「添加物は危険」と言っている方へ(その3)⋯母親に無用な危機感と罪悪感を持たせる手法だけは止めてね❗

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やたらと「食品添加物は危ない」と煽っている一派がいます。

この一派のターゲットは母親に絞られています。

食の安全性問題を過剰に煽るトンデモさん達のターゲットは母親

使用基準が厳格に定められている食品添加物が実は危険であるとのトンデモ系の考えを拡散するために、多くの書籍やウェブ上の記事では以下のようなフレーズを多用しています。

  • 現代の子供が慣れ親しんでいるのは「母の味」ではなく添加物の味
  • 「お袋の味」が「袋の味(インスタント食品等)」になっている
  • 食品添加物に気をつけている母親と気をつけない母親の子供の将来を見れば一目瞭然
  • 離乳食(補完食)は必ず全てを手作りで
  • 母親が食べた食品が全て母乳の質に影響する

このような言葉を駆使して母親の危機感を科学的ではないニセ医学話を根拠に煽っている状況が目に付きます。

食材の選択から調理まで父親が行っている家庭も若干はあるのでしょう。家族、特に子供の場合、母親が添加物の恐ろしさを知らないために、アトピーになり、喘息になり、キレやすくなり、最悪の場合はがんにまでなってしまう、との基準内の使用量なら有りえないニセ医学・疑似科学情報を垂れ流しています。

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男女の家庭内での役割分担は女性の社会進出を阻む原因のひとつですが幻想に近い「昔の母親は偉かった、なんでも手作りだった」風の考え方が見え隠れします。

女性の方が汚染や病気に対して強い感受性を持ち、嫌悪感を抱くことが研究によって知られていす。(「Evidence that disgust evolved to protect from risk of disease」Proc Biol Sci. 2004 May 7; 271 S131–S133. 王立協会の科学専門誌です❗)。トンデモ系のニセ医学・似非科学がターゲットを女性に絞った戦略は確かに効果的です。しかし、この一派がこんな論文を読んでいるとは思えませんけどね〜。

添加物過敏派の食に関する問題は母親が原因、とする非常に悪質な手法

昭和30年頃に「森永ヒ素ミルク事件」という悲惨な出来事がありました。粉ミルクの安定剤にヒ素が混入したために、神経系の中毒症状が赤ちゃんに現れ、130名が亡くなった事件です。この時ある被害者の母親はつぶやきました。「他のメーカーより安かった森永の粉ミルクを買った私がいけなかった」、日本がまだまだ貧しかった時代のことです。

少なくとも食に困る状況に今の日本では特殊な事情の方以外は陥らないはずです。このような事件が再び起こらないように食品衛生法があり行政は監視して、さらに時代にあった規則を定めているのです(中には悪徳業者が混じってしまうことも残念ながらあります)。

社会格差は広がっている状況に対して金銭的、時間的な余裕のある母親にトンデモ系ニセ医学バラマキ一派はターゲットを絞っています

食品添加物怖い怖い一派は実現するには大きな問題をクリアしなければならない難題を持ちかけています。

  • 食品添加物を使用していない「無添加」の食材を選択するべき
    • 添加物を使用しない食品の方が値段は高め。経済的に厳しい家庭の場合、安全性を軽視して価格で選ぶ傾向があると批難。わざわざ添加物入りを選んで買っているわけじゃないのに。
  • 赤ちゃんは粉ミルクではなく、母乳で育てるべき
    • 搾乳とかの手段もありますが、子育ては母親がするべきと古い概念を持ち出す。もちろん薬を飲んで授乳なんてもってのほか。状況に応じた対応方法を頭から否定。
  • 食事は手間暇かけても、手作りであるべき
    • 男性側が料理をすればいいのですが、まだまだ実際は女性が調理している家庭が多い現状と働く女性の場合、毎日の食事を全て出汁取りからやっている時間を確保することは難しい。手間暇かけた料理が偉い、と合理性を欠く行動を強要。

このような難題を持ちかけて結局のところ食に対して注意を払わないのは母親の責任と、母親に科学的な根拠が無い恐怖心を植えてつけて、何がしかの方向へ引っ張っていく不気味な思想が見え隠れします。

天然に存在する物質も化学名で呼ばれると一般の方は不自然に合成された危険なモノと勘違いしてしまいます。食品添加物も化学名で書かれることでより不安にさせる戦法を彼らは多用します。「ジハイドロジェン・モノオキサイド(DHMO) 」と聞いたらそれはそれは怖い化学物質に思われますよね、これって「H2O」つまり「水」なんですけど(人間がいかに騙されやすいか、の例えとして有名な話です)。

食品添加物がそれほど危険なら行政に訴えればいいのでは?

子供を駐車場に置きっぱなしでパチンコしたり、イライラするから虐待したり、しつけと称して食事を与えない親は除外します。どんな親だって子供の健康、将来健康で自の能力を社会で活用するような、そして幸せな人生を送って欲しいと考えます。

危険だと言われてる輸入肉を国産牛より安いとの理由で買う方も多いはずです。仕事で疲れたためにお惣菜は出来合いのもので間に合わせよう、とする働く女性も多いでしょう。薬を服用しているために、母乳を与えることを避ける状態のお母さんもいます。恵まれた環境の母親は無添加にこだわる時間もお金もあるでしょう。様々な社会環境に置かれている女性が合理的な生活を送っていることに対して、ありもしないことを「危険、危ない、使ってはいけない、食べてはいけない」と主張する一派の本音はどこにあるのか非常に興味を惹かれます。

本当に出回っている食品添加物が本当に危険ならば、厚生労働省や国民生活センター、消費者庁に強く申し入れをすればいいのでは?多分、彼らは言うでしょうね〜「巨大陰謀組織が背後に控えているので行政は動かない」とのおきまりの文句を。

背後でうごめく巨大巨大な陰謀組織???

ありえないことを大げさに喧伝する人々のほとんどが一つのネタ元からの派生系です。最終的に出てくる巨大陰謀組織を操っているのはロスチャイルド家であり、ロックフェラー家です。しかし、この陰謀論を唱える人々ってなんでヴァンダービルト家とかモルガン家とかは出してこないのでしょうか?この二つのファミリーもそれはそれは莫大な資産を築き上げた一家で、金融や実業の世界のビッグショットであることは間違いありません。このあたりに陰謀論を唱える人々の知識の浅さを感じてしまいます。

じゃあ、現在では食品添加物から薬やワクチン、電磁波を撒き散らすデバイスに至るまで健康を害するものを派手に売りまくっている産業を影で操っているのはビルゲイツやウォーレンバフェットなんでしょうか?

その1:「添加物は危険」と言っている方へ⋯おせち料理はどうしているのですか?

その2:「添加物は危険」と言っている方へ⋯お餅がカビないのは保存料を含んでいるからですか??

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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