男性は何故女性より長生きできないか?という素朴な疑問の鍵は「テストステロン」

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どんな国のデータでも女性の方が男性より長寿です。

つまり男は女性と比較して短命、ってことになっています。その原因として兵隊になるので戦死するから、昔だったら獲物を獲得するために害獣に襲われたから、女性よりリスクを取る傾向があるから男は女性より外傷を受けやすいし、精神的なストレスにさらされる状況が多いので長生きできない、と説明されてきました。

民族・人種・環境を考えても男性は長生きできない❗

海外と比較して平和な環境である日本でも明らかに寿命は男性の方が短いのは何故なんでしょうか?男性が男性である根元の男性ホルモンにその秘密があるんじゃないのか、と泌尿器科の中でエイジングケアに興味のある一派はこのあたりをかなり詳しく研究しています。

男性ホルモンの代表格である「テストステロン」が実は寿命を左右している可能性が高いとの説が有力です。

テストステロンの減少による精神的肉体的な病気

最近耳にする機会も増えたんじゃないかと思われる病気に「男性更年期障害」ってのがあります。女性の場合、更年期障害は閉経前後の時期に限られますが、男性の場合、ある時点で「はい、生殖期間は終わりです」という肉体的なサインはありません。となると、男性更年期障害を自分の体の変化から見つけることは難しなり精神的な疾患ではないかと疑われ心療内科医等に駆け込んで大量の安定剤や睡眠導入剤を処方されちゃった人を多く見かけます。

男性の更年期障害 (late-onset hypogonadism 略してLOH) の判別はテストステロンの中の一種類である「遊離テストステロン」を測定することで診断可能です。このテストステロンは男性だけに存在する性ホルモンではなく女性の体にも存在してます。実は米国の研究では社会の第一線で活躍している女性(定義自体ははっきりしないけど⋯)はテストステロンが高い、なんてものさえ報告されています。

テストステロンの低い男性の傾向や症状として

  • 鬱的な症状
  • メタボリックシンドローム
  • 糖尿病になりやすい
  • 太りやすい
  • 高血圧

などが挙げられていますので、そりゃ寿命も短くなりますって。

テストステロンとメタボリックシンドロームの因子の関係

「なんとかをすれば長生きできる」「なんとかを食べて健康に」的なタイトルの書籍が溢れかえっていますよね。たった一つの食材を食べ続けることで長生きできるわけはないし、ある一定の運動や動作をするだけで病気を治す、なんてことは不可能と私は主張し続けてきています。

このオッサンたちがこよなく愛する「テストステロン」はまちがいなく、男性の健康をつかさどり、健康状態を把握する上での指標となります。例えば、辻村晃先生の論文である「Is low testosterone concentration a risk factor for metabolic syndrome in healthy middle-aged men?」(Urology. 2013 Oct;82 (4) :814-9. doi: 10.1016)では

肥満・血糖値・血圧・脂質が異常値の人はテストステロンが低い

ということを明らかにしています。泌尿器科内では一昔前はテストステロン等を研究するグループはがんなどを対象に研究するグループより、なんとはなしに不遇の時代を送っていたのですが、近年のエイジングケアブームにより脚光を浴びています。

PubMed_Central__Figure_1__Int_J_Endocrinol__2014__2014__527470__Published_online_2014_Feb_12__doi_ _10_1155_2014_527470

⋯体重は明らかにホルモン補充療法を行ったグループで減少しています。その他の因子も補充療法で改善しています(詳しくはリンク先をご覧ください)。

テストステロンと寿命は因果関係じゃないじゃないの⁉

はい、お待ちしていました。医学のデータって相関関係ばかりであって、因果関係にあることって滅多にないじゃん、って理系のオッサンのツッコミ。このテストステロンちゃんの場合は、因果関係なんだな〜。

メタボって診断されたオッサンを集めてテストステロンを補充した結果、見事メタボが解消されていることが報告されています「Effects of Five-Year Treatment with Testosterone Undecanoate on Metabolic and Hormonal Parameters in Ageing Men with Metabolic Syndrome」(Int J Endocrinol. 2014; 2014: 527470.)。この論文によればお腹周りも減少して、体重も減って、血圧も下がって、血糖値も下がった⋯つまりメタボリックシンドロームは改善しちゃっているんです。

テストステロンが低い人は短命だよ❗

国を挙げてメタボリックシンドロームを退治しようとしているのは、国民の健康を願ってのこと(ここは素直に受け止めましょうね)。テストステロンを測定して、うつ病と診断された人が実は「LOH症候群」であり、ホルモン補充療法を行うことですっかり病状が回復した例は今では泌尿器科医の間では当たり前のように経験します。

となると、うつ病を早期発見しましょう、と厚労省がアピールしているのは最悪の結果である「自殺」を減少させようとしているからです。テストステロンの値が低い場合はメタボになって病気になって早死にするし、精神的な症状が出てしまうと自殺という結果も招いてしまいます。

オッサンが隠れ読みする雑誌などはED改善グッズやサプリで溢れかえっています⋯言い忘れましたがテストステロンの値が低いと当然EDが症状として早期に現れますので、エッチな本はその本質をついているって解釈も成り立ちますね。そういえばエッチな本を読むとテストステロン値が上昇する、って論文どっかにあった気がするんですけど見つけられません⋯見つけ次第ブログでご紹介しまーす。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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