アルコールを大量に飲める人、あるいは少量のアルコールでも顔が真っ赤になって気持ち悪くなる人がいます。アルコールハラスメントが認知されることによって、無理やり飲みたく無い酒を飲まされることは少なくなっているはずです。
お酒を飲んで顔が赤くなるということは⋯
「酒は飲んで強くなるんだ」「吐くほど飲んで鍛えなきゃ」なんて言われていた時代もありましたが、アルコールに対する耐性は体質というより遺伝子で決まっています。その遺伝子を検討したところ、ALDH2(アルデヒド脱水素酵素2)の活性が低いとインスリンの分泌も悪くなり糖尿病になりやすい、との研究結果があります。先日、糖尿病の人は芋焼酎がいいのでは無いか、との話題をブログで検討しました。
今回はお酒を飲んで顔が赤くなる人は糖尿病になりやすい、という話ですが糖尿病の方も参考にしてくださいませ。
遺伝子で決まるアルコールへの耐性
飲酒量の増加が糖尿病リスクになっていることを発表したのは東海大学八王子病院健康管理センター長の高橋英孝さんです。この発表は本年1月の第51回日本成人病(生活習慣病)学会で行われました(https://medical-tribune.co.jp/news/2017/0127506285/ これはログインしないと見られないかも)。
人間ドックの時にアルコール体質検査をオプションとして設定している東海大学八王子病院健康管理センターにおける976人を対象とした研究です。アルコール体質検査は口腔内粘膜の一部を綿棒で採って、アルコールの代謝に関連する遺伝子を調べAからEまでの5段階評価をするものです。
https://www.nsd.co.jp/package/checktype.htmlより
お酒に強い、弱いはアルコール脱水素酵素(ADH1B)とアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の活性の違いによるものであるのです。ALDH1B1がインスリンの分泌と関連があることは以前から示されていましたが、今回はALDH2の活性とインスリンの分泌の関係を調べています。
その結果、ALDH2の活性の低い人の場合、飲酒量が増えれば増えるほどインスリンの分泌が低くなることがわかりました。
日本人の4割はアルコールに弱いという事実
海外ででっかいオッサンとすれ違った時に異常なアルコール臭を感じたことってありませんか?めっちゃ大量に飲酒しているのに顔は全く赤くなっていないオッサンって日本人は少ないことは経験値からご存知だと思います。アルコールを分解して酢酸に変えるアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)は人種によってかなり違いがあります。
キリンのサイトより
この表からわかるように日本人の4割はお酒を飲めない体質とも言えるわけです。アルデヒド脱水素酵素は遺伝子で決まりますから、飲めば飲むほどお酒に強くなる、これは明らかに間違いなんです。でも自分は年々お酒に強くなっているぞ、という人の体内ではアルコール代謝に関する酵素以外に薬物を代謝する酵素まで動員しています。つまり、アルコールを嗜好品というより薬物と認識しているわけです。
適量の酒は健康に良いはウソ、という話もあります
「酒は百薬の長」なんて昔から言われていますが、本当でしょうか?アルコール代謝に関する酵素が個人個人で違っていることを考えると適度のお酒の量の定義自体があやふやになってしまうことになります。喫煙が体に悪いことは誰でも知っていますが、お酒はどちらかというと大目に見られる傾向があります。
しかし、現在では飲酒と肝臓がん、大腸がん、食道がんのリスクに強い関連が明らかになっていますし、生活習慣病との関連も示唆されています。「酒は百薬の長」は実はバイアスがかかった考え方であり、因果関係が逆の可能性もあります。
- お酒を飲んでいるから健康⋯間違い
- 健康だからお酒が飲める⋯正解
こんなことを考えながら、少量のアルコールで顔が赤くなる私は今夜のビールをいそいそとコンビニに買いにいってしまうのでした。