糖尿病を薬なしで治す方法の1つ「オクラ水で血糖を下げる」は本当に効果があるか?

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オクラを水に漬けて作る、「オクラ水」なるものを飲むと血糖値の上昇を抑えて糖尿病が改善する、という民間療法がブーム。

本当にオクラ水が民間療法としてブームであるのかは、雑誌や一般書籍の広告が伝えるところで真偽は不明ながら、医師のなかでもオクラ水を積極的に糖尿病の患者さんに飲むことを推奨しています。

しかし、オクラ水が血糖値の上昇を抑えて糖尿病を改善する作用機序に関してはいくつかの流派があるようで、食品だから安全と考えて糖尿病の人にメカニズムが判っていないオクラ水を勧めて良いものなんでしょうか?

オクラのネバネバ成分によって血糖値がさがる、は本当か?

医師は薬を飲んでいようといまいと、糖尿病の方に食事制限をお願いするのが一般的です。新聞の健康雑誌の広告や一般向け健康書籍の広告でここ数年、「オクラ水」なるものを頻回に見かけます。それらの宣伝文句によると、家庭で簡単に作れる水にオクラを数時間漬け込んで作ることができるオクラ水によってみるみる血糖値が下がり糖尿病が改善するそーです。

オクラ水によって血糖値が下がるには糖が体内に吸収されないで体外に排出されるか、血糖値を下げるインスリンの分泌が促されるか、そもそもオクラ水でお腹が一杯になって他の食べ物を十分に摂取できない、などの理由が考えられます。

オクラ水が血糖値を下げ糖尿病を改善する作用機序の説明としてこのような考え方が一部の医師の間で採用されているようです。

オクラのネバネバは水溶性(水に溶けやすい)食物繊維です。水溶性食物繊維は、食べ物の消化・吸収を穏やかにし、血糖値の急上昇を抑える効果があります。

【オクラ水】血糖値の上昇を抑制する効果的な作り方は「プラス緑茶」がベスト

納豆などのネバネバ食品が体に良いと一般的には受け止められているので、オクラもネバネバしているので身体に良いとの話が腑に落ちる人も少なくはないはずです。民間療法を考案・企画するプロデューサーのリサーチ能力は素晴らしいですね。ネバネバ成分の説明として「ムチン」と呼ばれる物質で説明しているネット記事が多いです。

ですが、北里大学理学部の丑田公規教授は以下のように論文で述べられています。

唯一わが国だけでは,野菜や根菜類全般の「ねばねば成分」をムチンと呼ぶ誤った用法が蔓延しており

「ムチン奇譚:我が国における誤った名称の起源」生物工学会誌 (Biotechnology)

ネバネバ成分を構成するムチンが万が一血糖値を下げる効果があったとしてもオクラをそのまま食べれば良いはずであり、オクラをわざわざ水に浸してオクラ水を作る必然性は無いじゃん❗と普通は考えませんか?

オクラのネバネバ成分が血糖値の上昇を抑えて、糖尿病を改善するとの説は可能性はあったとしてもほかのネバネバ成分を含む食材とどのように違うのか、さらにオクラ水を一日どれだけ飲用すれば血糖値を下げる効果が期待できるのかを医師であったら説明していただきたいと思います。

オクラは英語だとOKRA

ちなみにオクラは英語だと「OKRA」と表記します。

オクラ水で血糖が下がったとテレビでやっていたから効果がある?

健康関連情報は毎日毎日メディアからジャジャ漏れ状態です。中には老人ホーム関連の職員でありながら、このような考え方をしてしまう人もいるのです。

テレビで話題になって、放送された後、スーパーにおくらがなくなったらしいです 私は初耳でしたので早速、調べてみました。高血糖に効く飲み物らしく、オクラの食物繊維に血糖値を下げる効果が期待されてダイエット効果があるみたいです 食事の前にオクラを食べると、オクラに含まれる食物繊維が胃に入った糖分を包み込み、糖が腸から吸収されずに排出されやすくなるので、血糖値が上がりにくくなるのだそうです。

オクラ茶–日本老人ホーム紹介サービスセンター相談員ブログ

このブログで取り上げているのはオクラ水の分派と考えられる「オクラ茶」です。この方のブログにはこのようなことがさらに書かれています。

オクラには、キャベツの2.5倍もの食物繊維が含まれているのだとか❗すごい❗女優の斉藤こず恵さんがオクラ茶を3週間飲み続けたところ、お通じが良くなり、199だった血糖値が71まだ落ちたそうです。

オクラ茶–日本老人ホーム紹介サービスセンター相談員ブログ

オクラにキャベツの2.5倍の食物繊維が含まれていたとしても、普通キャベツのように大量にオクラを食べる人は希でしょうし、オクラを水やお茶に浸す必然性が全く感じられません。さらにたった1人の芸能人がオクラで血糖値が下がったとしても、それはn=1の例であり、さらにさらにたまたまピンポイント的に199であった血糖値が71に下がっただけと普通は考えると思うのですけど⋯。

オクラ水に含まれる秘密の成分?

オクラではなくてオクラ水、つまりオクラを水に浸しておくことによって血糖を下げる効果をそれなりに科学的に説明している風な一般書籍がありました。

私はこれまでの経験から、オクラ水にはオクラをそのまま食べるだけでは得られない、未知の作用があるに違いない、と確信しています。

オクラ水で血流がよくなる!痛みが消える! 市橋研一著 P35より

この著者は医師でもあります。未知の作用を発揮する成分として、オクラをそのまま食べるだけでは得られない揮発性成分とのこと。この揮発性成分はオクラ水を作る時に入れ物に必ずラップか蓋をする必要性があり、それは有効成分と考えられるなんらかの揮発性成分が重要な働きをしていると、著者は考えているようです。

私はこの著者に対して「本を1冊書いて、さらに患者さんにオクラ水を推奨しているんだから、その揮発性成分くらいご自分で調べていただきたいな〜」なんてことを感じてしまうのです。著者の先生は未知の成分の効果的に1人で驚いているご様子ですが、オクラの揮発性成分は医学書にはないでしょうけど、調べればすぐに分かりますぜ。はい、これがオクラの揮発性成分ね❗

Volatile components of okra

「Volatile components of okra」Phytochemistry Volume 29, Issue 4, 1990, Pages 1201-1207

オクラ関連の論文を検索する時に、「OKURA」だと小倉先生の論文しか結果として出てこないので、しっかり英語表記の「OKRA」で検索する必要があります。

この論文ではオクラの揮発性成分はテルペン化合物が主と書かれています。テルペン化合物に含まれるいくつかの成分はアロマオイルにも含まれていますので、そのうちテルペン化合物を含むアロマオイルは血糖値を下げる効果がある、なんてことを言い出す人が出てくるかもしれませんね。

オクラを大量に食べても糖尿病が大問題になっている国があるんだけど⋯。

以下はオマケ的な話になります。オクラが血糖値の上昇を抑制して糖尿病を改善する効果があるとしたら、次の不都合な真実は、オクラ信奉者はどのように説明するのでしょうか?

NHKの「ガッテン!」によればガーナはオクラ大国だそうです。

オクラ!ネバネバパワー新伝説によるとガーナはオクラ大国

http://www9.nhk.or.jp/gatten/articles/20160727/index.html

今回取材したのは、世界屈指のオクラ好きな国、アフリカ・ガーナ。ガーナの人たちは乾燥オクラを粉にしてスープに入れ、とろみとして使っていたのです。実はこれが血糖値を押さえてくれるヒントになりました。

オクラ水は熱してはダメ、と書かれているものが多いのですが、ここではスープにしているのですから当然熱しています。さらに、ガーナは糖尿病が深刻な問題となっています。

ガーナでも糖尿病は深刻な問題になっています。糖尿病患者数は約60万人、2型糖尿病の有病率は6.4%、IGT(耐糖能異常)は11.0%と推定されます。コレブ医科大学付属病院では4000〜5000人の患者さんを診ています。

https://dm-net.co.jp/sally/2004/09/_1_4.php

オクラ大国であるガーナなのに、糖尿病患者さんは日本人より遥かに多くなっています。これってオクラを乾燥させスープにしてしまうことが問題なのでしょうか?

オクラあるいはオクラ水が劇的に血糖値上昇を抑えて糖尿病に効果あり、と断言するにはまだまだ研究の余地があるんじゃないでしょうか。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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