水素が抗酸化力を持っていて、活性酸素を除去するのは研究レベルでは間違いのないことです。
一般の方が手に入れることができるのは水素を含んだ飲み物で「活性水素水」「高濃度水素水」「ナノ水素水」「還元水素水」など名称が溢れかえっています。いかに自社製品が優れた「水素水」であるかを強調するために様々な工夫がなされています。
本記事の内容
「水素水」は果たして体にいいのか?という素朴な疑問より販売業社の売り込み手法の方が興味深い
水素水の販売業者は
- 水素水の水素濃度
- 水素水の水素濃度を保持するための容器
の2点に対しての比較がなされています。中には広告手法の一つとして、他社製品の欠点を指摘しながら、ある一定の水素水へ誘導するような醜いバトルが派手に行われています。
水素水に含まれる水素濃度の違いは効果・効能に大きな影響を与えるのか?
水素水が活性酸素を除去して、美容や健康に効果があるとの裏付けはネイチャーに掲載された「Hydrogen acts as a therapeutic antioxidant by selectively reducing cytotoxic oxygen radicals」(Nature Medicine 13,688–694 1 June 2007) が元ネタです。日本医大の太田教授による研究はラットの実験であり人間を対象としたものではありません。
実際に研究レベルとして臨床での応用が試験的に行われてはいますが、どのくらいの濃度が何に効果があるか?といういわゆるさじ加減はまだ確立されていません。水素水ビジネス業界ではとにかく濃度が高いほど効果がある、と強調されがちです。医薬品ではないために具体的に糖尿病が治った、高血圧に効果がある、がんの転移が消え去った???などの効果・効能が記せないために体験談等で効き目の表現をカバーしています。
そもその水素水が抗酸化作用によって活性酸素を除去した場合、何に効果があるか具体的な疾患・症状さえもわからない上に、適正使用量も明確でない水素水の濃度の高さを競い合う事自体が滑稽ではあります。
水素水の成分はppmという単位を使用しています。パーセントは100分率ですが、ppmは100万分率ですので1ppmの水素水は水素が0.0001パーセント含まれている意味になります。もちろんppm単位で強烈な毒性を示す物質(例えばダイオキシン)もあるんで、ppm単位のこだわりの姿勢で水素水を製造販売する事を批判する必要はありませんが、どれもこれも50歩100歩であり「目◯鼻◯を笑う」状態にしか感じられません。濃ければそれに比例して効果が高まる、との医学ベースの論文は見当たりませんからね。
水素水が入っている容器による効果の差って単に残留している水素分子濃度の差だよね?!
水素って人間が生活している大気中にはほとんど含まれていません。原子番号が1であることからも、めちゃくちゃ軽い分子なので地上周辺には留まれないで、遥か彼方へ消え去ってしまいます。水素水業界では水素水が入っている容器の差によって自社製品が優れた水素水であることを競争試合っています。代表的な容器としては
- アルミパウチ
- ペットボトル
- スティックタイプ
- ウォーターサーバー
- アルミ缶
などがあります。水素が大気中に拡散しやすい分子であることを知っていれば、アルミ缶やペットボトルはどう見ても蓋を開けた途端にせっかく水に含ませた(?)水素が遥か彼方へ去っていくはずです。
ウォーターサーバー中に高濃度の水素水が入っていたとしても、コップに注いだ時点で水素は大気中に拡散してしまいます。
粉末状にしたスティックタイプの水素水の素(?)を水に溶かした瞬間に水素は居なくなっちゃいます。
高濃度の水素水を服用するためには、アルミパウチをご自分の口に密着させて、口腔内でキャップを外せば水素を体内に取り入れることが可能かもしれません。
どちらにしても、いかに水素水中の水素分子を多量に体内に取り入れるか、が水素水業界バトルの対象となっているようです(笑)
中には全く水素が入っていないものもあるようです⋯この英語のサイト自体ある日本の水素水会社の商品と強く関連付けられていますけどね。
水素水の濃度と効果の関係⋯そもそも病気に対する効果があるのか?
水素水を販売している広告では効果効能をはっきり記載することは薬事法に抵触するために、体験談やその効果を匂わす手法が使用されています。水素水に含まれる水素分子の濃度が高いほど、何かに効果があることを研究した論文があるといいのですが⋯。
NCBI(National Center for Biotechnology Information)が運営する医学分野の文献検索サイト(PubMed)でも、クオリティの高い学会誌に掲載された臨床上水素水自体に効果があることを示唆する論文はあまり多くありません。あったとしても多くは日本の研究者によるものがほとんどで世界的にはあまり注目を集めている分野ではない可能性もあります。
それ風の論文としては人工的にパーキンソン様の脳神経の変性を起こしたマウスに水素水を与えて、パーキンソン病で認められる病変が抑制されたことを報告した「Hydrogen in drinking water reduces dopaminergic neuronal loss in the 1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine mouse model of Parkinson’s disease.」(PLoS One. 2009 Sep 30;4 (9) :e7247.)を見つけることができました。でもまだマウスの段階ですね(これも日本の論文です)。
人に対する治験として心筋梗塞や動脈硬化、加えてがんを対象に水素水の応用が試みられています。しかし、あくまで治験段階であり、どれだけの濃度があればどんな作用をして効果効能を示すのかが明確になっていない現時点で、水素水の保存方法や濃度を競い合っても全く無意味なんじゃないでしょうか?
水素水って医学的に貢献する可能性を含むだけに、安易な販売方法によってイメージダウンして真面目な研究者がやる気をなくすことになるかもしれません。まだまだ研究段階のレベルのものである、とお考えいただいて間違いはありません。