物忘れを改善する生薬「オンジ」、これが認知症に効果あり❗って本当??

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物忘れを改善する漢方薬に認知症にも効果あるとのことなんですけど本当でしょうか?まず、認知症による物忘れと、加齢による物忘れはまったくの別物です。年を取れば誰でも物忘れはします。記憶を再生・取り出す能力は年齢とともに衰えていくので仕方のないことです。認知症は、新たに記憶することが出来ない(昔のことは覚えている)ので、物忘れとは全然違います。今回は物忘れを改善するという漢方薬の効能について掘り下げていきます。

中高年の物忘れを改善する漢方薬「オンジ」

日経MJに漢方薬であるオンジが物忘れを改善するから認知症にも効果ありと読み取れる記事が掲載されていました。

中高年の物忘れを改善する薬

2017年4月9日月曜日の日経MJ

決して漢方薬だから疑うわけじゃありません。個人的に愛するマクドナルドを一時期かなり批判していた日経MJに掲載されているから疑ったわけじゃありません。クラシエは元カネボウだったので、例の白斑事件を起こした美白化粧品「ロドデノール」のカネボウ化粧品(今は全くの別グループの会社)を思い出したから疑っているわけでもありません。

物忘れを改善する薬だから認知症にも効果があるのか?

この記事中に「物忘れは認知症に繋がる可能性もあり、中高年層の関心は高い」とありますが物忘れが認知症の原因、物忘れを改善すると認知症になりにくいっていう意味ですよね、この書き方。

でも、物忘れは認知症の症状の一つであるんで原因と結果が逆のような気がしませんか?それに認知症といってもアルツハイマー型認知症、脳血管型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などなど複数があり、認知症治療薬として有名なアリセプトだってアルツハイマー型とレビー小体型の症状の進行を抑える効果しかありません。

一方、日経MJの書き方だと

物忘れを改善 → 物忘れは認知症につながる可能性 → 将来認知症

このようになることを心配している中高年を購買層と想定してオンジが発売 って流れです。医学的には「物忘れ = 認知症」ではありません。

脳の老化現象の一つとして正常範囲の物忘れと認知症による物忘れにはかなりの違いがあります

例えば昨日の夕食のメニューを思い出せないのは老化による物忘れ、一方認知症の場合は夕食を食べたこと自体を忘れちゃう。また物忘れをした自覚があるのが老化による物忘れであり、自分が物忘れをしたことを自覚していないのが認知症です。日経MJが書いているように、物忘れが認知症につながる可能性があるんじゃなくて、物忘れは認知症の症状の一つであるだけなんじゃないのかな?

ツムラのオンジには効果として物忘れ改善は記載されていないぞ❗

今回話題にしているクラシエの物忘れを改善する漢方薬「オンジ」って私たち医師が保険診療で処方する薬ではありません。OTCとして販売されるものです。本当に認知症に効果があるのであればなぜ保険対象薬になっていないのでしょうか?漢方最大手であるツムラでも「オンジ」は扱っています。クラシエのオンジは保険対象外ですが、ツムラのオンジは保険診療として使用されることができます(調べて初めて知ったけど)。

しかしツムラのオンジの主な効果は去痰なのです❗物忘れ改善なんて書かれていません❗という大発見?をしてしまいました。オンジというのはイトヒメハギという植物の成分であり、去痰作用があることから漢方薬の帰脾湯、加味帰脾湯などの中の有効成分として利用されてきました。

なんで去痰作用があるオンジが物忘れを改善するのか?多分、これが元ネタなんじゃないか⋯。

オンジは脳神経系にも作用を発揮する?だから物忘れに効果的?

こんな論文を見つけました。「BT-11 is effective for enhancing cognitive functions in the elderly humans」(http://doi.org/10.1016/j.neulet.2009.08.033)。BT-11は高齢者の認知力を高めることに有効である、との研究です。このBT-11は「Polygala tenuifolia 」から抽出された成分であり、Polygala tenuifoliaってイトメヒメハギの英訳です。

オンジはイトメヒメハギの根が原料ですから、オンジに含まれるBT-11が高齢者の物忘れ等を改善する可能性はあるようです。まあ、すでにこんな感じで、オンジが認知症に有効って書いてしまっているサイトもありましたが(苦笑)。

大杉製薬 生薬案内-オンジ

大杉製薬 生薬案内-オンジ より

ひょっとすると漢方薬方面では以前からというか伝統的にオンジは認知症に有効であることを経験的に知っていたのかもしれません。

クラシエのオンジに関する情報は危なっかしいぞ❗

オンジに含まれるBT-11が記憶になにがしかの影響があることに関する医学論文は数本あります。しかし、現在の医学で呼ぶところの「認知症」の改善を明らかにしていると認識される医学論文とは言えず、オンジの物忘れ改善効果もまだまだ追試や考察が必要だと感じられます。クラシエのオンジはニュースリリースとしてネットにあるのですが⋯

中年期以降の物忘れを改善する 「オンジ」新発売!

https://www.kracie.co.jp/release/10133876_3833.html

オンジが昔から心を落ち着ける作用があり、物忘れや不眠に使用されてきたことが書かれています。

物忘れから認知症に移行する可能性もあるため、物忘れが気になったら、早めに対処することが大切です。

“中年期以降の物忘れ”を改善する 「オンジ」新発売!

とも書かれていますが、大丈夫でしょうか?物忘れが認知症に移行したとしても、その物忘れを改善させれば認知症に移行しないのでしょうか?なんとはなしに、誇大表現あるいは消費者に誤認を与える表現と感じたのは私だけ???

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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