日本脳炎って病気はどなたでも耳にしたことがあると思います。
実はここ数十年間日本では年間数例しか発生していない過去の感染症のイメージが強いのですが、東南アジアなど24カ国で認められる感染症です。
日本脳炎の怖いところは発症してしまったら有効な治療法が確立されていないために、死亡率30パーセント、後遺症に悩ませられる可能性が30から50パーセントなのです。
本記事の内容
日本脳炎って名前だけど、日本では年間数例しか発生していなかった(過去形)
日本脳炎に対する唯一の対応策は日本脳炎ワクチンの接種です。実は日本ではすでに忘れ去られた感染症と思ってしまう日本脳炎の患者さんが本年2015年9月に千葉県では25年ぶりに報告されています。幸いにして感染した0歳児は生命の危険はないとのことです(2015年10月9日時点)。
日本脳炎を予防するワクチンの接種は副作用等の懸念から平成17年に定期予防接種の推奨を控えるような通達のために、1995~2006年度生まれの人は未接種の可能性があります。現在では第1期として生後6ヶ月から90ヶ月の間に2回接種、3回目の追加接種を初めて接種してから1年後に行い、さらに第二期として9歳から13歳の間に一回ワクチン接種することが予防接種法によって定められています。
今回感染した0歳児の場合、予防接種をしたか、していないかは不明ですが、予防接種法の推奨を適用したとしても、十分な免疫効果は得られなかった可能性も考えられます。
日本脳炎って蚊が媒介する感染症です
日本脳炎を撒き散らす原因は「コガタアカイエカ」という「蚊」です。コガタアカイエカが動物(ブタがほとんど)の体内で増殖した血液を吸い上げて、その蚊が人間を刺すことによって日本脳炎ウイルスが人体に感染を起こします。不思議なことに日本脳炎ウイルスに感染した人の血を吸った蚊が、他の人を刺しても日本脳炎には感染しません。
多くの人は不顕性感染といわれる、ウイルスに感染はしたんだけど明らかな症状が出現しない(水疱瘡とかおたふく風邪でよく見られる現象)なので無用な心配は必要ないのです。しかし、万が一、症状が出てしまうと前述のようなかなりシビアな結果を招いてしまいます。厚生労働省のサイトによると症状が出てしまう人は100人から1000人のうち1人程度(かなりレンジが広いけど)とされています。でもこんな感じで感染者は0では決してありません。
日本脳炎のリスクは地域差があるのです
日本脳炎はブタの体内で増殖するために、感染したブタの数が多い地域ほど感染のリスクが高まります。国立感染症研究所のサイトによれば九州・四国・中国地方のブタの抗体保有率が高いので(ブタが日本脳炎に感染したことにより抗体ができる)、この地域に住んでいる人はワクチンの接種を受けることを推奨しています。
このデータは2008年のものですが、千葉県も安全な地域とは言えないことがわかります。
昔は年間数千人が発症していた日本脳炎が減少した理由
ワクチン絶対反対❗と唱えている一派が残念ながら日本にはいるようです。副作用の問題をクローズアップして「ワクチン反対」と言っている方もいれば「効果がないからワクチン反対」っていう人もいます。なかには「ワクチンは世界を操る巨大陰謀組織が撒き散らし、利益を得るために製薬会社にワクチンを製造させている」なんて完璧にあっち方面にいってしまわれた方々もネット上では多数見受けられます。
医療関係者でさえ「日本脳炎なんて過去の感染症」って思っている場合もありますが、だからといってワクチンの接種を避ける理由にはなりません。どこから見回しても「日本脳炎ワクチン接種が日本脳炎感染を減らしている」という解釈しか成り立ちませんからね。
国立感染症研究所の地道な活動
少し前に日本の感染症の流行状況を把握する国立感染症研究所のサイトがURL変更のために、検索しにくかったことをブログで嘆いたのですが、さすがに現在はそんな不便は改善されています。
国立感染症研究所は日本脳炎流行の元であるブタの抗体の保有率を定点観測的に記録しています。今回、25年ぶりに千葉県で日本脳炎の発症が報告されましたが、この図から分かることは8月中旬の千葉県におけるブタの日本脳炎ウイルス感染を予測する抗体の陽性率は15パーセントと急上昇している時期に一致します。
一時期日本脳炎ワクチンが推奨されなくなった本当の理由
ちゃくちゃくと感染者を減らしてきた主要因である日本脳炎ワクチン接種ですが、2005年に接種後に急性の脳髄炎が副作用として報告されました。生ワクチンではない、不活化ワクチンである日本脳炎ワクチンがなぜか脳髄炎の原因と考えられたために、厚生労働省が積極的に推奨することを控えたのです。そのため1995年から2006年度に生まれた人は日本脳炎ワクチンを行っていない可能性が大ということになってしまいます。
この時代に生まれた方、この時代に出産したお子さんをもつ親御さんは母子手帳などでワクチン接種済みか否か、この機会にぜひご確認ください。
おまけ:個人でできる予防方法としては肌を露出しない、虫除けスプレーを使用する、蚊取り線香を使用するなどがありますが、やっぱり予防接種をすることが一番の防衛策であることに間違いありません。