実は私「日本メンズヘルス医学会」という学会に所属しています。
メンズヘルスが風俗系のイメージを醸し出していますが「真面目に男とは何ぞや」を真面目に研究している団体です。
本記事の内容
テストステロンと寿命の関係
男性は女性より寿命が短いのはなぜ?という根源的な問題のターゲットはテストステロンです。
・男のエイジングケアをテストステロンというホルモンから考えてみた
筋肉増量剤としてドーピングの対象になっているのでイメージはかなり悪いようです(WWEのスーパースターが早死にであるのもテストステロンを使用しているから、と言われています)。
・男性にも更年期障害があるので治療はアナボリックステロイドを使います。ドーピング違反にはなってしまいます。
筋肉増量剤として海外で使用されているテストステロンの量と言ったら想像を絶するものですから、日本メンズヘルス医学会会員の医療機関の「ホルモン補充療法」ではそんな無茶な量は使用しません。
男性ホルモンが少ない人は寿命が短い、つまり早死にする傾向がある
ことがかなり明らかになっています。以前ブログでご紹介した図は
「Low Serum Testosterone and Mortality in Male Veterans 」(Arch Intern Med.2006;166 (15) :1660-1665. )
男性ホルモン「テストステロン」は果たして男性の寿命・病気とどんなに密接な関係があるのか、考えてみます。
男性ホルモンのテストステロンが低い場合、治療が可能です
医学論文を引用した一般向け医学情報って「◯◯はなんとか病のリスクを増やす」「XXXな人は◯◯病になりやす」⋯だから△△を食べましょう?、が多いですよね。なんかがなんかの病気になりやすい原因であるなら、それを抽出した薬があっても良さそうです。
多くの疫学データって相関関係にはあるけど、因果関係になっていないものが多く、突っ込みどころ満載です。しかしこの「男性ホルモンが少ないと早死にする」は因果関係を証明することが可能な研究モデルになる可能性が大きいです。テストステロンが低い人にホルモン補充療法を行って、将来に早死にするのか、長生きするのかを観察すればいいからです。
男性ホルモン(テストステロン)って健康に良い作用が悪い作用より多い❗
米国の退役軍人を血中テストステロンを測定したところ、死亡率に統計学的な差があったのです。軍人である、という因子からバイアスがかかった可能性は否定はできませんが、
死亡原因のトップ3に入る心血管系に病気もテストステロンの影響が認められています (「Low serum free testosterone level is associated with carotid intima-media thickness in middle-aged Japanese men.」Endocr 」J. 2012;59 (9) :809-15. Epub 2012 May) 。
日本の辻村晃先生が中心に行われた研究は
血液中のテストステロンが低くなると頚動脈内膜中膜肥厚度 (IMT) が増加する
つまり、動脈硬化が進行している人は血中テストステロン値が低いことを明らかにしました。
テストステロンと病気、早死にの因果関係はあるのか?
因果関係をはっきりされるための研究も行われています。テストステロンを動脈硬化がある人にホルモン補充療法を行い、血管が柔らかくなったことを示したものがあります。
「Effect of testosterone replacement therapy on arterial stiffness in older hypogonadal men」( Eur J Endocrinol May 1, 2009 160 839-846.)より
血管年齢の目安として脈波伝播速度検査(baPV)が使用されます。この検査を診療所あるいは人間ドックなどで行ったことがある方も多いのでないでしょうか?この研究では、男性ホルモンを補充することによって、血管年齢が若返ることが判明しました。
・血管年齢と男の更年期障害 男のパワーはまんま直球⁉EDは年だからは間違いです
さらに続く男性の頼もしいホルモン、テストステロン
テストステロンの可能性として
・抗肥満作用
・糖尿病改善、ヘモグロビンA1cを下げる
・HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)を増やす
・LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を減らす
・血圧を下げる
・メタボリックシンドロームを改善する
などなど男性、特にオッサンには嬉しい限りの効果が期待されています。
小さな声でテストステロン補充療法の悪い点をお伝えします
光あるところに影があり、好人物なのに悪癖があり、挨拶もする気真面目なご近所さんが凶悪犯罪を犯したり、物事には必ず良い面と悪い面があります。このテストステロンさまも悪い面がありまして
・前立腺がんがあった場合、がんを悪化させる可能性がある
・睾丸が小さくなり、子供を作る時に障害になる
との暗い面もあるのです。しかし、前立腺がんのリスクは血液検査で簡単に判別できますし、子作りを希望するかどうかは患者さんにお尋ねすれば解決する問題です。
今回取り上げた効果を期待してホルモン補充療法を行うことは、現段階では保険診療でカバーされません。男性更年期障害と泌尿器専門医から診断された場合の多くは、保険治療ができます。