ヴィーガンの植物療法士さん、人体の構造や栄養学の基礎知識を学んでから論破してね❗

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世の中の健康志向ブーム、医師としては病気にならないように気をつける生活を送ることは望ましいことだと大歓迎です。

海外セレブがヴィーガンになればそれを真似る人も多数出ててきますし、オーガニック食品が健康に良いと医学的に明確なエビデンスが無くても信じてしまう人もいます。

人体の構造や栄養学の知識もかなり危なっかしいレベルであるのに、肉食忌避を啓蒙するために、トンデモないことを言い出す植物療法士と名乗る方を見つけてしまいました。

たんぱく質をありがたがって食べるな❗と植物療法士さんはシャウトするけど

植物療法士なる資格(?)があるようです。Twitterで植物療法士を名乗るトンデモさんが、こんなことをツイートしています。

人体の構造や栄養学の基礎知識が無いヴィーガンの植物療法士さん

「動物を食べなければタンパク質が合成できない」という一般論は破綻しています

https://twitter.com/stm_nd/status/1310235891776933888

このトンデモ植物療法士さんは肉食を避けるヴィーガン(Vegan)である様子が伺えます。まず、人間は生命を維持していくためには脂質・糖質・たんぱく質の三大栄養素を体内に取り入れる必要があることは中学校の理科で学びましたよね。理科が嫌いで授業中に寝ていたりスマホをいじっていた人でも、普通の食生活を送っていれば知らず知らずのうちにのうちに脂質・糖質・たんぱく質を食べているはずです。

例えば大豆はたんぱく質が豊富な食材であることは、誰でも知っているんじゃ無いでしょうか?

トンデモ植物療法士さんの主張は、牛や豚や鶏は草食動物であり、肉食をしていないのにしっかりとアミノ酸からたんぱく質を作り出しているのだから、人間も肉食からたんぱく質を得ないでも良いじゃん、であることが読み取れます。

でもねえ、地球と動物に優しい暮らしを世界を目指している植物療法士さん、そもそも人間の体の仕組みと牛や豚や鶏の体の仕組みは別なんだよ❗

余計なお世話でしょうけど、私はヴィーガンかつ植物療法士かつオーガニック信奉者のこの方が、どこでどう間違って常識外れの考えをもつに至ったのかが気になって仕方ありません。そもそもの入り口がオーガニックだったのか、そもそもヴィーガンであったのか、あるいは植物療法士というあまり聞き慣れない資格を得た後にトンデモ理論に嵌まり込んでしまったのか⋯

この植物療法士さんは明らかに、オーガニックやヴィーガンをビジネスとしています。素人さんでは無いと判断して俎上に載せさせていただきます。

たんぱく質は動物を食べなくても摂取できることは常識なんですけど

えーっと、この見出しもちょっと変ですね。植物療法士さんにツイートに惑わされてしまいました。別に人間は好き好んで、あるいはありがたがってたんぱく質を摂取しているわけじゃ無いからね。

だって、人間はたんぱく質を体内で作り出すために肉食をしているんじゃ無いもん。

中学校の教科書「新しい科学2」(東京書籍)の第2章「動物のからだの作りとはたらき」P102にイラスト入りで消化の仕組みが書かれています。

「動物のからだの作りとはたらき」消化の仕組み

食物として人間の消化器に入ったたんぱく質は胃液中と膵液中の消化酵素によってアミノ酸に分解されて、小腸から吸収されます。

人間はなにもたんぱく質を合成したいから、動物を食しているわけじゃ無いことがこれで理解できるんじゃ無いでしょうか?

たんぱく質は酵素の働きによってアミノ酸になります。体内に入ったアミノ酸はヒトの体を構成する筋肉やホルモンやエネルギーに変化します。もちろん体内にアミノ酸として行き渡って、植物療法士さんがおっしゃるように牛も豚も鶏と同じようにたんぱく質に再度合成されはしますけどね。

植物療法士さん、アミノ酸って必須アミノ酸と非必須アミノ酸があるのはご存知でしょうか?

ヒトが必要としているアミノ酸は必須アミノ酸と非必須アミノ酸があります。必須アミノ酸は体内で合成することが出来ないので、食物として取り入れる必要があります(これは中学では習わないかも)。必須アミノ酸はイソロイシン、スレオニン、トリプトファン、バリン、ヒスチジン、フェルアラニン、メチオニン、リジン、ロイシンの9種類です。

9種類の必須アミノ酸は肉や魚には全て含まれています。しかし、植物療法士さんが「草」と呼んでいる食物では必須アミノ酸9種類を全て含むのはありません。

さらに草を含む野菜や穀類はアミノ酸を十分に含む食材とは言い難いために、Incomplete Protein(不完全なたんぱく質)とまで呼ばれています。

草を含む野菜や穀類はアミノ酸を十分に含む食材とは言えない

「Protein – Which is Best?」(PMID: 24482589)より。この論文中では

That is, a protein that contains all of the essential amino acids. Proteins from vegetable sources are incomplete in that they are generally lacking one or two essential amino acids.

つまり、

「植物由来のたんぱく質は、1〜2種類の必須アミノ酸が不足しているという点で不完全だよ❗」って、ことですね。

そもそも動物とヒトではからだの構造が違います

トンデモ植物療法士さんは「一般論は破綻しています❗」と断言して強調したいのは、牛も豚も鶏も動物を食べなくてもたんぱく質をしっかり合成していることだと考えられます。

あのさあ〜、ヒトの消化吸収システムと牛も豚も鶏の消化吸収システムは大きく違っているんだけどなあ。

草食動物の消化管内の微生物内のたんぱくが草食動物にとって必要なアミノ酸を含んでいるために、必須アミノ酸を必要としていないんだよ❗

まあ、植物療法士さんが牛や豚や鶏と同じ腸内に微生物をお持ちなんであれば、「穀類と草」だけで20種類のアミノ酸をカバーできるんだけどね。

ヴィーガンを拗らせ、子供が餓死した両親は逮捕されました

トンデモ植物療法士さんがお子さんをお持ちかは存じ上げません。しかし、海外ではヴィーガンに拘った両親に育てられた赤ちゃんが餓死した事件が発生しています。

海外ではヴィーガンにヴィーガンの両親に育てられた赤ちゃんが餓死した事件

https://edition.cnn.com/2019/08/22/australia/australia-vegan-baby-intl-hnk-trnd/index.html

オーストラリアで1歳の赤ちゃんにヴィーガン食を与えて、深刻な栄養失調を起こしたために逮捕されました。この赤ちゃんは19ヶ月なのに、なんと体重は4.9キロしかなく歯も生えていなかった、とCNNは伝えています。

また、米国では子供にヴィーガン食を与え続けたために、18ヶ月の赤ちゃんが餓死してしまった悲劇も。

子供にヴィーガン食を与え続けた親に殺人罪適用

https://www.foxnews.com/us/florida-vegan-couple-charged-murder-18-month-old-son-dies-malnutrition-starvation

この両親は殺人罪が適用された模様です。

健康志向の高まりでヴィーガン食を選択する人も増えてきています。大人の場合、自分で選択した道であるならば、ヴィーガン食を体を壊すまで継続してもそれはそれで一つ生き方だと考えることもできます。

しかし、自分で食べ物を選択することができない赤ちゃんにヴィーガン食だけを与えるのは、勉強不足すぎます。今回取り上げたヴィーガン食を推奨している植物療法士さんはヒトと牛や豚や鶏のからだの構造・システムの違いさえ理解してません。

植物療法士さん、ご自分でオーガニックなヴィーガンライフを楽しんでいる間は私が口出しすることでは無いとは思いますけど、知識不足なのに第三者をのヴィーガンライフに誘い込むことはご遠慮くださいね❗

植物療法士とヴィーガンの接点はなんだろう?

トンデモ植物療法士さんの場合、元々ヴィーガンであってその後植物療法士になったのか、オーガニックを拗らせてヴィーガンになってから植物療法士になったのか、植物療法士がスタートだったのか、その辺りは不明なんだけど、なんとなーく オーガニック信奉とヴィーガンと植物療法士って親和性が高そうな印象があります。

植物療法士はもちろん国家資格でも無いですし、大学で専攻して学ぶものでもありません。マイナビとかの情報によれば植物療法士は植物療法(フィトセラピスト)を行う業種のようで、植物を使って体調を良くしたり、病気の予防をする仕事らしい。でも下記のフローチャートを見てみると、

物療法士は植物療法(フィトセラピスト)を行う民間資格

https://shingaku.mynavi.jp/future/shigoto/600/

ある日突然、「私は植物療法士です❗」と宣言しても誰からも文句を言われないような業種とも考えられます。

トンデモウォッチャー界隈では昭和と比較して平成のトンデモさんは小粒であったと言われています。このオーガニック信奉者かつヴィーガンの植物療法士さんを生温かい目で見守って、令和の大物トンデモさんに育っていただくことを祈っております。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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