インフルエンザ予防接種は効果がありません、という毎日新聞の報道への疑問が満載❗

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毎日新聞にこんな記事が載っていました。

「インフルワクチン:乳児・中学生に予防効果なし 慶応大など、4727人調査」

日本が誇る慶応大学の医学部の研究チームが発表した論文を毎日新聞的に解釈した記事と考えられます。

大々的に取り上げた「インフルエンザ予防接種は効果がありません」という記事

まず、この記事を書かれた記者さんは果たして元の論文をお読みになったんでしょうか?もとの論文は「Effectiveness of Trivalent Inactivated Influenza Vaccine in Children Estimated by a Test-Negative Case-Control Design Study Based on Influenza Rapid Diagnostic Test Results」(DOI: 10.1371/journal.pone.0136539)。

毎日新聞の記事によるとインフルエンザワクチンは6ヶ月から11ヶ月の子供(乳児)にはA型インフルエンザワクチンは効果がない という内容と13歳から15歳はA型もB型もインフルエンザワクチンは効果がないという結果しか読み取れないような内容になっています。

でも、元になった論文を読んでみると、本当にそうなんでしょうか?

慶応大学の研究チームが論文で述べた内容とかなり解釈がかけ離れているんです、実は・・・

インフルワクチン:乳児・中学生に予防効果なし 慶応大など、4727人調査_-_毎日新聞

効果がないという年齢層のグラフが無いのが怪しさ満点で「こりゃ変だぞ」と思って元となった論文を読んでみました。

効果が確認できず、って表現方法は通常あまり医学論文では使用しません。

なんで13歳から15歳という区切りをつけたか、という疑問

インフルエンザの予防接種は13歳未満は2回の接種を、それ以上は一回の接種を行うことになっています。それを知らないと単に中学生にはインフルエンザワクチンは効果がない❗と単純に解釈してしまう危険をこの記事は含んでいます。

この論文では1回のワクチン接種と2回のワクチン接種を分けて考えたようには思えません。つまり中学生でもインフルエンザワクチンは2回接種した方が良いという解釈もなりたちます。

6歳から12歳を対象と考えた場合、発症予防効果が明らかになっていますから。

乳児に対するワクチン接種の効果がない?

1歳未満を乳児と呼びますが、乳児に対するインフルエンザワクチンの効果については賛否両論があります。免疫機能が十分に発達していない乳児に対して、ワクチン接種による免疫効果が十分に得られない可能性は否定できません。しかし、今回の慶応大学の論文ではB型インフルエンザに対しては効果が無かった、という結論は得られていません。

乳児の場合、対象となった症例が49人❗という点も気になります。4727人を対象とした世界的にも大規模な研究(毎日新聞の表現)なのに、乳児の症例数がたったの49例ですから、あまりにもデータ的に見劣りがします。当然、乳児に対するインフルエンザワクチンの効果を判定する大規模な調査研究が必要である、と一般研究者は考えると思います。ですから、毎日新聞を読んだ親御さんが「インフルエンザワクチンはうちの赤ちゃんには不要」と思わせるように記事が書かれたとしたらある意味怖いです。

グラフでは「効果が確認できず」と乳幼児と中学生はなっていますが、もともとのサンプルが少なくて統計学的な処理をした場合、白黒判定にはデータが少なすぎた、ってことを論文では書いてあるんです。

つまり論文では「効果が確認できない」とは一言も記されていません。対象数が少なくて統計学的に有意な結果が得られていない、と判定しています。

インフルエンザワクチンは巨大な利権??

ここは冷静に考えてください。

インフルエンザの予防接種を推進するのは巨大製薬メーカーや医療業界がダッグを組んだ巨大な利権であり、海外の黒幕的組織が暗躍している、なんて陰謀論を唱える人が結構存在します。もし、仮にそんな巨大利権を保持して、世界中をコントロールできる黒幕がいるのなら、なんで毎日新聞の報道が掲載されちゃうんでしょうか?

陰謀論者は目に見えない組織が世界中のメディアさえも操っていて、真実なんか報道されない、私は真実を言っているけどメディアが取り上げないのは陰謀組織の圧力がかかったためだ❗と繰り返します。そんな力のある陰謀組織があるのなら、毎日新聞の報道なんて握りつぶすのは簡単なことなんじゃないでしょうか?

結局インフルエンザワクチンは効果があるじゃん❗

乳児と13歳から15歳の子供に対するインフルエンザワクチンの効果はあまり無かった、という結論にはなっていますが、その他の1歳から2歳、3歳から5歳、6歳から12歳には十分に効果があることを今回の研究ではなっています。

つまりインフルエンザワクチンは有効❗という、証明にもなっています。それを「インフルワクチン:乳児・中学生に予防効果なし」と大々的に表記した毎日新聞の見出しを見て「この前、新聞にインフルエンザワクチンって効果がない、って書かれていたけど」という人が医療機関に殺到する可能性を町の開業医たちは恐れています⋯そういえば毎日新聞を購読している家って滅多に見かけないので大丈夫かも。笑

新聞や雑誌、あるいはテレビで「おやっ?」と思う記事があった場合はぜひコピーをするか、切り抜くか、テレビ番組の名前をお伝えいただければ、時間が許す限り当院では対応をしています。

追記:こんな主張をされる医師もいます 

トンデモ系医師のニューフェイス?「うがいにインフル予防効果なし」⋯これは誤解を招きますぜ❗

トンデモ系医師のニューフェイス?「うがいにインフル予防効果なし」⋯これは誤解を招きますぜ❗

ご注意くださいね(2016年11月13日12:57に追記)

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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