大豆を食べると「がんのリスクを高める⁉」との驚きの研究結果

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大豆を食べることは健康に良いことは常識となっています。また、大豆を原料とした発酵食品は健康食であることに疑う人は少ないのではないでしょうか?

ところが、日本の研究者、それも国立がん研究センターの研究によって大豆食品がある「がん」になってしまうリスクを高めるとの結論に至った医学論文が2020年6月に発表されました。いくつかの「がん」と食品の関連性は多くの論文によって支持されています。

健康に良いと考えて大豆食品を盲信して食することが、がんリスクを高めてしまうとの衝撃的な論文を考察してみます。

大豆は健康に良い、がんの発症リスクを下げることは常識になっている、と思っていたけど⋯。

大豆が身体に悪い、つまり健康に悪いと考えている人は希なんじゃないかな。大豆を原料とした豆乳や豆腐だって健康に良いはずだし、さらに発酵させた納豆にいたっては究極の健康食的にメディアは捉えて、そもそも納豆を食べても効果が無いと思われる血栓予防、いわゆる血液サラサラ効果まで大豆食品に求めてしまっているのが現状です。

【悲報】納豆は脳梗塞の予防になる⁉⋯えっ、エビデンスないじゃん‼

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納豆に含まれるナットウキナーゼが血液をサラサラというか血栓を溶かしてくれることは医学的事実。でも、納豆を食べたことによって血栓を溶かすことができるかというと、これを確実に裏付ける医学論文を私は見たことはありません。

私が専門としている泌尿器領域のがんで、男性が罹患するリスクが最も高いのが前立腺がん。この前立腺がんは男性ホルモンと密接な関係があるために、大豆に含まれるイソフラボンがひょっとして前立腺がん発症リスクを下げるのではないかと考えられています。しかーし、大豆を食べることによってある「がん」の発症リスクが高まる、という驚きの論文がでちゃったのです。

世の中の常識を覆す研究論文が飛び出してくることは少なくないのですが、最終的には他の研究者によって逆の結果に至った論文が多数でてくるのが医学界では当たり前です。

衝撃の大豆が、がん発症リスクを上がるとの論文はこれ❗

大豆業界大ショック、納豆業界が真っ青になった論文はこれ。

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ところでさあ、この論文「Soy Food Intake and Pancreatic Cancer Risk: The Japan Public Health Center-based Prospective Study」[1](PMID: 32169996)って日本の国立がん研究センターなどが中心となって研究している多目的コホート(JPHC)研究グループの手によるものじゃん。

一般の方だったら国立がんセンターの研究部門が発表した論文は100%の信頼を寄せるでしょうし、医師であっても自分の専門外のことであれば信頼してしまうはずです。まあ、私は専門である前立腺がんの検診についてはがんセンターの見解には納得はしていないけどね。

PSAによる前立腺がん検診は過剰診断・過剰治療の温床か?

大豆ががん発症リスクを高める、という研究は

大豆食品摂取量が増えると膵臓がんのリスクが増える

との結果になっています。

がんの中でも膵臓がんは見つけにくい疾患であり、発見された時は手遅れ状態である、と受け止められている厄介ながんです。日本人が健康に良いと信じて疑わない大豆食品、それが発見しにくいがんの代表である膵臓がん発症リスクを高めるなんてことに示した論文、それも日本人、さらに信頼度が高いと思われる国立がんセンターの研究部門から出てしまうとは⋯。

大豆などの豆が、がん発症リスクを下げるとの結論に至った論文は世界中に多数あります

大豆食品が膵臓がん発症リスクを高める、との論文は何箇所かケチをつけようと思えばそれなりにケチを付けることは可能です。

90185人を対象として長期間追跡したデータであっても、アンケート調査である❗

って点が氣になります。

自分の食生活がなんらかの研究に利用されると知った人たち、特に面倒なアンケート調査に協力してくれる人が研究の対象ですから、なんらかのバイアスが掛かってしまう可能性があります。

私だったら多分健康的な生活を送っていることをアピールするために、大豆食品を食べていることを強調して回答しちゃうかも。半年前に定期的に人間ドックを受けている病院で、「先生、体重がだいぶ減りましたけど、運動とかしているんですか?」と担当の先生に質問されたときに、「はい、休診日はできるだけ公園を歩くようにしています❗」って、ある薬物を使用して一気に減量したことは黙っていたもんね。

この論文の「大豆食品が膵臓がんのリスクを高くする」って結論だけを取り上げるメディア、特にワイドショー系のテレビ番組がそのうち出てくるでしょうから、その時はもう少し厳密な反論を試みる予定です(まあ、お約束の予定は未定だよ)。

がん治療に効果的な食事はあるのか?

がんの発症リスクを高めてしまう生活習慣、もちろん食事も含まれる日常生活の送り方に関しては多くの論文があります。

例えばSoy, isoflavones, and breast cancer risk in Japan[2](PMID: 12813174)は日本人を対象とした大豆の摂取量と乳がん発症リスクについての研究論文です。この論文によれば21852人を10年間にわたって追跡調査し、結果的に大豆を食べれば食べるほど乳がん発症リスクが低くなるとの結論に至っています。

日本人に多い胃がんの場合、A prospective cohort study of soy product intake and stomach cancer death.[3] (PMID: 12085252) によって大豆に含まれるイソフラボンの摂取量が多いグループは少ないグループと比較して胃がんの死亡リスクが半分近く減少することが報告されています。

そもそも同じ多目的コホート(JPHC)研究グループによって、大豆食品を食べるとがんによる死亡リスクが低なる、との研究もありますので、膵臓がんになりたくないから大豆食品は一切口にしない選択は間違っている可能性が高いのでご注意くださいね。

がんになりにくい食事はあっても、がんになった場合、がんを治す食事は無いことに十分気をつけてください。

巣ごもりで意に反して外出自粛生活が長くなっちまった私としては、納豆はここ❗って決めたお店があって製造会社に直接お願いして送ってもらっています。それは別に身体に良いからではなく、単純に美味しいからです。

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ちなみに納豆って冷凍しても美味しいよ。

引用文献

  1. Yamagiwa Y, Sawada N, Shimazu T, Yamaji T, Goto A, Takachi R, Ishihara J, Iwasaki M, Inoue M, Tsugane S; JPHC Study Group. Soy Food Intake and Pancreatic Cancer Risk: The Japan Public Health Center-based Prospective Study. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2020 Jun;29(6):1214-1221. doi: 10.1158/1055-9965.EPI-19-1254. Epub 2020 Mar 13. PMID: 32169996.
  2. Yamamoto S, Sobue T, Kobayashi M, Sasaki S, Tsugane S; Japan Public Health Center-Based Prospective Study on Cancer Cardiovascular Diseases Group. Soy, isoflavones, and breast cancer risk in Japan. J Natl Cancer Inst. 2003 Jun 18;95(12):906-13. doi: 10.1093/jnci/95.12.906. PMID: 12813174.
  3. Nagata C, Takatsuka N, Kawakami N, Shimizu H. A prospective cohort study of soy product intake and stomach cancer death. Br J Cancer. 2002 Jul 1;87(1):31-6. doi: 10.1038/sj.bjc.6600349. PMID: 12085252; PMCID: PMC2364290.

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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