「シボラナイトGOLD(ゴールド)」というダイエットサプリがあります。製品名は、絞らないとゴールド・・・これだけ見れば抜群のネーミングセンスを誇る小林製薬を彷彿とさせますが、正露丸を製造販売している明治薬品のサプリです。
正露丸というとラッパのマークでお馴染みのクレベリン大幸薬品から販売されているものが有名ですが、実は「普通名称化」が認められています。現在はクレベリン大幸薬品だけでなく複数の企業が「正露丸」と称する商品を販売しています。つまり、正露丸の会社って複数あるわけです。
「正露丸の会社」が作ったダイエットサプリとして宣伝しているシボラナイトGOLDは明治薬品が製造販売しているもので、私のネット上でウザい広告となりつつあります。
※明治薬品は、医療用医薬品として処方薬を製造販売している明治グループの薬品会社「Meiji Seika ファルマ」とは別会社です!
本記事の内容
シボラナイトの主成分であるアフリカマンゴ由来の「エラグ酸」とは
私がシボラナイトGOLDを初めて知ったのはこのネット広告でした。「体重を絞らないと」などで使用する「絞らないと」がネーミングの由来だと予想されます。
かなりぼやけていますが、スマホに残っていたスクショで失礼します。「朝バナナを一年続けた末路」とのキャッチコピーに魅了され踏んでしまったところ現れたのは「シボラナイトGOLD」の広告で、朝バナナに関しての記載は全く無いことに感動しましたぜ。
シボラナイトはエラグ酸の肥満に対する効果を点滅するグラフを使用して説明しています。エラグ酸ってあまり聞きなれない言葉なのでネットで検索してみると出てくるのはサプリばっかり。「Ellagic acid」で検索しても同じような結果なので、医学論文のデータベースであるPubMedで検索してみると、それなりに健康に良さそうな結論に至った論文がまあまあの数見つかりました。
いくつかの論文をピックアップして目を通したところ・・・エラグ酸がダイエットに効果的で肥満を解消することを明確にした、ヒトに対する研究は無いじゃん!!でした。エラグ酸の有害な重篤な副作用も無い代わりに、効果も無いとしか私は判断しざるを得ませんでした。
※そういえばエラグ酸って前立腺がんになんらかの影響があるとの論文を見た記憶があったけど、エラグ酸の作用機序を風が吹けば桶屋が儲かる的に無理くり理屈を捏ね回せばテストステロンに対してなんらかの良さそうな効果はありそうだけど、そうなるといきなり対象者は男性に限られてシボラナイトの市場は半分になってしまいますね。
効果を立証している、と豪語する論文を見てみましょう
数値でしっかりと効果が立証されています!とシボラナイトの広告には書かれています。
右下の方に「functional foods in heaith and disease 2020 10(4)180-194」とぼやけた文字列を見ることができます。シボラナイトの効果を立証(普通は実証じゃないの)したとされる論文は「Effect of ellagic acid on body fat and triglyceride reduction in healthy overweight volunteers: a randomized, double-blind, placebo-controlled parallel group study」であることがわかりました。ちなみにこの論文はなぜかPubMedに無いんだよなあ。
エラグ酸の肥満に対する効果を立証(笑)とする論文の中身はこんな感じです。
- 対象は20〜64歳の男性23人と女性9人
- 研究方法は無作為化二重盲検
- 観察期間は20週間
- プラセボあるいはエラグ酸を食前に服用してもらった
- 体重・BMI・体脂肪率・腹囲などを計測した
- 結論:12週間毎日3.0mgのエラグ酸を摂取すると体脂肪率・中性脂肪・体重・BMI・腹囲などが有意に減少した
ってことのようです。
統計学的に効果が実証されていてもユーザーが期待する効果とはかけ離れていることに注意を
詳細なデータをよくよく見てみると、
- 体重の変化はプラセボ群で76.16(+-1.49 )だったのが76.95(+-1.48)と変化していて、エラグ酸群では77.05(+-1.97)が75.99(+-1.86)
- 腹囲の変化はプラセボ群では95.45(+-1.16)だったのが97.22(+-1.44)、エラグ酸群では94.49(+-1.51)だったのが93.81(+-1.58)
12週間エラグ酸を摂取しても、体重でざっくり1kg程度、腹囲はざっくり多く見積もっても1cmくらいしか減少していないんだよなあ!!
統計学的に処理をした場合に有意差があっても、ダイエットに皆様が期待したような結果にはならないようですね。これくらいの変化なんて1日のうちでも十分に起こり得りますもんね!
この広告を広告主はどのように考えているんだろう???
市販薬や処方薬ではないサプリメント、科学的な裏付けがある程度なされている機能性表示食品、そして臨床試験・治験を経て許可を得て初めて表記できる特定健康用食品は薬と違って盛りだくさんのワードを使用することによって消費者の妄想を刺激する作りになっているのが一般的です。
さらに広告手法も製造販売する会社が責任を持って行うものから、ステマ的なものやアフィリエイトなどの多数あります。
さすがに近年はステマはあまり見かけなくなったような印象はありますが、アフィリエイトに関しては問題視されていて、広告主の責任を明確にすることを促す動きが見られます。
「アフィリエイト広告」広告主の責任を明確に 消費者庁検討会
医療機関の広告も以前はもしも表現に問題があった場合、「代理店に任せっぱなしだったから」との言い訳が通用していました。今では厚生労働省から厳しい指導を食らいます。これからは医療にしろサプリにしろ、製造販売したところが責任を持つべきことが強く問われるようになるんじゃないでしょうか?
おまけ:明治薬品・明治製薬・Meiji Seika ファルマという製薬会社がある一方で、セイロガン・正露丸・征露丸があってこれまたブログネタになりそうです。