なんと美容室で毛髪を使って「免疫力チェック❗」だそうです。免疫力を毛髪をどのような検査方法を使用して判定するのでしょうか?
以前にも増して本年2020年は免疫力という言葉が乱れ飛んでいます。免疫は複雑なシステムから成り立っている機能であり、免疫力という乱暴な一言で片付けられるようなものではありません。
美容室で免疫力の検査が行われていても、その検査結果の信頼性はかなり怪しいと判断できます。以前も美容室で擬似医療行為が行われて問題になりました。毛髪検査自体の怪しさとなぜ美容室は疑似医療行為に対するハードルが低くなってしまうのかを検証してみます。
本記事の内容
美容室で毛髪検査で免疫力判定が人気だとのことですけど⋯。
驚きました。毛髪検査によって、「免疫力」をチェックするサービスが美容室で人気なんだそうです。
確かに分子栄養学あるいは分子矯正栄養学と呼ばれる標準ではない医学(トンデモ、またはニセとも呼ばれる)を取り入れたクリニックでは、毛髪検査によって身体のバランス(なんじゃこりゃ)や免疫力を測定すると称しているようです。
あさチャンが取り上げた美容室がトンデモ系のクリニックと提携しているのか気にはなるのですが、なんで運転中に聴こえてきた話なので深追いはしません。
そもそも毛髪検査で免疫力なんかわかるわけ無いじゃん❗
が私が強く主張したいポイントです。
インタビューされた人が「セレンが足りないって診断でした」的は発言をしていましたし、「水銀が少し多め」などとも話していました。そもそもヒトにそなわった免疫は複雑なシステムであり、何かを検査するだけで免疫機能を把握することは不可能であり、たかだかセレンが不足してるだけで免疫力が低下している、なんて判定はできませんし、水銀が少し多めといっても、本当に毛髪中から検出されたのかも疑問です。
そもそもセレンってヘンテコな危なっかしいサプリメントに混入したりすると健康被害が出てしまう可能性があります。セレンが不足することは日本ではまず考えられません。水銀の場合、体内に蓄積すれば大きな健康被害となる可能性があるので、ニコニコしながら「少し多め」なんて言っている暇があったら速攻で東京都在住なら福祉保健局に相談するべきですね。
注意:日本では水俣病といいうメチル水銀中毒による神経系の障害が1956年に発生しました。いまも苦しんでいる患者さんが多くいます。病状のつらさや家族を失った方の気持ちを考えると、二度と起こしてはいけない経済成長のさなかに企業が起こした大問題です。
毛髪検査が限りなく怪しくインチキくさい理由
大量の重金属を摂取した場合や法的に禁じられている薬物を使用したときに毛髪検査をする意味はありますし、重金属や禁じられた薬物やその代謝物が毛髪から検出されることは間違いありません。
しかし、通常の生活を送り禁制品を日常使いしていない人たちにとって毛髪検査は必要なんでしょうか?なんらかの病気でかかりつけ医を受診したら、「じゃあ、毛髪検査で調べましょうね」って言われたことありますかあ⁉?
例えばこのような記事があります。「Commercial Hair Analysis: A Cardinal Sign of Quackery」⋯直訳すれば「商業的な毛髪検査はインチキ」ってことです。このサイトはニセ医学による詐欺的行為を遡上に載せていて、私も時々このサイトを利用させてもらっています。
このサイトは毛髪検査で体内の重金属汚染物質が病気の原因であるとの主張は間違いである、と断定しています。
医師であるなら間違いなく権威ある医学専門誌と認識している「Lancet(ランセット)」にこのような論文が掲載されています。
「How reliable are commercial allergy tests?」(PMID: 2879187)では、実際に魚アレルギーのある人と魚アレルギーの無い人のサンプルを毛髪検査を行っている5つの施設に送付しましてその結果を論文にしています。結果的にはアレルギーの無い人をアレルギーがあると診断されることがある上に、そもそもの魚アレルギーということさえ診断できなかったのです。
つまり、毛髪検査はアレルギー検査に役立たないよ❗ってことですね。
アレルギーは毛髪検査では診断できなくても、ひょっとしたら免疫力は診断できるかも、との考えられますが⋯免疫力って言っている人は免疫のことを理解していない人がほとんどであると、真っ当な医師の間では言われています。
免疫力という用語がなぜヘンテコであるかは峰宗太郎先生の「免疫力」という言葉が不適切な理由…「トンデモ」健康情報に踊らされないために(https://news.yahoo.co.jp/byline/minesotaro/20200707-00186949/)をよーく読んでくださいね。
以前も美容室でがん検診騒動がありました
実は以前もがん検査が美容室で行われていたのです。
この記事を書いたときは、いまはHIROTSUバイオサイエンスの創業者となっている広津先生から大慌てでご連絡をいただきました。
「美容室で勝手に自分の研究が営利目的に使われているんです❗」との悲痛な叫びだったと記憶してます。当時、広津先生は大学の研究室所属であったために、ご自分の研究が知りもしない会社に利用されいることを線虫検査の将来を見据えてご心配されていたのです。
線虫をつかってがんを早期発見する検査方法はいくつか問題点はあっても、「がんである、がんの可能性がある」と検査によって診断することが可能です。ここで注意が必要になります。「診断する」という行為は医師以外には認められていません。看護師であろうと検査技師であろうと薬剤師であろうと診断することは医師法等に抵触します。
線虫をつかって特定の場所のがん発見が可能になれば、それはそれで良いことだと考えています。
美容室がニセ医学にハマる原因は身体に刃物を向けても罰せられないからか⋯。
そもそも、外科の発祥は床屋さんだと言われていますので、他人に刃物を向けて人体の一部を切ることが許されている職業は医師と美容師と理容師だけです。だから美容師さんを管理する役所は医師と同じく保健所なんです。私は美容室は苦手で床屋さん派なのですが、なぜ美容室が苦手かというと会話が面倒だからという単純な理由です。
美容師さんとしては接客サービスの一部としてお客さんと会話をするのでしょうけど(それ以外にも顧客の好みとかライフスタイルを把握する意味もあるとは思います)、なんといっても話題として一番なのが健康問題なんじゃないでしょうか?
健康問題はネットでも一番検索されるワードであることが知られていますので、ネット上にも玉石混交な情報が盛りだくさん、まあ、多くの場合は「石」なんですけどね。美容室でカットした毛髪で簡単に健康チェックができるとなると、それはそれは希望者は殺到すると思います。
しかーし、頭髪は染めたり脱色したりパーマを掛けたり、いろいろな頭髪ケア製品が付着しています。もしも、毛髪で重金属などが蓄積されていないかを調べるのであれば、陰毛を使うべきだと思います。残留重金属が見つかったら、多分言われるんでしょうね、「デトックスしましょう!」って。
デトックスもニセ医学界隈で常用されている医学用語風のニセ医学御用達ワードである点にもご注意くださいね。