植物由来を好む自然派と呼ばれる人たちが大喜びしそうなインフルエンザワクチンが開発されています。
自然派さんたちは、なぜかワクチン接種を忌避する傾向があります。そんな自然派をこじらせた方々も納得するインフルエンザワクチンは臨床試験を終えて近いうちに世界中で採用されるかもしれない、うれしいお知らせをお伝えしますね。
植物由来のインフルエンザワクチンとはどのようなものであるのか、権威ある医学専門誌「ランセット」に掲載された論文などのエビデンスも盛り込んでご紹介します。
本記事の内容
あの「ランセット」に植物由来のインフルエンザワクチンの論文が掲載されている
いやー、驚きました。権威ある医学専門誌の「ランセット」(The Lancet)にこのような論文が掲載されていました。
「Efficacy, immunogenicity, and safety of a plant-derived, quadrivalent, virus-like particle influenza vaccine in adults (18–64 years) and older adults (≥65 years) : two multicentre, randomised phase 3 trials」(https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736 (20) 32014-6/fulltext)
タイトルをざっくり翻訳すると「植物由来の4価インフルエンザワクチンの有効性と免疫原生と安全性の多施設無作為化第3相試験」というところです。つまり植物からインフルエンザワクチンが開発されていて、治験の最終段階である第3相試験が行われているのです。
自然派さんが歓喜しそうな植物由来のインフルエンザワクチンの実現が間近なのです❗
自然派の定義は不明ながら、動物由来の食べ物を忌避するヴィーガンさんにも朗報ですね(ヴィーガンがワクチン忌避とは限らないかもしれないけど)。
植物由来のインフルエンザワクチンとはどのようなモノであるのか、ランセットを読み砕きながら、なるべくわかりやすく説明しますね。
※私は自然派が悪いと一方的に考えているわけではありません。ただ、自然派を拗らせると全ての化学物質を忌避する傾向が強くなり、ワクチンさえも忌避する考えに陥ってしまう人が少なからずともいる点を問題視しているのです。
自然派を拗らせると、こんなことになっちゃいますので⋯
今までのインフルエンザワクチンは鶏卵を使用して作ります
現在世界中で使用されているインフルエンザワクチンは鶏卵を使用して作られています。だから、ワクチン接種時に卵アレルギーの有無を確認されるのです。
せっかくワクチンを接種しようと考えているのに、卵アレルギーがあるために医師にワクチン接種を控えるように伝えられた方もいます。
植物由来のインフルエンザワクチンの気になる植物に関する記述が見当たらないので、調べまくって見つけました(老眼ゆえ元論文に記載されていたのを見落とした可能性もあるけどね)。それがこれ→「Egg-Independent Influenza Vaccines and Vaccine Candidates」(PMID: 28718786)、と思ったけどどうも違います。なーんだ、元論文に「recombinant quadrivalent virus-like particle (QVLP) influenza vaccine 」て書いてあるじゃん。
色々と調べてみると、植物由来の植物とはタバコの系統である「Nicotiana benthamiana」で、遺伝子操作をしたバクテリアを感染することによって、インフルエンザウイルス類似の物質を作り出したようです。
治験の詳細はここにありました。
ちなみに植物由来のインフルエンザワクチンは自然派さんのために開発されたのではなく、卵アレルギーの方が安心してワクチン接種を受けられるようにすること、生産の時間短縮が目的です。
世界中のワクチンメーカーは別に自然派さんを気遣って、植物由来のインフルエンザワクチンを開発してるわけじゃないようです(当たり前かあ)。
植物由来のインフルエンザの効果はどうなの?
ランセットに掲載されていたのは、2017−2018年と2018−2019年の2回の季節性インフルエンザ流行シーズンに行われた大掛かりな治験(第3相)です。
18歳から64歳を対象としてQVLPワクチンとプラセボを接種するグループに分けた治験と65歳以上を対象にQVLPワクチンとQVLPワクチンを半分にしたワクチンを接種するグループに分けた治験が行われました。
18歳から64歳を対象とした治験では、ワクチンの効果の目標は70%(旧来のインフルエンザワクチンの有効率は60%前後)と高く設定していたため、残念ながら効果はイマイチと判断しせざるを得ないですね。
一方の65歳以上を対象とした治験では75歳以上では効果があったと判断されています(この辺り、私にはちょっと内容が難しくて⋯)
ワクチンの有効率についてはこちらをどうぞ。
ワクチンだとどうしても気になるのが、その副反応。18歳から64歳を対象した植物由来のインフルエンザの場合は重篤な有害事象は1.1%、プラセボのグループが1.0%ですからかなり少ないと思われます。65歳以上を対象した治験では0.1%以下という驚きの有害事象発生率でした。
植物由来のインフルエンザワクチンはいつから開始できるのか
インフルエンザワクチンは様々な方法で開発されて、高い効果はもちろんのこと、副反応は少なく、簡単に早く大量生産できるように工夫されています。
植物由来のインフルエンザワクチン、自然派さん等にとっては遺伝子操作した植物が原料である点に引っかかるかもしれませんが、将来的に研究が進むことによってた卵アレルギーがあるためにワクチンを接種したくてもできなかった人たちにとっては朗報になると良いですね。