歳だからしかたない?「夜間頻尿」って何?治療しないとどうなるの?

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夜間におしっこに起きることを「歳のせいだから」と、考えている方も少なくないと思います。一方で、夜間頻尿をイメージさせる言葉で治療を促すサプリメントの広告も目立ちます。

そもそも「夜間頻尿」とはどのような状態を示すのでしょうか?夜間頻尿は歳のせいなのか、病気なのでしょうか?

夜間頻尿を放置しておくと、どのような結果を招くのでしょうか?

夜に一回でも、おしっこに起きれば夜間頻尿です!

たった一回でもおしっこに起きると、夜間頻尿(nocturia) と診断されます。「そんなの歳をとれば誰でも一回くらいはおしっこに起きる」と考えていても、泌尿器科の定義としては夜間頻尿です。

ここで注意をしなければならないのは、夜間頻尿とはおしっこに起きる前後は睡眠中であることが大前提です。簡単に表現すれば、睡眠を中断させてまでおしっこに起きる状態を「夜間頻尿」とお考えください。

健康的な睡眠が病気を防ぎ、逆に言えば不健康な睡眠は病気を発症させる、あるいは持病を悪化させることは広く知られています。

これだけでも、夜間頻尿が健康に対して悪い影響を及ぼすことが十分納得いくのではないでしょうか?

注意:「夜間頻尿」と「夜間排尿回数」は違うものです。夜間排尿回数はベットに入ってから、起床するまでの排尿回数であり、寝ようとベッドに入ってすぐに、トイレに行く回数は夜間頻尿の回数には含みません。

夜間頻尿の原因は多岐に渡り複雑です

以前、前立腺肥大症に関して、

患者さんの前で「前立腺肥大症」という言葉を使っていますが、泌尿器科医同士では前立腺肥大症との言葉はあまり使いません。

「前立腺肥大症って何?どのような症状があるの?放置したらどうなるの?」でお伝えしました。医師にとって病気の定義は重要であり、人体の構造や病態は複雑であるために、医師であっても用語の混乱は避けられません。しかし、患者さんに対してあまりにも複雑な定義をお伝えしても、理解してもらうことは難易度が高いために、今回は夜間頻尿という病態についてだけ説明をします。

夜間頻尿の原因としては、蓄尿に問題がある(おしっこを溜めることに問題がある)、排尿に問題がある(おしっこが上手く出せない)、夜間に必要以上におしっこが作られてしまう(多尿)、おしっこが漏れてしまう(失禁)、睡眠障害、心因性などが考えられます。

また、多飲も夜間頻尿の原因になります。特に夏場は熱中症・脱水を防ぐために、水分を多く摂りがちで、夜間頻尿を主訴として医療機関を受診する方も少なくはありません。

夜間頻尿を放置していると、寿命が短くなります

夜間におしっこに起きてしまうと、転倒や骨折のリスクが高まることは、誰でも予想できます。これは明らかに死亡リスクが高まることにも繋がりますよね。

例えば「The association of nocturia with incident falls in an elderly community-dwelling cohort」(PMID: 20456212)では、夜間頻尿だと転倒するリスクが1.28倍になり、転倒することは大腿骨頸部骨折や頭部の外傷の原因になることは容易に想像できます。

転倒は高齢者に対する死亡原因に対して70%も影響を与えることが、「Falls in the Elderly Secondary to Urinary Symptoms」(PMID: 27162509)で示唆されています。

また、夜間頻尿がある方は将来的に心疾患を起こす可能性まであることが、「Nocturia is associated with an increased risk of coronary heart disease and death」(PMID: 22233166)で伝えられています。

夜間頻尿は死亡リスクを高めてしまうことは、医学的には常識なのです。

夜間頻尿は死につながる病気であり、治療することが必要が結論です

夜間頻尿があるなら「歳のせい」と考えないで医療機関を受診してください。健康寿命を短くしてしまう骨折などの寝たきりの状態の原因になりかねないですし、直接死亡リスクを高めることもあり、将来の他の病気の原因にもなります。

多くの医学論文によって、サプリメントが夜間頻尿を改善させるかが検証されていますが、高いエビデンスレベルで効果を実証したものはありません。

歳だからとしかたない、と夜間頻尿を放置しないで、医療機関を受診することを強く推奨します。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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