現役医師に聞いた「患者には出すけど、医者が飲まないクスリ」ってウソだよね、冗談だよね⁉

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ある患者さんから週刊現代で読んだ話として「医者が自分では飲まないクスリを患者さんには出すんですか?」との質問を受けて週刊現代関連のサイトを検索しました。すると「現役医師20人に聞いた『患者には出すけど、医者が飲まないクスリ』糖尿病 高血圧 花粉症 インフルエンザ完全保存版一覧表」」が見つかりました。

オッサン向け「週刊現代」のどう見ても作り話的な「医者のコメント」

  1. 風邪薬で死にそうになった医師の話
  2. 痛風の薬で肝機能障害を起こして痛い目にあった医師の話
  3. 胃薬を飲んでも胃もたれは治らないと胃酸過多は治らないと語る医師の話

などの話を現役医師がしたことになっています。本当にこんな話を週刊現代の記者さんに話したんでしょうか?常識的な医学知識を持っていたら普通ならありえない話なんで、医師の話を面白おかしく記者さんがアレンジしたんですよね⁉

じゃないとこんな勉強不足の医師が日本で診療していることになってしまいます。なんで上記の3つの話はまともな医師ならありえないのか一つずつ説明していきます。

現役医師20人に聞いた「患者には出すけど、医者が飲まないクスリ」糖尿病_高血圧_花粉症_インフルエンザ完全保存版一覧表 ___賢者の知恵___現代ビジネス__講談社_

現代ビジネス http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42507

このサイトに現役医師が自分では避けている薬を患者さんには処方している、との驚きの事実が記載されています。

これらの記事の内容が本当に医師が言ったならかなり怖いです。

風邪薬のPLの一番有名な副作用は「眠気」なんですけど

風邪薬で死にそうになった医師の話は、研修医時代に風邪気味で「PL顆粒」を飲んで、車で帰宅途中に急激な眠気に襲われて危うく居眠り運転をしそうになったので「風邪薬で死にそうになった」という内容です。これって医師の常識としてありえません。

PL顆粒の鼻水を抑える作用は「プロメタジン」であり、抗ヒスタミン薬なんで眠気が来て当たり前

これを知らない医師は少なくとも見渡すかぎりいません。添付文書に副作用として起こる「眠気」は記載されています。さらに眠気を起こすことがあるので車の運転はさせないように十分に注意することまでご丁寧に書かれています。

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この医師って添付文書を読まないでPLを飲んだんでしょうか?そんなことないですよね、先生❗

痛風の薬の肝機能障害は緊急安全情報として報告されています

薬の説明書である添付文書に記載されていない危険な副作用が報告されると「緊急安全情報」、イエローレターが医療機関に送付されてきます。これを読むことは医師としてマストです。高尿酸血症を改善する「痛風を予防する薬」であるユリノームは平成12年2月にイエローレターで劇症肝炎の危険性が通告されています。

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この医師は2年ほど前から尿酸値が上昇していたのでベンズブロマロン(ユリノームの成分名)を飲みだして、肝機能の数字が劇的に悪化していた、とコメントしています。週刊現代の記事は2015年に書かれていますので、2000年に出されたイエローレターの情報を知らないワケがありません。

ひょっとしてこの医師は2000年時点で医師になっていないので、イエローレターを読んでいなかったのかもしれませんけど。でも、ユリノームの添付文書のトップに赤色で「警告」として劇症肝炎のこと明記されています。添付文書を読まないでいつも処方しているんでしょうか、この医師は?

ユリノーム錠50mg、ユリノーム錠25mg

先生、ひょっとして添付文書を読まないで薬飲んじゃったんですか?有りえないですよね、それに記事では「都内総合病院 内科医」と書かれています。処方するときに電子カルテ上に副作用に通常以上気をつける薬を記入すると「注意マーク」でますよね。

これも多分、記者さんのアレンジした記事であると同業者としては思いたいです (汗)。

胃もたれで胃酸の分泌を抑える薬を処方してはいけないと注意する医師⋯適応症じゃないです

胃もたれを主訴として医療機関を受診した場合に「エソメプラゾール」が処方されることが多く、これは日本人の胃もたれの原因の多くを占める胃酸分泌不全に対して逆効果だ、と医師が証言しています。これまた変な話なんです。

「エソメプラゾール」は商品名としては「ネキシウム」ですが、適応症は「胃潰瘍・十二指腸潰瘍・逆流性食道炎・Zollinger-Ellison症候群」などであり、「胃もたれ」に使ってはいけないことになっています。「胃もたれ」は「機能性ディスペプシア」という病名の症状として使われるのが医学では常識です。だって「胃もたれ」の症状は胃が重い、むかつきなどの胃の不快な症状全般に使われる言葉であり、胃酸過多の場合はどんな患者さんでも「胸焼け」とか「苦い水が上がってくる」と表現します。

胃もたれに対してプロトンポンプ阻害剤である「ネキシウム」を処方する医師なんているんでしょうか?

通常の診療を行っていたらありえない話ですよね、この医師はタミフルも飲みたくない、と述べています。確かにタミフルの副作用と考えられている「異常行動」(実際はインフルエンザに感染した症状と多くの医師は考えている)を考慮すれば、子供には処方を避ける傾向があります。でも医師であるから子供じゃないので、何を恐れて「飲みたくない」っておっしゃっているのか不思議です。

医師たちは絶対にこんな言い方したんじゃなくて、記者さんが大げさにアレンジしたんですよね❗

と信じたいです⋯じゃあないと、怖すぎるぞ、現役医師20人❗

テレビであれ、週刊誌であれ自分の言ったことの一部だけしかマスメディアは取り上げないで、誤解を招く記事に仕上がって後で非常に困った、と述べる医師は多数います。それを予防するためにはインタビューを受けたら録画、あるいは録音しよう❗ってなるんですが、それじゃまるで甘利大臣を退任に追い込んだ怪しげな人になってしまいます。

どうしよう、とある番組の取材を来週受ける私としては迷いに迷っています。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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