「湯シャン」実践派の方へ⋯匂うんですけど?元ネタはニセ医学の経皮毒か?

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シャンプーを使わずにお湯だけで洗髪を続けると、健康的な髪と頭皮が手に入る、という「湯シャン」が一部で流行っているようです。

シャンプー前に、十分お湯だけですすぐことは大切(3分ほどやるだけで7割ほどの汚れが落ちると美容師さんは言いますよね)とはいえ、あくまでシャンプーを使う前提の話。シャンプーの容器の説明にも十分に濡らして・・と書いてあります。お湯だけで洗ったことになるのか?いえ、なりません。やめてほしいので、医師としてしっかり説明していきます。

シャンプーを使わないでお湯だけで髪を洗う「湯シャン」⋯経皮毒が影響か?

女性の間で髪の毛を洗う時にシャンプーを使わない「湯シャン」が話題になっているようです。なんでもシャンプーは薄毛やハゲの原因になるだけではなく、体全体に悪影響を及ぼす、なんて意見も出ています。でも湯シャンを行っているご自身が満足していても、周囲の人の迷惑になっている可能性もあります。

湯シャンだけで頭皮は匂わないのでしょうか?加齢臭とかミドル脂臭とか?

オッサンの場合、加齢臭に加えてミドル脂臭なんて言葉の登場により、実は女性より周囲の迷惑を気にして、ベロベロに酔っ払って帰っても髪と足だけは洗う人が多いのです(当院独自の調査による 対象人数5人www)。

加齢臭の次はミドル脂臭!オッサンの臭い対策はどうすればいい?

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スメハラに注意を、加齢臭って女性もあるんです❗

スメハラに注意を、加齢臭って女性もあるんです❗

野生の動物ってかなり臭いますよね、特に口臭。でも彼ら彼女たちは自分の体臭や口臭を臭いとは意識してません(動物に聞いたわけではないけどね)。常にある一定の臭いを嗅ぎ続けると、その臭いにいちいち脳が反応していると、脳も疲れちゃいますので「匂わなかった」と処理するようなシステムになっています。湯シャンを習慣としている方はこの現象に陥っている可能性もありますし、そもそも湯シャンんって効果的とおっしゃる方はご自分の頭皮を自分で嗅ぐことはできません。

歌川国貞 江戸名所百人美女-今川はし

歌川国貞『江戸名所百人美女 今川はし」一部抜粋 

湯シャンではないですね、水シャンかな。江戸時代は毎日は髪を洗っていたわけじゃ無いそうですが、やはりひと様の目を気にする女性は身だしなみとして洗髪をしていたのですね。フケや皮脂を洗い流して、臭いでご迷惑をお掛けしないようにするのでしょうし、自分でもそれなりに臭かったんだと思います。

湯シャンについて検討する上で、そもそも何でシャンプーを使ってはいけないのか、誰が湯シャンを普及させようとしているのか、その背後にうごめく「シャンプー害悪説」の壮大な陰謀を追求してみまーす

湯シャンがオススメなわけは⋯???経皮毒が気になるからなら速攻アウト❗

ネット上でこんな投稿を見かけました。

湯シャンプーやってる人いますか? 私は週一回だけシャンプーを使って、残り六日はお湯洗いだけで髪を洗ってます。 抜け毛も減り髪が太くなり、シャンプー代も減り良いことずくめです^^ お湯だけで髪の汚れは以外に落ちると驚きました。 騙されたと思って一度試してもらいたいです! 髪がべとつくのは最初だけで、湯シャンを続けていくと頭皮から出る皮脂が減り、健康な頭皮の状態になりますよー!

ガールズちゃんねる

湯シャン実践派のこの方は何を思ってこのような投稿をしたのか不明ですが、結果的にフルボッコ状態になってお気の毒さまです。「シャンプー代も減り」ってのはかなりセコイ感じがしてどんな職業の方なのか非常に気になります。あと「以外」じゃなく「意外」ですね。

シャンプーに含まれている界面活性剤を目の敵にしている一派が存在します、湯シャンもその一派か?

トンデモ系のニセ医学と認定されている「経皮毒」信奉者によって撒き散らされているガセネタです。自然派由来の石けんでさえ汚れが落ちる現象は界面活性剤のためですが、経皮毒一派は合成界面活性剤こそ「経皮毒」の原因と考えている様子です。

自然派じゃない化学物質 (?) は全部ダメ、との主張をする一派と親和性が高いようで、「化学物質は人体に害があるんですよ」との質問に「なんでも化学物質なんですけど」と回答すると化学物質否定派の方は「界面活性剤は有害化学物質で健康にとってダメな物質です」的回答が来る始末で、「あんたが勝手に有害って認定しているだけじゃん」的なことになって、不毛の論争になってしまいます。

シャンプーがなぜ体に悪いのか?経皮毒のせいだと考える方はニセ医学認定です。湯シャンもこの考え方から派生したのかもしれません。

都市伝説「経皮毒が原因で羊水からシャンプーの臭いがした」⋯ニセ医学です。

都市伝説「経皮毒が原因で羊水からシャンプーの臭いがした」⋯ニセ医学です。

これは人体の構造上ありえません

誰が湯シャンをすすめ出したか?有名人と自分を同じに考えてもねぇ

タモリさんが背中を洗わない・湯シャンを実践している、って話は広まりましたね。大物芸能人も湯シャン派といった記事もちょいちょい出てきます。また、「ハリウッドセレブでも湯シャンが流行」的なレベルの低い記事も見かけたことあります。

髪の毛の量が少ない場合は湯シャンででも良いのかもしれません

万が一匂ったとしてもタモリさんに「臭いですよ」とアドバイスできる人はテレビ業界でいないでしょうし。作家の五木寛之氏も風呂嫌いで、年に数回しか髪の毛を洗わない(シャンプーは使っている)とエッセイで書かれていたような記憶があります。

タモリさん、五木寛之さんは男性ですので、髪を洗わないとしても湯シャンであっても、誰もが知る有名人であり頭皮の臭いを上回るオーラのある方ですから有名人や高い立場にある方以外は湯シャンは避けたほうが無難と考えます。

そんなタモリさんを敬愛し「タモリ式入浴法」に習って体を洗わない入浴法を20年以上実践している自然派の窪塚洋介さんですら、シャンプーだけはするそうですよ(笑)

体を洗わない窪塚洋介さんですらシャンプーはする

https://www.dropbox.com/s/07fw5yz3o6aqevr/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202021-05-23%2014.03.39.png?dl=0

皮脂を取り除くのはお湯だけでは不可能なんじゃないの?湯シャン信奉者さん

油と脂の違いって、常温で液体か固体かで決まります。皮脂は字のごとく「脂」ですから、常温では「固体」です。皮脂の融解温度は42度付近とされています(確実な医学論文が見つかりませんので、見つけた方ご連絡ください 薄謝謹呈)。シャワーの温度としてはかなり高めです。多くの湯シャン推奨派の記事では「髪を傷めないためにぬるま湯で」と書かれています。これじゃあ、頭皮の皮脂は落ちないんじゃないの?

そこで界面活性剤の力が必要となります。自然派であろうとオーガニックであろうと石鹸・シャンプーは界面活性剤の力を利用して脂を除去します。一般的な合成界面活性剤(有害化学物質らしいのですけどw)が入っているシャンプーを極端に恐れている方もいます。これは健康被害を増やさないための啓蒙活動ではなく、一定方向の考えに導く信仰に限りなく近いものです。

もちろんそのような信仰の信者さんであるなら「湯シャン」をお続けください。あなたがどんなにシャンプーを使わなくなって髪の毛がふさふさでツヤツヤだと主張しても⋯あなたの頭、ニオいますよ❗

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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