毎年お正月になると、お餅を喉に詰まらせて亡くなる事故が報道されます。昔はお餅ってお正月限定感があったのですが、今では年中お餅がスーパーなどで売られています。
しかし、やっぱり日本人にとって雑煮にお餅をお正月に食べることは慣習となっているようです。
本記事の内容
もちがのどに詰まるのは有名だけど、腸閉塞も起こるんだよ❗
救急搬送される方はこんな感じの傾向になっています。
これはお餅だけじゃなくて、大福や団子も含まれていますが、圧倒的に年末年始、特に1月が多いことから「お餅による窒息」が飛び抜けて多いと判断して良いと考えます。
お年寄りがお雑煮を食べるときは、なるべく小さく切って、丸呑みしないようにする注意が必要です。そのお餅ですが、実は窒息だけじゃなくて腸閉塞の原因になるってご存知でしたか?安全無事に飲み込めたとしても、腸で悪さをしてしまうお餅についてちょっと語らせていただきます。
お餅で腸閉塞(イレウス)が起きた症例
うまく食道を通過したお餅ですが、今度は腸に引っかかってしまい腸閉塞(イレウス)になってしまうことが医学論文として発表されています。「Rice cake ileus–a rare and ethnic but important disease status in east-southern Asia.」(Intern Med. 2011;50 (22) :2737-9.)。お餅自体は東南アジアでよく食べられるものですが、この論文は日本の研究者によって日本で起きた「お餅による腸閉塞」の14例を取り上げています。
この論文はお正月に限ったものではないので、全部が全部お雑煮ってワケじゃありません。しかし、57.1パーセントは一月に担ぎ込まれた症例ですから、東南アジア地域に置ける日本の特殊な事情、つまりお雑煮方面が原因とした「Rice cake ileus」と判断していいかと思われます。
この画像からお餅が腸に詰まっている状況がわかります。実はこの症例の方々はお餅をよく噛まないで飲み込んじゃった、と申告しています。食べたお餅の数は2個と3個が共に4例で、中には5個というお餅好きな方もいらっしゃいました。
お餅が喉につかえて窒息、残念な結果として亡くなる方がいらっしゃいますが、この「お餅による腸閉塞」の場合は、この論文に限っていえば外科的な治療を必要としないで、全員が回復しています。症状としては腹痛・悪心・嘔吐が主となっていますので、お正月中にお雑煮を食べてお年寄りが「お腹が痛い」と言ったら「食べ過ぎなんじゃない」と安易に考えない方がよろしいようです。しかし、単なる食べ過ぎだで救急車を要請するのも、考えもの。お餅を食べるなら、丸呑みしないでよく噛んで食べれば、少なくとも「Rice cake ileus」のリスクは回避できることをこの論文は明らかにしています。
喉のお餅が詰まった場合の応急処置⋯ネット上の情報を鵜呑みにするのはちょっとリスキー
正しい応急手当てはこのように消防庁は言っております。
有名な「ハイムリック法」(腹部突き上げ法)は実践するにはかなりのコツが必要です。半可通の方はハイムリック法を試すように健康情報サイトなどに投稿していますが、胃の内容物まで逆流して誤嚥性肺炎を起こす可能性も否定できません。また、小さな子供にハイムリック法を施すテクニックは一般の方はお持ちではないはずです。消防庁の背部叩打法が第一選択の応急手当てと考えます。
中には掃除機で吸い出す方法やお正月でも家庭に常備されている「長ネギ」で押し込む、なんてことも書かれています。背部叩打法を試みて効果がない場合はアリなのかもしれませんが、その前に救急車をまずは呼びましょうね。
そういえばハイムリック法を考案した研究者というよりは、臨床医としてご活躍したHenry Heimlichさん、先日亡くなりましたね。ウィキによればハイムリック法で少なくとも10万人の方の命を救ったとのことです、ご冥福をお祈りいたします。
窒息しにくいお餅もあるようです
青森県立保健大学の藤田修三教授が「もち小麦」を原料としたもちもち感は残しながら、ツルツルの食感である喉に詰まりにくいお餅を開発しています (青森県立保健大学(http://www.auhw.ac.jp/nutrition/www/news121023.html)サイトより)。NHKの報道によれば「すいとん」として老人施設で提供されています(藤田教授の論文を教えていただいた青森県立保健大学の地域連携推進課の方に感謝いたしております。なお、藤田教授は現在は梅花女子大学に赴任されているとのことです)。
すいとんのお団子?とお餅って違うような気がしないでもありませんけど、高齢者がいるご家庭で「お正月は縁起物としてお雑煮ね」と言いつつ、もち小麦を使用したお雑煮って選択肢もありかもしれませんね。