障害児を持つ母親教室のNPO理事長、こんないい加減なニセ医学を広めてはダメだよ❗

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お子さんの問題、特に健康問題の原因を母親に求める嫌な風潮がありますので、先日ブログにしました。このブログを読んだ方から、さらにニセ医学臭プンプンの記事を教えていただきました。

発達障害児の親向けのカウンセリングを行っている理事長の記事がかなり変です。

問題のタイトルは

脳の60%は油でできているという事実をご存知でしたか?

ご存知ありませんでしたww

脳って脂質が多く含まれているのは、ご存知でしたけど。脂と油の違いをご理解していない素人さんの記事にケチをつけるのはいけないことです。

でもこの方はNPO法人の理事長をなさっていて、

長年自閉症スペクトラム・知的・発達障がい・ADHD・アスペルガー障がい・ダウン症・染色体異常などの子どもたちの症状改善、教育に携わってきました。

と、理事長挨拶で述べていますので、素人さんではないはずです(http://npococorowa.org/ より)。

私がブログでニセ医学と批判する対象は医療関係者、あるいはニセ医学・疑似科学をご商売としている方に限る自己ルールを設けています。理事長さんはプロであると判断して「子ある日和編集部 2016年2月15日 専門家コラム 脳の60%は油でできている⁉普段使っている油。脳にとって良い油ですか? (http://koarubiyori.jp/column/11427)」どこがニセ医学であり、疑似科学であるかを検証します。

オメガ3が認知症に効果がある⋯発達障害児にも効果ある???

理事長さんは油で子供の頭の良い、悪いが決まると述べています。発達障害児を援助しながら障がい児を「頭の悪い人」と考えて接しているんでしょうか、この方は。

脳内の神経細胞は食事からとった油が分解された物質=脂肪酸で作られた膜に包まれています」と書いた後に「オメガ3」がどれだけ脳に良い油であるかを強調しています。確かにオメガ3系PUFA(多価不飽和脂肪酸)は食物として体内に入り、脳の神経細胞膜における構成脂肪酸の役目を果たします。

オメガ3の中でもDHAは血管内の詰まりを改善する可能性が多くの研究機関で検証されています。でもね〜、成人では摂取量の上限は決められていますけど、

オメガ3の子供に対する安全な摂取量は確立されていなんですよ❗

さらにオメガ3の種類はα-リノレン酸(ALA)・エイコサペンタエン酸(EPA)・ドコサヘキサエン酸(DHA)があるんですけどねぇ。

DHAを大量に食べると過酸化作用によって有害な影響が出る可能性をフランスの食品安全庁は警告しています。「que proposée par le pétitionnaire, augmente les niveaux d’apports de DHA à des niveaux qui pourraient induire des risques pour la santé. 」 (http://www.afssa.fr/より)

フランス語なんで間違った解釈かもしれませんので、EPAやDHAなどのオメガ3が認知症の予防にならないとの有名な医学論文を付け足しておきます。「Neurology」という信頼度が高い医学専門誌に「ω-3 fatty acids and domain-specific cognitive aging: secondary analyses of data from WHISCA.」(Neurology. 2013 Oct 22;81 (17) :1484-91.)がそれです。結果的に「神経伝達速度」「言語の記憶能力」「言語知識」「作業の記憶」などの検査を行った結果

オメガ3に認知症発症予防効果なし

ということになっています。もちろんその後世界中の研究者がオメガ3等の脳神経に与える効果を検証していますが、理事長が薦める「頭をよくする効果」は現時点では確認されていません。

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前述論文より  オメガ3を服用しても有意差はありません。

理事長さんは妊娠時にも頭の良い子を作るためにオメガ3の摂取を薦めています。この論文はお読みでしょうか?「Maternal fish oil supplementation in pregnancy: a 12 year follow-up of a randomised controlled trial.」(Nutrients. 2015 Mar 20;7 (3) :2061-7. )。妊娠中にオメガ3を服用しても子供の頭脳に影響はなかった結果を報告していますけどね。

出ました❗自然界に存在しない、化学的に処理されたものは体に悪い、っておきまりのニセ医学

効果があるなしは別として無責任にオメガ3をオススメになる理事長さん。やっぱり言ってくれました❗

自然界に存在しない油であるトランス脂肪酸が、脳の細胞膜に入り込んでしまうと、細胞膜や細胞の働きを狂わせてしまいます」「トランス脂肪酸という油は、化学的に処理されたもので身体にとって有害な物質だということをママは常に意識しておくべき

確かに欧米ではトランス脂肪酸を過剰に摂取する傾向があるので、心血管系の病気の発症リスクとして使用が禁止あるいは制限されています。

理事長のトランス脂肪酸が「脳の信号が正常に機能しなくなって脳を混乱させてしまう」説はたぶん「Long-chain omega-3 fatty acids for indicated prevention of psychotic disorders: a randomized, placebo-controlled trial.」(Arch Gen Psychiatry. 2010 Feb;67 (2) :146-54.)を元ネタに拡大解釈したニセ医学をどこかで目にしての発言と考えられます。

この研究対象となった患者さんは「精神病」と診断された人であり、発達障害児を「精神病」と理事長さんは考えて日頃、母親や子どもに接してきたんでしょうか?

この理事長さんを私が批判している最大のポイントは「サプリメント」を販売に関わっている様子が利用者の声から読み取れるからなんです。サプリメントって自然界に存在しているんでしょうか?

続編です

母親を「鮭やマグロは有害物質を含有」で危機感を煽る能力開発・知能UP専門家はやっぱりトンデモさん❗』  2016年3月8日追記

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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