オクラは身体によい食べ物だと考えられています。身体に良い影響があるのかに関しては様々な報告がしっかりとした基礎研究段階の医学論文が多数あります。
ここ数年はオクラをそのまま調理して食べるのではなく、オクラを一定時間水に浸した「オクラ水」が大注目らしいのです。なんでオクラでは無く、オクラ水でなければ身体に良い影響を与えることができないのか、オクラ水の謎を検証してみました。
その結果、オクラ水の重要な成分である「ムチン」自体の定義がどうも怪しげなのです。
本記事の内容
オクラ水で糖尿病や高血圧やひざ痛が続々治癒しちゃう作用機序は?
先日もブログで取り上げたオクラ水、これを愛飲するとアラ不思議、血圧は下がるは、血糖値が下がり、ヘモグロビンA1cも下がるし、膝の痛みも軽減しちゃうと書かれています。オクラ水に何らかの効果があるのであれば、医師である私としてはその作用機序が知りたくなるのは当然です。しかし、手元のある二種類のオクラ水関連の健康本を熟読しても作用機序は全くつかめません、というか医師の手による一般書籍であっても解説がほとんどありません。健康面で良い効果を示す可能性のあるそれらしい言葉は「ムチン」「ペクチン」「インクレチン」「不溶性食物繊維」などです。
さらに気になってしまうのが、前掲の書籍の著者の予想する「未知なる成分」説です。著者は未知なる成分をオクラの揮発性成分であるとの可能性にまではたどり着いたようですが、その揮発性成分を未知なる成分で片付けてしまっています。以前、ブログでも書きましたが、オクラ水から発せられる揮発性の未知なる成分はちょっと調べれば、オクラの揮発性成分はテルペン化合物であることがわかるはず。オクラ水の著者やオクラ水関係者はサクッと調べもしなかったのでしょうかねえ⋯。
そもそもネバネバの主成分ムチンはオクラには含まれていないよ⁉?
オクラやオクラ水が身体に良いことの説明として、ネバネバ成分である水溶性食物繊維であるムチン (mucin) がウイルスなどの異物が粘膜に付着するのを防ぐから、と説明しているネット記事や書籍を多く見かけます。
でもねえ、
そもそもムチンって動物が分泌する粘質物質なんだよね〜❗
オクラのネバネバ成分をムチンと説明している記事や書籍は大間違いである可能性が強く疑われる根拠は公益社団法人日本食品科学工学会のこのサイトをご参照くださいませ。
日本食品科学工学会はムチンを以前は「動植物より分泌される粘質物一般をいう。」と定義していたけど、現在の科学的知見から見直して、「動物より分泌される粘質物一般をいう。」に2020年7月30日付けで訂正したのです。
つまり、オクラやオクラ水が身体に良いことを「ムチン」で説明している記事は間違いである可能性が強く疑われます。
オクラを食べるだけではダメで、なぜオクラ水にするのかの理由が揺らぐ
オクラを食べることがなんらかの健康面での良い効果があったとしても、最近のオクラ水関係者はなぜかオクラを水に浸すオクラ水を絶賛しています。この一般書籍のサブタイトルも「一晩でできる!血圧、血糖値を下げる特効ドリンク」として、オクラ水を推奨しています。
オクラを素直に食べるだけじゃ、血圧は下がるは、血糖値が下がり、ヘモグロビンA1cも下がるし、膝の痛みも軽減しちゃう効果は期待できなく、どうしてもオクラ+水のオクラ水じゃないと効果は期待できないことが、オクラ水関連記事から知ることができます。でもさ、そもそもオクラのネバネバはムチンじゃないし、未知の成分もテルペン化合物って解明されてるじゃん❗ とついついツッコんでしまいたくなるオクラ水界隈です。
オクラ水が「学会で大注目❗」って言ってもねえ⋯。
健康関連情報では、私のような町医者の発言より大学教授の発言の方が信頼度があるでしょうし、説得力も一般の方にはあると考えます。まあ、大学教授と言っても医師じゃないけど武田邦彦教授のような特異な存在もありえますし、医学部教授であってもトンデモさんが混入している場合もあります。
さらに一般の方に対して強くアピールできる魔法の言葉は「学会で発表」「学会誌に掲載されました」って感じのインチキサプリ御用達ワードです。
オクラ水の場合は学会で大注目!
とのことなので、どんな学会で大注目されたのかが気になります。前掲の書籍によれば「第25回日本健康体力栄養学会」でオクラ水の効果について報告したようです。
この学会はこじんまりした会のようです。
こじんまりした家庭的雰囲気のあふれる学会は活発な発言ができて、私は個人的に嫌いじゃないのですが、オクラ水が大注目されたとの表現はちょっくら違和感がないわけじゃないです。
例えば合コンでじっくり自分の顔を見ている女性がいたとして、「おっ、彼女、俺に大注目じゃん❗」レベル、実は鼻毛が出ていても凝視されちゃうわけで⋯それも表現としては大注目になるんじゃないかあ。
ちなみにこの書籍は2018年6月20日に発行されているけど、「痛みが消える」はグレイゾーンだとしても、「病気が治る!」は現時点ではかなり危なっかしいタイトルだと考えることもできます。というのも、薬機法(旧薬事法)の改定により「治る」「消える」は薬出ない限り、健康食品であるサプリでは常識的にNG表現であり医薬部外品であっても指導を喰らうか、あるいは景品表示法で誇大である認定をされてしまう可能性があります(法律の詳細に関しては専門家の判断を仰ぎますけど)。まあ、書籍のタイトルなんで表現の自由や出版の自由で許されるレベルなのかもしれませんね。