先日、葛根湯が花粉症にも効果がある、との話を検討しました。その時ネット上でかなり気になる情報を複数見かけました。それは
漢方薬は効果が穏やかなために妊婦さんでも安心して飲めると書かれている健康情報サイトです。さらに危険なことに
葛根湯は妊娠中でも風邪をひいた時に飲んでも安全といった間違った情報が妊娠中の方が読むであろうサイトで飛び交っています。
本記事の内容
妊婦さんが風邪をひいたとき「葛根湯は漢方なんで安心して服用できる」は間違った情報です
漢方薬だから副作用がなくて安全は完璧に間違いです。だって何らかの効果があるのなら、体に影響を及ぼしているわけですから悪いことも起こるはずです。
さらに困ったことに、無責任なのか逃げ道を作っているのか妊娠中に心配なら医師に相談して、葛根湯を処方してもらいなさいと書いているサイトもあります。
医療水準の高い日本では妊娠と正常な出産が当たり前と考えている方多く見られます。しかし、数十年前までは出産時がきっかけで亡くなってしまった母親も多かったのです。
厚生労働省 母子保健の現状より
現代でも障害を持って生まれてくる赤ちゃんは皆さんが考えているより多いのが現状です。障害の原因が明確な出産もありますが、原因不明なものも多数です。
前記厚生労働省 母子保健の現状 より
通常の生活を送っていても、つまりお母さんの生活習慣に問題がなくても、障害を持って生まれてくる赤ちゃんは一定数存在します。妊娠中に薬を飲んで、その薬自体に原因がなくても障害を持った子供が生まれたらお母さんは一生後悔するのではないでしょうか?
医学に絶対はありませんので「今妊娠しているんですけど、葛根湯飲んでいいですか?」との質問に対して「葛根湯は漢方だから妊娠していても安全ですよ」と言い切る医師は勉強不足です。
漢方だから安全という神話がある、気軽に手に入れることができる「葛根湯」、実は妊娠中には飲んではいけない成分が入っています。
葛根湯の成分には妊婦さんにとって安全ではない成分が入っている❗
医師の中でも漢方は安全、妊婦さんが風邪をひいたら葛根湯でも処方しておこう、と考えてる場合があります。漢方の考え方として「三禁」という基本的な理論があります。妊娠中は「発汗」「下痢」「多尿」になるような作用のある漢方薬は処方してはならない、という教えです。
葛根湯は妊娠中には避けるべき「三禁」の一つである「発汗」を促す「麻黄」が含まれています
ので、漢方を勉強した医師であればまず処方しません。
漢方って欧米ではあまり処方されませんので、安全性あるいは副作用の情報も一般の薬よりかなり少ないので「漢方=安全」との考え方は確立されていません。治験を行うにしても妊婦さんを対象にすることはリスキーであり、倫理的にもまず許されません。
ネットに妊婦さんで葛根湯は飲んで安全と書いている人の責任は?
妊娠中は体調を崩しがちですから、情報をウェブに頼る方も多いでしょう。妊娠中はナーバスにもなりますから、食の安全や薬の安全性、副作用情報を常日頃より収集すると考えます。そんな時「妊娠中 葛根湯」とか「妊婦 漢方薬」とかのキーワードで検索して現れる情報が間違いだったら⋯かなり怖い状況です。
医療に関するネット情報は多数ですが、誰が書いたのか?書いた人は専門家か?信頼できる人が管理しているサイトか?を確認することが重要になってきます。今の季節は風邪をひきやすいので妊婦さんでも当然風邪を罹患します。
ウェブ上で「葛根湯は漢方で効き目が穏やかなんで妊娠していても安全です」的な無責任な情報を得て、出産時に残念なことになった場合、ネットで情報を提供している人が責任取れるのでしょうか?
心配な場合は医師に相談を、って言われてもねぇ⋯。
医療方面のネット情報ってかなり無責任かつ逃げ道を残しているものが多数です。葛根湯は妊娠中に飲んでも安心って書かれたサイトでも「心配な場合は医師に相談してください」「市販の葛根湯が心配な妊娠中の方は医師の処方してもらうといいですよ」なんてことが書かれています。何回も言いますけど
漢方薬は治験を重ねて保険収載された薬ではありません
欧米では「Chinese herbal medicine」と呼ばれていて医師が処方することは稀であるために、信頼度の高い情報自体がほとんどないのです(一部の漢方薬はエビデンスが確立されています)。
妊婦さんに薬を処方するとき、医師は母体の安全性と胎児の安全性を秤にかけて薬を決めます。メチャ高熱で肺炎などの危険がある場合は母体の安全性を優先して、胎児にとってリスクのある処方する場合もあります。漢方薬は安全、風邪をひいたから葛根湯を飲もう、との考えはかなり危険なことであると多くの方に知ってもらいたいと考えています。
ちなみにヨクイニンというハトムギからつくられてイボに効果がある (シミにも効果があると主張している製薬会社もあります)とされる漢方薬は流産を招くと漢方医学では考えられています。せっかく妊娠したのにイボやシミをなくそうと安易にヨクイニンを服用すると残念なことになる可能性もありますのでご注意ください。