更年期障害の方はご注意、安易にSSRIを服用すると骨折しやすくなっちゃうよ❗

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抗うつ剤として割と安易に処方されている感があるSSRI。

古典的な抗うつ剤より高価であり、日本ではちょっとしたブームになっています。

更年期障害にSSRIを使用すると骨折のリスクが70パーセントもアップするという報告あり

更年期障害は女性だけではなく、男性にもありますが、男性の場合はテストステロン補充療法で、抗うつ剤特にSSRIを使用することなく、症状の軽快が期待できます。女性の場合もガイドラインではホルモン補充療法が推奨ランクB、抗うつ剤の使用はCランクになっています。

そんな女性の更年期障害に対して、安易にSSRIを使用することに警鐘を鳴らした論文が登場しました。「SSRI use and risk of fractures among perimenopausal women without mental disorders」(Inj Prev. 2015 Jun 25. pii: injuryprev-2014-041483.

もともと精神的な問題を抱えている人の骨折リスクは高い、とされていましたが⋯。

抗うつ剤全般が精神的な障害を抱えている方の骨折リスクを高める、ということは以前から指摘されていました。一方で精神的な疾患自体が骨折リスクがあるので、SSRIに代表される抗うつ剤が原因ではない、独立した事象という認識をする説もありました。今回、更年期障害という精神障害とは分類されない症状に対しても、

SSRIを服用することによって骨折リスクが70パーセントも上昇

という結果が出たことによって、SSRI服用時の副作用というか、副反応として骨折リスクも視野に入れなくてはならない事態になったということもできます。

今回の研究は米国における6100万人分のデータベース(保険請求されたものと思われる)をもとに1998年から2010年の間にSSRI、H2受容体拮抗薬・PPI (胃薬とお考えください)を処方された40歳から64歳の女性がどれだけ骨折をしたか、を調べたものです。これらの女性は精神障害は無いと診断されています。

更年期障害ののぼせ症状に対して安易にSSRIは使用するべきでは無いのでは?

更年期障害の症状は特に病気と診断するのは難しいけど、さまざまな体調の悪さを患者さんが訴えるために「不定愁訴」なんて呼び方さえされています。その中でいわゆる「火照る」という症状があります。これを「ホットフラッシュ」と専門的っぽく呼んでいますが、このホットフラッシュの対応策として米国ではSSRIが処方されることが流行りとなっているのです。SSRIがホットフラッシュに使用されるようになったのは、2013年にSSRIの一つ「パキシル」が治療薬として承認された背景があります。

日本の女性の更年期障害に対しては「産婦人科診療ガイドライン」というものがあり、

推奨レベルB 更年期障害の抑うつ症状に対してホルモン補充療法
推奨レベルC 更年期のうつ病に対してSSRIを使用する

残念ながら推奨レベルAはありません。

ということになっています。つまり抑うつ症状だけであり、うつ病と診断されていない人はホルモン補充療法が好ましい治療法と学会は考えているのです。また、SSRI自体が保険適用の範囲として「更年期障害」はカバーされていませんので、米国ほどは更年期障害の女性にSSRIは使用されていないと考えます。しかし、患者さんの訴えが強いとそれに対応するために、カルテの病名に「うつ病」と記載してSSRIを処方している場合も多いにあります。この場合、厳密には保険診療としては禁じ手ではありますが、「保険請求病名」と医師の間では呼ばれる手法で、当局もあまり派手じゃない限り大人の解釈をしてくれる場合が多いです。

日本人はホルモン補充療法を嫌う傾向があるので、今後が心配です。

産婦人科のガイドラインでも推奨レベルBのホルモン補充療法(HRT) は保険適用ですし、費用もあまり高額にならないのですが、「ホルモン治療❗」って聞いただけで「ちょっと考えます」と答えてしまう患者さんも多いようです。そのため怪しげな民間療法・偽医学にはまってしまう方が結構いるとの話を女性誌の記者さんに聞いたことが多いです。例の「冷えとり」も更年期障害の女性をターゲットにしている匂いがプンプンします。

「冷えとり」方面の方へ、今年は猛暑で良かったですね❗温めれば万病が治るんですから。

「冷えとり」のために、なんで靴下だけ重ねばきをするの??❗

医師がガイドライン、ガイドラインと言ってそこで推奨される治療にだけこだわるのもある意味、人間味のない機械的な治療になるのでそれはそれで問題がありますが、更年期障害のホットフラッシュに関してはホルモン補充療法がこんなに効果を発揮します。

ホルモン補充療法(HRT)の経験者アンケート–エンジョイ_エイジング【更年期障害の情報サイト】
https://www.hisamitsu.co.jp/hrt/cases/experience.htmlより

更年期障害の場合、治療はまずは生活習慣の見直しは基本中の基本としてホルモン補充療法を、それでイマイチなら抗うつ剤系の薬の使用、さらにダメなら骨折のリスクを考慮に入れながらSSRIという流れがよろしいかと思います。

冷えとり等の民間療法というより、似非医学には近寄らないことを強く推奨します⋯推奨レベルAAAって具合です。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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