狂牛病騒動の時に「吉野家はアメリカ牛しか使いません❗」と売り上げ減少より味が変わることを心配した会社の姿勢に男気を感じました。
オッサンたちが常に腹を空かせている高校・大学時代の心強い味方の吉野家さん。
牛丼は好きだけどカラダに悪いなんてイメージを持っている人は多いはずです(なぜでしょう?)。毎日毎日、吉牛を食べ続けること3ヶ月、その結果どうなったのか?医師である私はとても気になりますが、みなさんも興味津津のはずです。ということでどうぞご覧ください。
本記事の内容
牛丼の吉野家さんは頑張ってアピールしても、マスメディアの取り上げ方で逆効果になったのでは⋯
世の中の健康食ブームの影響やオタクの友的なマイナスイメージを払拭するために行われた実験が「吉野家の牛丼3カ月間毎日食べ続けた」、としてマスメディアで取り上げられてしまいました。一次ソースを確認しないあわてんぼうの多くが「牛丼は毎日三食でも健康問題はないの?」と思いつつ吉野家に駆け込むのでしょう。さらに一次ソースを確認しない自称食問題評論家が「危ない❗吉野家商法」なんてデマを振りまく可能性もあります。
実際の実験は1日一回「吉野家の牛丼の具」を通常の食事として三ヶ月食べてもコレステロール、中性脂肪に悪影響はなかったというものなのです。今回の実験の正式なタイトルは『「吉野家の牛丼の具」の長期連続摂取に関する研究』であり、毎日必ず1食は吉野家の牛丼の具をおかずにした、ある意味でバランスの良い食生活を24名に体験してもらった研究です。一次ソースは吉野家HPにしっかりと存在しています(吉野家ホールディングズ → プレスリリース 2015年12月9日)。
吉野家ってひょっとしてメディアに嫌われているのかな?
一時期経済新聞に経営のプロとしてPC関連会社からファストフード業界のCEOになった方が高い評価を受けながらも、後半は滅茶苦茶に叩かれていました。メディアって本当に恐ろし力を持っています。会社の業績が落ちたから滅茶苦茶に叩かれたのか、叩かれたから落ち目になったのかの詳細は門外漢なのでコメントは差し控えます。
今回の「吉野家の牛丼3カ月間毎日食べ続けた」実験を親切に(大きなお世話かも?)報道したメディアの大きな誤解は記事の書き出し「吉野家の牛丼を毎日1回、3カ月食べ続けても、健康リスクは増えません」(http://www.asahi.com/articles/ASHD946N2HD9ULFA019.html)ですから、あわてんぼうは
- 牛丼を三ヶ月間毎日食べた
あるいは
- 牛丼を三ヶ月間毎日3回食べた
って思い込んじゃいます。ネットで余計の知識があるおっさんたちはマックを1日3回食べ続けた「スーパーサイズ・ミー」(知らない方はこれくらいご自分で検索してください)のイメージと重なったはずです。マックも吉野家の牛丼もオシャレじゃないし、不健康イメージが強いので、吉野家の結果とマックの結果の違いに驚いたはずです。
もともと低カロリーでバランスの良い「吉野家の牛丼の具」
吉野家の牛丼の具(冷凍)のカロリーは100グラムあたり249キロカロリーで、一袋135グラムなので336キロカロリーと低カロリーになっています。これにご飯をちょっと多めに茶碗1.5杯分(350キロカロリー程度)をプラスしても1食600キロカロリーです。成人男性における標準摂取カロリーは年齢や身長・体重で補正する必要はありますが、ざっと1800〜2000キロカロリーになるので、1日3回吉野家の牛丼の具をおかずに、白飯を食べても肥満にもならないでしょうし、血液検査でも異常値は示さないと考えます。実験では1日一回です。
今回の吉野家の実験はマスメディアを操って毎日3回食べても大丈夫というイメージを吉野家が作り出した、なんて陰謀をまことしやかに言い出す人が出ることを心配しています。
絶対、吉野家をいじめる評価が出るぞ❗
医学に絶対はありませんけど、今回の研究の揚げ足取っ自称食の評論家、添加物否定派の幼稚な理論によって、男気のある吉野家が批判されるのは確実です(この方たちの特徴として一次ソースを確認しないことが多いです)。広報担当者の方は「これで不健康食のイメージを払拭できれば」と期待されています。健康オタク、添加物は毒だよ信者、自称食の安全評論家、自称フードプロデューサー等のトンデモ系の方々の手強さをご存じない様子に余計なお世話でしょうけど心配しています。
近々こんなタイトルの記事、あるいは本が出ると予想します。 「吉野家の実験結果は本当か?」「本当は恐ろしい吉◯家の牛丼」「食べてはいけません、◯野家の牛丼」「本当に怖い、牛丼の真実」って感じのもの、多分でます。中には完璧にあっちに行ってしまった方は「世界の99パーセントが知らない牛丼の秘密」も出版するでしょうねwww
そういえば吉野家の牛丼って最近食べてなかった、と思い出しました。食のプロでオッサンが「シルダク」とか「サラ」とかの不思議な符丁を使用していた築地の吉野家に憧れた時もありました。その符丁が一般の店舗で使用されだした時期が、自分の吉野家離れとオーバーラップしています。咥えタバコに長靴履いて、片手に青竹市場カゴのオッサンというニッチな市場からより大きなマーケットを狙った時点で吉野家は悲劇の道を進んでしまったのかもしれません。