【究極の選択】がんの食事療法をすすめる医者と否定する医者、どっちを選ぶ?

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がんの原因となることがわかっている生活習慣はあります。また、がん発症と強く関連していると考えられている食品もわずかながら解明しつつあります。

しかし、がんと診断され標準治療以上に効果がある「がんの食事療法」は現時点では存在しないことをご存知でしょうか?さらに、がんと診断されて気をつけるべき食材も存在しませんし、がん治療と並行して食生活をがらりと変えてもその後の経過が改善することを明らかにした根拠は存在しません。

がんと診断されても、トンデモ食事療法には手を出さないように❗

がんと診断された時、自分の生活習慣によってがんが発症してしまったと考える人が多いようです。がんが発症する仕組みは複雑であり、たった一つの原因ががん発症と強く結びつくとの考え方は真っ当な医師はしません。

もしも食事中のなんらかの食材ががん発症の原因であったとしても、特定の食材や食事方法が治療になることはありません。しかし、がん患者さん向けにトンデモ食事療法を薦めてしまう医師の存在は残念なことです。

「医者は自分や家族ががんになったとき、どんな治療をするのか」(著者 川嶋朗医師)というトンデモ本と現時点でがん治療に関して一般の方にオススメできる「最高のがん治療」(著者 津川友介医師、勝俣範之医師、大須賀覚医師)の記述を比較して、トンデモ健康本・トンデモ医学本の危うさをお伝えします。

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しかし、「99%の医者が抗がん剤を使わない」って「?」を入れたとしても、盛りすぎだろうよ❗

コーヒー浣腸で有名なトンデモ医学代表のゲルソン療法とは

がん治療の代替療法(標準治療からかけ離れた民間療法)の代表格であり、罪作りな療法として「ゲルソン療法」があります。コーヒー浣腸というトンデモ療法がありますが、これはゲルソン療法の一つです。

「コーヒー浣腸」、こんなニセ医学的健康法は誰が始めたんだ??

「コーヒー浣腸」、こんなニセ医学的健康法は誰が始めたんだ??

このゲルソン療法に関して、標準治療とは思えないアドバイスを一般の方に振りまいている川嶋朗医師はこのように著書中で書いています。

ゲルソン療法は、がんの原因となる、もしくはがん細胞の増殖を促すような食品の摂取を控え、かつ栄養素をバランスよく摂取して自己治癒力を高めるものです。

「医者は自分や家族ががんになったとき、どんな治療をするのか」p134

一方の津川友介医師、勝俣範之医師、大須賀覚医師による一般向け書籍は

ゲルソン療法には、がんの進行をゆっくりにしたり、がんを縮小させたりするという研究結果がないだけでなく、健康を害すると報告されています。

「最高のがん治療」P116

一方の医師はがん治療に役立つ食事療法を紹介して、もう一方の医師たちはがん治療に役立つとされる食事療法を真っ向から否定。

医師によって言っていることが違うじゃん❗という日頃の日常診察でも時々聞く、診療現場を混乱に陥れる患者さんの悲痛な叫びの一因はトンデモ医師の発言であったり著作だったりするのです。

がん治療に対する食事療法が期待できない理由

がんと診断されて、標準治療を受ける上で、「食事方法を改善すれば治療効果が上がるかも」と考えるのは普通のことだと思います。以前ご紹介したケトン食でがん治療をしちゃうというトンデモ医学については以前ブログにしました。

がん免疫栄養ケトン食療法、なんだか怪しげな雰囲気が⋯。

がん免疫栄養ケトン食療法、なんだか怪しげな雰囲気が⋯。

もしも、ケトン食療法ががん治療に対して効果があるのであれば、多くの医師によって追加の研究がなされているはずです。しかし、がん細胞を兵糧攻めにして末期がんを治しちゃったとのトンデモ話に関して、真っ当な医師がその後の研究を行ったと思われる医学論文は少なくとも私は見つけることはできません。

私は、川嶋朗医師1人 VS 3人の医師、であるから後者の著書が優れている、信頼度が高いとは考えていません。ゲルソン療法を肯定する真っ当と判断できる医学論文は無し、ゲルソン療法がリスキーであることを伝える医学論文が多数であること、及び日頃の川嶋朗医師の取材記事や著書と津川友介医師、勝俣範之医師、大須賀覚医師のメディア上の発言や見解などを比較しての判断です。

まあ、川嶋朗医師ってこんな感じの人ですし⋯

川嶋朗医師が監修するホルミシスの医学的効果はニセ医学のホメオパシーとそっくり⁉

川嶋朗医師が監修するホルミシスの医学的効果はニセ医学のホメオパシーとそっくり⁉

ホメオパシー信者っぽいです。

がんのトンデモ食事療法の論文は多数あっても信頼度に問題

がんを食事療法で治療しようとの試みは世界中で行われています。多種多様のがん治療の代替療法として食事療法が医学論文になっています。しかし、私は以前から「学会誌に掲載されました❗」「学会で注目されました〜!」との謳い文句の多くが怪しげなものであることをお伝えしています。

川嶋朗医師はゲルソン療法等の食事療法を盲信してはいけないとエクスキューズはしつつも、トンデモ医師の1人である某医師がゲルソン療法をアレンジした食事療法で5年生存率がゼロ%から奇跡的にがんを克服したことを著書で述べています。

一方の津川友介医師、勝俣範之医師、大須賀覚医師の手による本では全否定だけではなく、ゲルソン療法は効果が無いだけではなく、健康被害さえ招くと述べています。

がん治療にゲルソン療法が効果が無いと判断する根拠

私ががん治療に対するゲルソン療法が怪しく全く効果が無い、と判断する根拠をお伝えしておきますね。

  • ゲルソン療法に関する医学論文はレトロスペクティブ研究(retrospective study 後ろ向きの研究、ゲルソン療法関連論文の多くは過去にどのような食事をしていたかを調べたもの)であり、調査内容の信頼性が低い。
  • ゲルソン療法を持ち上げている論文の多くは症例報告及び複数の症例報告をまとめたものであり、なかには電話での聞き取り調査さえ含まれている。
  • ゲルソン療法は1930年代に考えられた結核の治療法が始まりで、理論は体内に蓄積された毒素(なんじゃこりゃ)を排出させるという非科学的なものである。

などなどです。標準治療なんてやめちゃって食事による代替療法をオススメします的な医師の一次ソースというか元ネタは十分な医療制度は整っていないし、抗がん剤や放射線治療が発展していない時代に考案されたゲルソン療法であることが多いのです。

まあ、代替療法を選択しちゃうとこんな結果になりますのでご注意くださいね。

がん治療に代替医療を選択すると、5倍以上も死亡リスクが高まるぞ❗

がん治療に代替医療を選択すると、5倍以上も死亡リスクが高まるぞ❗

この代替療法を選択すると5倍以上も死亡リスクが高まるとの説はガッチガチのエビデンスがあります。

「がんを治す食事法」が持て囃されていても、医学的には根拠のない話であり、がん治療に役立つ食事方法は「楽しく美味しく食事をしよう❗」です。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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