これってある一定方向の考えに取り憑かれたトンデモさんが振りまいているネタであることを付け加えておきます。
別に専門の医師でなくても、医学的知識があれば専門外の疾患について監修はできます(恥ずかしながらスキンケア大学黎明期に私も協力したことがあり)。今回の口内炎を監修された医師も口腔外科の専門家ではありませんが、正しい医学知識を多くの人に知ってもらいたいという気持ちで書かれたと忖度します。しかし、実際にネットで疾患について調べる人の多くは今そこにある危機に対応するため、あるいは家族・知り合いが病気になったので少しでも自分ができることはないか、と思って検索するはずです。
こんな記事が上位表示されている限り、ネットによる医学情報ってあてにならないと思われて、医学情報サイトは自分で自分の首を締めることになりかねないと危惧している次第です。