龍角散、小豆がウイルス対策に効果がある❗と言い切って大丈夫?

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新型コロナによる感染がいまだに世界中で拡散しています。これからインフルエンザが流行する季節になる日本では様々なウイルス対策がメディアで取り上げられています。

龍角散が日本の伝統食である小豆の抗ウイルス効果を実証した、と読み取れるネット広告を目にしました。

さらに小豆とお茶を同時に摂取すると、抗ウイルス効果が増強されるとのこと。しかし、この広告やメディアの報道を詳しく調べてみると、本当に人間に対して効果があるのかについては明確にはなっていない様子です。

早まるな、龍角散❗日本の伝統食品は本当にウイルスに効果があるの?

「ゴホンといえば龍角散」の龍角散が今の今の時期にこんな発表をしちゃいました。

(株) 龍角散は (株) AVSSと共同研究を行い、日本伝統の食品にウイルス抑制効果を確認しました。

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https://twitter.com/Newstv_jp/status/1318733747722743809より

厄介なウイルスによる感染症が世界中をパニック状態に陥れて半年以上が経過しました。さらに日本ではこれから冬を迎えるためにインフルエンザウイルス感染流行の予防対策もメディアを賑わせています。こんな時期にはちょっと、どうなんでしょうか⋯。

「日本の伝統食がウイルス対策に効果がある」は、かなり気になる情報ですから町医者である私としてはチェックしないわけにはいきません。龍角散が確認したと断言するウイルス対策に効果がある伝統食を確認したところ⋯なんじゃこりゃ❗と言う、予想通りの結果であったことをお伝えしますね。

おまけ:私のブログ恒例の「灯台下暗し」シリーズ第20弾くらいかな。結婚した当初、家人が母親に電話でお赤飯の作り方を聞いている時に「お義母さん、こまめってどこで売っていますか?」と話していたっけ笑。

小豆とお茶を一緒に摂取すると、ウイルスを抑え込める?

龍角散とAVSSが共同で研究した結果は

  • 小豆にはウイルスを抑える効果がある
  • 小豆とお茶を一緒に摂り入れると、ウイルス抑制効果がアップする

らしいです。(AVSSとは、感染症を研究している企業です。詳細は後述)

でもさあ、ウイルスを抑えこむ効果って臨床、つまり人体でその効果が証明されたわけじゃないよね〜。

AVSSのウェブサイトを見る限りでは、あくまで試験管レベルの実験で小豆がウイルス、詳細にいえばインフルエンザウイルスが複製することを抑制したことを確認しただけであり、お茶と小豆をどの様な状態で食べたり飲んだりすれば、ウイルスに対して相乗効果があったことが実証されたのか、さっぱり理解できません。

そそっかしいメディアが早々とウイルス対策として小豆を取り上げています

All About(オールアバウト)と言うウェブメディアがあります。私も過去に取材協力をしたことのある、当時はそれなりの信頼度のあったメディアです。All Aboutでは今回の龍角散とAVSSの研究結果をこんな感じで取り上げています。

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https://allabout.co.jp/product/105158/506329より

注意して見れば、「提供 龍角散」と明記されていますし、タイトルも「?」を付けて、断言しているわけじゃないよ的なエクスキュースは為されてはいるけど、

世の中は純情な情弱が多数存在している❗

ことを全く無視している様にも感じられます。

All About、AVSS共に

小豆の成分であるオリゴ糖誘導体に、有望な抗インフルエンザウイルス活性があることが立証されたのです。

と述べています。

この研究に関する引用文献は「Anti-Influenza a virus of a new oligosaccharide citric acid derivative isolated from Vigna angularis (ohwi et ohashi. var. Dainagon) Seeds」(これpubmedには無いなあ)の様ですが、アブストラクトを読む限りでは、オリゴ糖クエン酸誘導体が試験管内の実験によってインフルエンザAウイルスを抑えました、ってだけなんだよね。

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https://www.avss-research.com/より

この画像、普通の光学顕微鏡を使ったものですよねえ。ウイルスって電子顕微鏡を使わないと見えないくらい小さいんだけどなあ⋯。

どこをどうこねくり回せば、

今回の共同研究で、小豆の成分であるオリゴ糖誘導体に、有望な抗インフルエンザウイルス活性があると立証されました。

と断言できるのか、私には理解不能です(論文をフルで読むには51ドル掛かるのでパス)。

もう一つ引用文献として「 Antiviral Agent and Throat Candy, Gargle, and Mouthwash Using the Same」が明記されているのですけど、これって うがいをしたりお口をクチュクチュすれば抗ウイルス効果が期待できるかもね、って龍角散が伝えただけの話のような気がするのは私だけ?

論文が明記されているから信頼度が高い記事とは言えないよ❗

一次ソースが不明である医学関連記事は当然信頼度が低下します。そこで医学系の論文を医学関連記事に記載する風潮が目立ちます。本来ならば一次ソースを明確にした医学関連情報は第三者の検証に耐えうる記事になるはずなんですが⋯実際に一次ソースの論文に目を通す人はかなり少ないのでは無いかな。

今回の龍角散とAVSSが共同で研究して、ウイルス対策に役立つと発表している記事の詳細を知ることは、私の能力では不可能でした。

ところで龍角散とタッグを組んだAVSSとはどのような会社なのでしょうか?AVSSのウェブサイト(http://www.avss.jp/)には「私たちは、感染症を防ぐ知識と技術を提案し、安全安心な社会の実現を目指します。」と書かれています。しかし、サイト内のプレスリリースには今回の小豆がウイルスを抑制する研究やお茶と小豆を一緒に摂取するとさらに効果がアップする研究結果に関しては記載が見当たりません。龍角散と共同研究した内容に関しては別のサイトを立ち上げたようです。

ところで琉球新報は

動物実験で、小豆と抹茶から抽出した成分をH1N1型インフルエンザウイルスに混ぜ合わせてマウスに投与すると、マウスの生存率が高くなることが確認されたという

と書いているけど、この動物実験は論文になっているのか不明です。

将来どのように役立つのか明確になっていない地道な研究を継続することは、科学の発展に必要なことだと私は信じています。しかし、企業が早まって基礎研究段階であたかも臨床的効果があるような伝え方をすることに強い懸念を抱いています。

さらにメディアが裏付けも取らないで医学関連商品をヨイショしちゃう記事を掲載してしまうことには危機感を抱いています。

今シーズン中に今度は情報系ワイドショーが「ウイルス対策に小豆を食べましょう」的な内容を放送しちゃうことが大いに予想されるのでご注意くださいませ。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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